ESGやDXの最前線について、東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター・チーフエバンジェリストの福本勲氏が各企業にインタビューする本シリーズ。第4回となる今回は、広島県福山市に本社を構えるローツェのESGに対する取り組みを紹介します。同社は、半導体・フラットパネルディスプレイ(FPD)、ライフサイエンス関連の自動化・搬送装置の開発・製造・販売を手掛けるメーカーです。ESGの観点から見ても模範的な企業とされていますが、どのようにして取り組みを深化させてきたのでしょうか。
ローツェの管理部企画室室長の藤井昭光氏をゲストにお招きし、同社のESG戦略について、福本氏とKoto Online編集長でコアコンセプト・テクノロジー(CCT)CTOの田口紀成氏がお話を伺いました。
アルファコンパス代表
1990年3月、早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長を務める。また、企業のデジタル化(DX)の支援と推進を行う株式会社コアコンセプト・テクノロジーのアドバイザーも務めている。主な著書に「デジタル・プラットフォーム解体新書」、「デジタルファースト・ソサエティ」(いずれも共著)がある。主なWebコラム連載に、ビジネス+IT/SeizoTrendの「第4次産業革命のビジネス実務論」がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。
2002年、明治大学大学院理工学研究科修了後、株式会社インクス入社。自動車部品製造、金属加工業向けの3D CAD/CAMシステム、自律型エージェントシステムの開発などに従事。2009年にコアコンセプト・テクノロジーの設立メンバーとして参画し、3D CAD/CAM/CAEシステム開発、IoT/AIプラットフォーム「Orizuru(オリヅル)」の企画・開発などDXに関する幅広い開発業務を牽引。2014年より理化学研究所客員研究員を兼務し、有機ELデバイスの製造システムの開発及び金属加工のIoTを研究。2015年に取締役CTOに就任後はモノづくり系ITエンジニアとして先端システムの企画・開発に従事しながら、データでマーケティング&営業活動する組織・環境構築を推進。
目次
半導体・FPDの自動搬送システムで存在感
福本氏(以下、敬称略) 最初に、ローツェ株式会社について詳しく教えてください。
藤井氏(以下、敬称略) 弊社は広島県東部に位置する福山市に本社を構え、半導体やフラットパネルディスプレイ(FPD)関連における自動化装置、創薬・再生医療などライフサイエンス関連装置、モーター制御機器の開発設計・製造・販売を手掛けています。グループ全体で約4300名の従業員がおり、そのうち日本の従業員は約300名です。ベトナム、韓国、台湾、中国、シンガポール、米国、ドイツでも事業を展開し、特にベトナムには3,000名程度の従業員が勤務している最大の生産拠点を設けています。
福本 ローツェとは珍しい社名ですね。
藤井 ローツェとは、エベレストの南に連なる山の名前です。エベレストが高いゆえに目立ちませんが、標高8516mと世界で4番目に高い山であり、世界最高峰のエベレストを脇で支えるがごとく、お客様の成長を同じ裾野で支えたいとの思いから、この社名となりました。1985年に創業しましたが、当時はカタカナの社名が珍しく、リベラルな社風も表していると思います。
創業当時から1990年代前半までは、半導体と言えば日本のお家芸でした。90年代半ば以降は海外勢に置き換わっていきますが、弊社はこの流れに乗る形でアメリカや韓国、台湾に拠点展開をしました。コスト面からベトナムにも工場を設け、現在ではメインファクトリーに成長しました。
我々が製造しているのは、半導体に使用するシリコン製ウエハを搬送するロボットと、そのウエハを保管する棚です。言うなれば、ウエハに回路を刻んでチップを製造する工程と工程の間を担っています。創業者が開発したもので、現在では世界で使われている搬送装置の原点になっていると言われています。半導体業界のプレーヤーには、台湾、韓国、米国などの大手デバイスメーカーに代表されるエンドユーザーと、彼らの製造プロセス用の装置メーカーの2通りがあるとすると、我々は前者に直接製品を納めるファーストティアであると同時に、後者に製品を納めるサブコンでもあります。エンドユーザーと直接取引できることは、付加価値の高い製品作りに役立っており、我々の強みとなっています。
世界的な半導体需要の増加もあり、2016年以降、弊社の売上高は大幅に伸び、昨年度には900億円を超えました。過去10年で売上高は年平均26%、経常利益は年平均52%の成長率を記録しています。日本は全体の売上高の10%程度で、中国やアメリカ、台湾など海外で9割を占めています。
田口氏(以下、敬称略) 目を見張るような成長ぶりですね。しかし、急拡大する組織では、人材の育成や管理が難しいと思いますが、いかがですか。
藤井 その通りです。準備して大きくなったわけではなく、お客様の成長に伴って自然と事業を拡大してきたので、人材の面では確かに課題が多いかもしれません。しかし、弊社は創業以来エンジニアの個人技を大切にしてきました。エンジニアの世界では、高いスキルを持つエンジニア1人が、それほどスキルのないエンジニア数人分のパフォーマンスを大幅に上回るということがよくあります。弊社には核となる優秀なエンジニアがいるため、急速な事業拡大にも柔軟に対応してきました。
田口 弊社と取引のある会社の中にも、「Small is Beautiful」(小さいことは美しい)という考え方を持つ会社があります。組織が小さいほど成果を発揮しやすいとおっしゃっていました。御社もそのような側面があるのかもしれませんね。エンジニアが自己実現でき、高いモチベーションで働ける環境が、御社の成長の秘訣かもしれないと感じています。
福本 創業者自身が開発者である会社は、エンジニアファーストであることが多いですね。
藤井 そうです。弊社の創業者は半導体製造装置のエンジニアで、エスタブリッシュな経営を目指すのではなく、現場でものを作るのが好き、エンジニアを大切にしたいという人物でした。設立の理念で、「会社は個人の技術を発揮して実務に結び付ける所であり、同時に個人の技術を向上させて将来の夢を実現させる所である」と謳っており、こうした社風は今も引き継がれています。
福本 本題であるESG(環境・社会・企業統治)に入る前に、藤井様のご経歴についてもお聞かせください。
藤井 私がローツェに入社したのは2018年の秋です。それ以前は、日本政策投資銀行(DBJ)で約20年間働いた後、九州を中心に医療・介護福祉事業を展開する桜十字グループで経営企画職に就き、赤字経営や承継者不在に悩む病院のM&Aなどを担当していました。そうした中、故郷の福山市に帰らないといけない事情を理由にローツェに転職し、欧州での拠点開設やM&A、人事制度の改善などに携わってきました。最近では、東京証券取引所のコーポレート・ガバナンスの改定に伴い、ESGに正面から取り組む必要が生じ、東証プライム上場企業として対応を進めています。
WACCを上回るROICを維持することが原則
福本 半導体産業はプロセス全体で資源消費が大きく、どうやって減らしていくかがESGの一番のポイントだと思います。御社では、具体的にどのようにESGへの取り組みを進めていらっしゃいますか。
藤井 弊社のステークホルダーには、投資・融資に関わる機関投資家と金融機関、ビジネス上のパートナーであるサプライヤーや顧客、そして最終的な商品の購入者である消費者がいます。これらを考慮すると、ESGに対する取り組みは、初めは投資家や金融機関からの要求として注目していました。しかし、今では弊社の顧客もESGに注目し、ビジネスの選択肢に影響を与える要素となっています。さらに、採用面でもESGへの取り組みが重要となり、特にZ世代の働き手は企業のESG対応を重視する傾向があります。ただし、弊社はBtoB企業であるため、最終消費者からは距離があり、その消費行動を意識した顧客の動向や、採用に関しては、ESG対応にきゅうきゅうしているわけではありません。一方で、金融部門では既にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)などへの対応が迫られています。
金融的な整理は、まだ経営と充分にシンクロができているわけではないのですが、今回のインタビューを機会に可視化してみたところ、投資家から見れば、企業が投資・融資で調達した資金を運用し、その運用による利回り(ROIC)が加重平均資本コスト(WACC)を継続して上回っている限り、理論的には投資価値が保たれていることになります。
しかしながら、企業がESGに対して何ら施策を講じず、仮に環境問題を引き起こすような事態が生じると、株主や金融機関からの資金供給が難しくなる可能性があり、WACCは上昇すると予測されます。投資家は、ESGへの取り組みを怠る企業に対しては、その姿勢を補って余りあるリターンがなければ投資を避ける傾向があるからです。
この観点から、弊社もWACCがROICを上回らないようにする、守りの意味でのESGは意識しないといけません。企業にとって、サステナビリティは環境や人権問題への対応だけではなく、本来的には企業自身の成長の持続であり、それは両者(WACCとROIC)のスプレッドが開いたままの状態を指します。これを維持すべく、ネガティブな要素を減らすだけではなく、企業として存在し続けられるようなオリジナリティ溢れる取り組みも必要です。
福本 サプライチェーンの先にアップルのようなESGの意義に厳しい会社がいて、2030年までにカーボンニュートラルを実現しないとサプライチェーンから追い出すとも明言するほどです(*)。そう考えると、他の企業に比べると先行してESGに取り組む必要があったと思いますし、スコアを得るためには外から見えるようにもしないといけません。社内での整理などご苦労もあったと推察します。
藤井 社内では、担当部署に対応が集中する傾向があります。前提として、俗に「〇〇ウォッシュ」(*)という言葉も聞かれますが、何かアイキャッチーな取り組みをしてお茶を濁すようなやり方は良くありません。片や現状がわからないと目標までの距離もわかりません。弊社としても温室効果ガスの排出量はどのくらいなのかを把握することから始め、その算定には注意を払っています。今は、グローバルでどのような出し方をしているのか押さえるべく、動いています。その際も、第三者認証を受けた形で公表する方針です。
福本 ちなみに、半導体業界全体における、ESGへの温度感はどうなっているとお感じですか。
藤井 アップルの存在は大きく、特に我々が関わる最先端チップの分野では、同社のユーザーを含めた構造が非常に大切です。同社製品に関わるCO2排出量の70%は生産工程によるものであり、サプライヤーには着実な削減が求められています。ただし、先ほど福本さんがおっしゃったように、半導体製造は多くのエネルギーを消費しますが、弊社の装置に限ってはそうでありません。プラズマを起こしてエッチングするには大量の電力が必要で、台湾のTSMCは風力発電設備を確保したというニュースもありました。対して、弊社の装置は工程の電力消費面では比較的小さいため、優先順位的には、まだチップメーカーから具体的なアクションを求められている段階ではありません。弊社としては、今は事実を把握する段階であり、また半導体業界全体としても、温室効果ガス排出量の測定に関する共通の基準を作ることを検討しており、その話し合いが続いている状況です。
Environment:本社・九州の工場では再生可能エネルギーを導入
福本 ESGのE(Environment:環境)の部分について、御社の具体的な取り組みを教えていただけますか。
藤井 広島の本社や九州の工場ではすでに太陽光パネルを設置しています。設置当時の主な目的は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の活用だったようですが、現在では発電量と使用量がほぼ同水準となる発電規模があります。一方、課題として挙げられるのが、最大の生産拠点であるベトナムについてです。ベトナムの生産増に伴い、同所のCO2排出量をどのように削減するかは急務となっています。ベトナムは再生可能エネルギーに対する制度的な設計が十分でなく、再生可能エネルギーが送配電網に大きな負荷をかけるため、発電の推進には電力インフラ全体の底上げが必要です。そのため、現在は政策動向をにらみながらの対応検討とせざるを得ない状況となっています。
田口 日本も電力が足りない状況ながら、送電網の問題により、出力を制限しなければいけないという矛盾がありますね。これは難しい問題です。
藤井 確かにそうですね。発電そのものは太陽光でも一定規模が達成できそうですが、送配電に関わるインフラなどは十分とは言えません。先進国ですら課題を抱えているのですから、新興国となるとさらに大変でしょう。
田口 蓄電池などバッテリー活用の話も挙がっていますが、製造する際の環境負荷が高いのも問題です。環境負荷を下げるために環境負荷の高い装置を作るというのも、矛盾を抱えています。
藤井 その矛盾を解消するためには、テクノロジーの進歩がポイントになると考えています。いずれにしても、ベトナム工場は昼夜稼働しているので電力消費量は大きく、多少のルーフトップの太陽光発電では賄うことができません。グリッドを含む再生可能エネルギーの活用が、今後の課題になると認識しています。
Social:女性エンジニアの採用・育成が喫緊の課題
福本 ESGのS(Social:社会)の部分についても、御社ならではのお取り組みをお聞かせください。
藤井 弊社は企業と個人の成長の相乗効果を期待している会社です。エンジニアを重視しており、理念についてもコアなスタッフは理解しています。役員と新入社員が対等に議論できる会社であることを創業者も標榜していて、人に対して不自然なプレッシャーはかけない組織です。平均年収は中国地方でトップとなってしまい、大手電力会社や自動車メーカーを上回っているので、従業員の満足度は一定程度あると考えています。一方で、人事評価制度などは昔のままなので、改善の余地があると感じています。
モノづくりの会社はどこも同じでしょうが、ダイバーシティの問題は難しいと考えています。理系出身の女性社員が少ないのです。中国地方の半導体人材育成を担う協議会でも、女性人材の採用に関する工夫が議題に上がります。現在、政府が中心となり人的資本の開示についてレギュレーションが定まりつつあり、今年からは男女の賃金格差の開示も始まりました。弊社もこれを受けて開示しましたが、国内水準と世界基準では乖離が発生している印象もあります。もちろん、国内問題としては女性に管理職のポストを取ってもらうほか、そもそも女性エンジニアの採用を増やしていかないといけません。
採用が厳しいなら育てることも必要です。小学生や中学生を対象にした理系触発プログラムを開催したり、地元の新聞社と協力してプログラミング大会を開催したりしています。また、地域の高校の物理の時間に出前授業を行い、県立高校では理系を選択する女子生徒が増えたと報告されています。社会に出るまでには4~5年かかりますが、その頃には理系出身の女性社員の比率が半々に近づくと希望を抱いています。
田口 素晴らしいお取り組みです。私は小学4年生の頃に初めてコンピュータに触れましたが、当時は仕事につながると思っていませんでした。遊びから始まり、抵抗なく進んで行けたのは、幼少期の体験が大きく影響しています。この体験が楽しいものとして記憶に残れば、進路選択に影響するに違いありません。とはいえ、現状は女性の人数が少ない中で、人材を獲得しようと過度に高い報酬で採用している企業も見受けられます。当社も男社会のIT企業なので、悩ましく感じています。
藤井 御社のような東京の企業でも同様なのですね。地方に本社を置く弊社と比べると状況は悪くないと思っていました
田口 そんなこともないんですよ。東京の企業でもIT人材の獲得競争は非常に激しく、当社の男女比率はむしろ悪化しています。
福本 御社が拠点を置くベトナムなど、グローバルの観点ではダイバーシティの状況はいかがでしょうか。
藤井 一般的に、東南アジアの工場では女性の労働者が多いと言われていますが、我々はよくロボット製造企業と思われているようで、比較的男性が多く勤務しています。いずれにしても、ベトナムは働く女性も多く、深刻な状況ではありません。一方、東アジアでは女性エンジニアや管理職はそれほど多くなく、日本と同様の課題を抱えています。韓国、米国、ドイツにある弊社の海外拠点のトップは外国人で、中核人材の多様化という点では、今は3分の1が外国人人材である一方、女性役員・部長は限られているというのが課題でしょう。
グローバルではジェンダーの均衡のほかに、マイノリティの問題も起きています。米国の上場企業の開示資料を見ると、ダイバーシティへの取り組みはしばしばマイノリティの比率で判断されていますが、我々はまだダイバーシティの具体的な基準を定め、評価する段階には至っていません。日本の状況とグローバルが向いている方向に、少し乖離が発生している印象も受けています。
Governance:スキルマトリックスの導入で経営陣の能力を可視化
福本 ESGのG(Governance:企業統治)の部分についての取り組みはいかがですか。
藤井 投資家は、ESGの要素の中でもっとも企業価値に影響を与える部分として、企業統治を挙げています。弊社では、東証のコーポレート・ガバナンス規制に対応する形で、2021年に指名報酬委員会を設立し、取締役の能力や経験を視覚化するスキルマトリックスも作成しました。取締役会は社内4名、社外2名で構成しており、取締役の3分の1が社外という条件をクリアしています。
また、社外取締役は地元のモノづくり企業の社長であり、地域でともに活動する方にお任せしています。取締役会の出席にとどまらず、経営陣の良き相談相手として、一緒になっていろんなことを考えてくれる方を理想としています。ただし、経営スピードの観点では、意思決定に関わる員数をあまり増やさずに少数で濃い会議を目指したく、エンジニアなどモノづくりのバックグラウンドのない方の参加にはまだ躊躇している状況です。投資家からは女性取締役がいないことについてご指摘を受けていますが、業務に直接的に役立つ意見やアイデアを出せる役員で運営をしたい旨を伝え、了承を得たい考えです。
海外拠点にも広がるESGへの意識
福本 多岐にわたるESGへのお取り組みをお聞きすることができました。手応えはいかがでしょうか。
藤井 2022年3月に開設したサステナビリティサイトを通じて、投資家の皆さんとはお話ができていると思います。しかし、まだCDP(*)への回答を提出していないため、弊社のESGに関する取り組みや成果を参照できる機会は限られています。そのため、投資家からの問い合わせに対してワンオンワンで説明しているところです。一方で、全社一丸というのは難しく、中にはまだESGについて腹落ちしていない者もいます。社内的には最低限の対応を行いつつ、重要な事柄について説明を進めています。
福本 海外拠点や関係会社にはどのように説明していますか。
藤井 四半期に一度、海外拠点のトップを集めた会議を開いていますが、その場で環境についての説明資料などを見せても、最初は皆キョトンとした感じでした。当時は優先順位から言えば、お客様の長納期をいかに解消するかで頭の中はいっぱいのようでした。お客様からの要望も納期や製品性能に関することが主で、ESGについて直接の担当ラインから問われることはありません。本社に調査票が送られてくるので、現場の責任者からすると、ピンとこないのかもしれません。しかし、アップルが2030年までにグローバルサプライチェーンの脱炭素化を目指しており、サプライヤーとしての弊社のお客様も歩調を合わせてきていることを伝えると、「何とか対策を講じなければいけない」と理解が広まりつつあります。
福本 ESGへの取り組みをさらに加速させるために、何か課題はありますか。
藤井 ベトナムでの再生可能エネルギーの活用が最大の課題になりそうです。5月に開催された広島サミットには、G7諸国以外に東南アジア各国の首脳も来日していて、その中にベトナムの首相もいらっしゃいました。そこで、首相を囲む会が開催され、弊社社長もベトナム進出企業の一つとしてお招きいただき、ベトナムでの工場への再生可能エネルギー導入に向けた政府の支援の必要性について発言しました。その声が届いていると期待しています。弊社としても、国の動きを注視しながら対応する方針です。
田口 今回のインタビューはESGがテーマですが、広くサステナビリティの観点でいうと、デジタル技術で解決できる課題もあると思いました。
藤井 モーターや照明などの制御、電力を変換するパワー半導体を使った制御がうまくできると、エネルギー効率は上がります。これを実現するにはデジタルの力は不可欠です。データセンターしかり半導体工場にも影響を与えますから、世界全体で活用を進めるべきことだと思います。また、CO2排出量の集計などは現在エクセルで行っているので、社内プロセスのデジタル化も、ESGを背景に進めていく必要があります。
田口 サステナビリティやESGに関する年間の成果がビジネスに悪影響を及ぼす可能性もあり、取り組みをためらっている企業もある中、御社はROIC≧WACCというKPIをお持ちなので、進めやすいと感じました。
福本 最後に、Koto Onlineの読者へ向けて、今後の意気込みやメッセージをお願いします。
藤井 繰り返しになりますが、弊社はモノづくりの会社であることを大切にしており、エンジニアとして納得できる取り組みにこだわっています。Koto Onlineの読者の皆様にも同じような方は多いでしょうから、ともに頑張っていきたいと思います。政治的な動きや規制の揺れもあるでしょうが、軸は失わずにやっていきたい思いがあります。
福本 モノづくりの会社として、単に非化石証書を購入するだけでは、カーボンニュートラルへの実質的な貢献はないですよね。それに比べて御社は、本業を通じてしっかりとESGに取り組んでおられ、素晴らしいことだと思います。また、社長がベトナムの首相と話すなど、自らが行動を起こして改善を進める姿には感銘を受けました。こうした真剣な姿勢を、製造業に従事する読者に伝えたいと思います。ありがとうございました。
田口 私たちが規範とすべき考え方だと思います。たくさん学ばせていただきました。ありがとうございました。
【関連リンク】
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