TBSホールディングスが「メディアグループ」から「コンテンツグループ」に変貌しつつある。テレビ・ラジオにとどまらず、映画、舞台、動画配信、文化、ショッピング、知育・教育などコンテンツ全般に事業領域を広げてきた。現在、放送事業以外の売上比率は46%と、大黒柱の放送事業とほぼ肩を並べる。その背後には巧みなM&A戦略が見え隠れする。
知育・教育事業に本格参入
知育・教育事業に本格参入するー。こんな掛け声とともに、TBSホールディングスは6月末、個別指導塾「スクールIE」の運営を中心に総合教育事業を手がける、やる気スイッチグループホールディングス(東京都中央区)を子会社化した。約287億円を投じて株式の78%を取得した。TBSとして過去最大の買収となる。
2021年5月に策定した2030年に向けた長期ビジョン「TBSグループ VISION2030」。その中核をなす「EDGE戦略」の重点項目の一つが知育・教育事業だ。推進チームとして昨年10月、「学びネクスト事業部」を立ち上げた。
「EDGE」の最初のEはExpand(拡張)の頭文字。デジタル(D)、グローバル(G)、エクスペリエンス(E、体験型サービス)の拡張を目指している。
知育・教育をめぐっては「探求学習」に代表されるように、旧来と異なる学習スタイルの導入に伴い、学びを深めるための映像活用の重要性が増している。やる気スイッチグループが持つ教育ノウハウや顧客基盤と、TBSの映像アーカイブスや映像技術を組み合わせ、海外展開も視野に入れつつ、新たな映像教育コンテンツの提供につなげる。
やる気スイッチグループは高校・中学・小学生を対象とする個別指導塾「スクールIE」を中心に、幼児・小学生向け英会話教室、キッズ向けスポーツ教室などを展開し、国内外2200以上の教室で13万人の子供たちが学んでいる。
U-NEXT・Paraviの統合会社に20%出資
動画配信サービスをめぐってはコロナ禍の「巣ごもり需要」で市場のすそ野が一気に広がった。引き続き高い成長が見込まれているものの、足元ではアフターコロナの到来とともに伸びが鈍化し、一服感が漂う。こうした中、いち早い動きに出たのがTBSホールディングスだ。
動画配信大手の「U-NEXT(ユーネクスト)」と「Paravi(パラビ)」が統合したのは今年3月末。存続会社となったU-NEXTはUSEN‐NEXT HOLDINGSの子会社。一方の「Paravi」を運営するプレミアム・プラットフォーム・ジャパンの筆頭株主は約31%の株式を持つTBSホールディングスが筆頭株主だった。 統合後の有料会員数は現在385万人以上と、国内勢として最大を誇る。
TBSは6月末に、第三者割当増資を引き受けてU-NEXTの株式20%を242億円で取得し、同社を持ち分法適用関連会社とした。TBSは今後、議決権ベースで保有比率をさらに10%増やせる権利を持つ。
動画配信市場はネットフリックス、アマゾン、ダゾーンをはじめとする海外勢、国内勢もテレビ系、通信系、ネット系などに分かれ、主要プレーヤーだけで20社近くがひしめく、いわば戦国時代。U-NEXTとParaviの統合は業界再編の引き金になる可能性もある。