家賃収入と税金の考え方
家賃収入にかかる税金は、「不動産所得」に分類されます。不動産所得とは、以下のような貸付けに対する所得のことです。
引用:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁
- 土地や建物などの不動産の貸付け
- 地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付け
- 船舶や航空機の貸付け
不動産を第三者に貸すことで得られる収入、つまり不動産所得として扱われるものとしては、家賃収入のほか次のものが考えられます。
イ 名義書換料、承諾料、更新料又は頭金などの名目で受領するもの
引用:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁
ロ 敷金や保証金などのうち、返還を要しないもの
ハ 共益費などの名目で受け取る電気代、水道代や掃除代など
新しい入居者が決まった際に受け取る礼金や、毎月の共益費、そして契約の更新時期に支払われる更新料などです。駐車場や駐輪場を貸しているという場合にはその料金、土地を貸すことによる携帯電話のアンテナ基地設置料金や自販機の設置による収入など、不動産経営に関わる収入が含まれます。
入居者から受け取った敷金、一般の住宅でなく事務所を貸す際に必要となる保証金など、退去時に返還が必要なものについては家賃収入には含めません。
不動産所得とは
税金を考える際に理解する必要があるのは、「収入」と「所得」の違いです。不動産経営に関わる家賃などの収入から、必要な経費をマイナスした残りが不動産所得となります。つまり所得とは利益のことです。そしてこの不動産所得に対して税金がかかります。
総収入金額-必要経費=不動産所得
家賃収入にかかる税金の種類
個人が不動産投資で得た利益に対して納める税金は、所得税になります。
不動産所得は、「総合課税」に分類されていて、単独で所得税が割り出せるというものではなく、給与所得やその他さまざまな種類の所得をまとめて計算します。総合課税に分類される所得は、あらかじめ決まっていて、8種類あります。
総合課税に分類される複数の所得をひとつにまとめた総所得金額に対して、税金がかかります。所得金額によって税率が5%から45%までと、7段階にわたって税率が上がっていきます。
これは累進課税といって、収入が増えれば増えるほど、不動産所得とその他の所得を合わせた金額が増えるほど、納める税金の割合も増えていきます。最高45%まで所得税がかかり、住民税と合わせると最大55%の税率がかかります。
このようなルールとなっているため、「家賃収入が得られたら税金がいくらかかるのだろう?」という疑問に対しては、家賃収入以外の、会社から受け取る給与所得などの金額がおおいに関係してきます。
なお、不動産投資をスタートして不動産経営を続けていくうちに、所有する不動産を売却する、ということもあります。売却することで得た利益に対しては、総合課税ではなく、ほかの所得と区分して計算される「分離課税」となります。
所得税の計算方法
総合課税の所得税の税額を割り出す際に、よく登場するのが「控除」です。
8種類の所得の合計-さまざまな所得控除=課税所得金額
所得を計算する際に登場するのが「所得控除」というものです。所得控除は、所得からマイナスできる項目となります。所得控除にもいくつか種類があり、全部で15種類あります。
所得税の税率(速算表)
課税対象となる所得金額に応じた税率は次の通りです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
【計算例】
課税される所得金額(総所得金額-所得控除)が6,500,000円の場合
上の表の税率20%に当てはまり、以下の式にそって計算した金額が所得税額となります。
6,500,000円×20%-427,500円=872,500円
不動産投資を始める前の給与所得額を把握していますか?
家賃収入が給与所得に加えて増えることによって、所得税の税率が変わるということもあり得ます。
例えば給与所得が800万円の人は、給与所得のみだった場合は所得税の税率は23%です。しかし、区分マンションを4件保有して家賃収入が数百万円になり、給与所得と不動産所得を合わせた所得の合計が900万円を超えると、税率が10%上がって33%かかることになります。
現在の給与と税率を把握しておくことで、不動産による所得をどれくらい得たいと考えるか、目標となる不動産所得額をイメージできるようになるのではないでしょうか。
不動産所得の計算方法
給与所得を含めた複数の所得の合計によって所得税は計算できますが、家賃収入から得られる不動産所得を割り出すためには、まず不動産収入から不動産経営に関する経費をマイナスする必要があります。
家賃収入も含めた年間の不動産収入から必要経費を引いた不動産所得が、課税対象です。
不動産所得=年間の不動産収入-必要経費
例えば年間の不動産収入が300万円、必要経費が100万円であった場合、不動産所得は「300万円-100万円=200万円」となります。
不動産投資を始めたばかりのとき、初期にかかる必要経費が多く、家賃収入が少ないというタイミングもあります。不動産所得がマイナスとなってしまった場合、つまり「赤字」の状態になった場合は、給与所得ほか、総合課税に分類される複数の所得と相殺することができます。これを「損益通算」といいます。
損益通算をすることで、全体の所得が少なくなり、所得税の税率が安くなることもあり得ます。
例えば税率が23%の給与所得700万円の人が、不動産投資を始めた初年度は経費が500万円ほどかかり、一方で家賃収入は400万円だった場合は、不動産所得は100万円のマイナスになります。
給与所得と不動産所得を合わせると、課税対象となる所得は600万円となり、所得税の税率は20%の区分に変更となります。
必要経費に含まれるもの
以下のような、不動産経営に関する費用が経費となります。
- 不動産購入時にかかる諸経費
- 不動産会社に管理を委託した場合の管理委託費
- 入居者募集の際に支払った広告費
- 不動産投資ローンの利息(損益通算の場合には一定の制限あり)
- 火災保険や地震保険などの損害保険料
- 建物の減価償却費
- 不動産取得税、固定資産税や都市計画税
- 建物や設備の修繕費
不動産投資ローンの返済額のうち、経費として計上できるのは利息部分のみで元金部分は計上できません。
プライベートと不動産経営のどちらにも絡んでくる費用、家事関連費については注意が必要です。不動産経営に関してどのくらいの割合で使ったのかを明らかにしたうえで、経費を計算します。
不動産所得は確定申告をする必要がある
会社から給与を得ているサラリーマンは、源泉徴収や年末調整をすることで会社が代わりに税金を納めてくれています。しかし不動産投資を始めると、確定申告が必要となります。
年間2,000万円を超える給与をもらっていたり、給与以外に不動産所得などの所得が20万円を超える場合です。1月1日〜12月31日までの所得を計算し、3月中旬までに税務署に申告をします。税金を納めたり、場合によっては払い過ぎた税金が戻ってくる還付を受けます。
不動産所得が発生した場合はもちろん、不動産所得がマイナスになった場合も、確定申告は必要です。不動産所得がマイナスになった場合には、給与などその他の所得の合計がマイナスになるため、税金の還付を受けることにつながるからです。
家賃収入を得る場合は、不動産所得が生じても生じなくても必ず確定申告を
不動産経営を始めて、税金がいくらくらいかかるのかについては、給与などその他の所得の合計に関わるので、合計の所得がいくらくらいになるのかを把握しましょう。
不動産所得は、家賃収入を含めた不動産収入から必要経費を差し引いた金額です。不動産所得が発生した場合は、必ず確定申告をしましょう。