この記事は2023年7月11日に「CAR and DRIVER」で公開された「OTAで性能をアップデート。【SDV時代とは何か】簡明に紹介」を一部編集し、転載したものです。
ソフトの書き換えでクルマの性能アップ。SDV時代が幕を開ける
自動車開発ので現場でいま、最も注目されている言葉はSDV=ソフトウエア・デファインド・ビークルだ。これは「ソフトウエアが定義するクルマ」という意味で、ソフトウエアによって機能・性能が変わる、つまり「ソフトウエアがすべての機能を決める」という前提で設計し、車両購入後でもソフトウエアを追加・更新することで機能をアップデートできるというクルマがSDVだ。
もうひとつ、購入後の機能追加とアップデートを、ディーラーに車両を持ち込んだりすることなくいつでも自由に行える機能としてOTA(=オーバー・ジ・エア)がある。これは無線通信によってクルマの製造元や販売店と自分のクルマとを結び、ソフトウエアのインストールやアップデートを行う機能である。
従来のクルマはハードウエアがすべてであり、一度クルマを購入したら、買い換えるまでは「そのまま使う」の原則だった。ソフトウエアが使われているのはICE(内燃機関)の燃焼やトランスミッションを制御するコンピュータ(ECU)など一部に限られていた。
SDVではソフトウエアが中心になる。たとえばICEは、圧縮比や点火タイミング、排ガス中の有害成分を抑えるための制御などを用途によって変えるなど、クルマの基本性能を左右する部分はソフトウエアで対応する。購入後にもソフトウエアを更新することで性能を向上させたり、あとから開発された新しい機能を追加したりできる。
そのため、クルマ全体の動作の基本となるOS(オペレーティング・ソフトウエア)を持ち、OSの中に個々の機能をアプリケーションとして搭載する形になる。OSとアプリケーションのための記憶媒体はSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)のような大容量のものになり、現在はユニットごとに持っているECUを3〜5個程度に集約できるといわれている。
そして、機能のアップデートはOTAで行う。ADAS(先進運転支援)やパワートレーン制御などのソフトウエアは無線通信で更新されるようになる。すでに国連欧州経済委員会(UN-ECE)が規格を定めており、日本でも2024年1月以降に発売される新型車はOTA対応になる。
当面、OTAで更新されるソフトはカーナビ地図やエンターテイメント関連など車両の基本機能ではない部分に限定されるが、将来的には基本機能のアップデートやリコール対応などもOTAで行われるようになるだろう。
(提供:CAR and DRIVER)