この記事は2023年8月19日に「CAR and DRIVER」で公開された「【新世代スポーツ研究】喝采を叫びたくなる傑作オープン、マツダ・ロードスターの「究極の人車一体感」」を一部編集し、転載したものです。

マツダ・ロードスター 価格/268万9500〜398万8600円 試乗記

【新世代スポーツ研究】喝采を叫びたくなる傑作オープン、マツダ・ロードスターの「究極の人車一体感」
マツダ・ロードスター990S/価格:6MT 295万9000円。990SはSグレードをベースに軽量&気持ちのいい走りを追求した特別仕様車。ネーミングは990kgの車重に由来。ソフトトップはブルーカラー

軽さがもたらす価値を実感。まさに意のままのドライブフィール

マツダ・ロードスターの基本理念は、1989年に登場した初代モデルから現在まで一貫している。開発陣が追い求めたのは、「究極の人車一体感」。スポーツカーだからといって大きなパワーに頼ることなく、むしろ多くのライバルが陥りがちな「重厚長大」路線と対峙するようにして、そのコアバリューを追求してきた。これこそが、まさにロードスター最大の美点であり個性である。ロードスターはすでに33年の歴史を誇るが、人車一体感については、どの世代もいささかのブレはない。

ところでロードスターは、いつの時代もスペックを眺めているだけでは、魅力が見えてこないクルマでもある。
最新モデルの場合、ラインアップの主流となるソフトトップに搭載されるエンジンは、排気量わずかに1.5リッターの自然吸気4気筒ユニット。その最高出力はたったの132psにすぎない。RFと名づけられたリトラクタブルHTモデルが採用する2リッターユニットであっても184psだ。現在のスポーツカーの水準で見れば、「他愛ない」とさえいわれかねないデータである。

【新世代スポーツ研究】喝采を叫びたくなる傑作オープン、マツダ・ロードスターの「究極の人車一体感」
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しかし、これらの事柄が魅力を削ぐポイントかと問われれば、「そうした印象は1mmたりともない!」と即座に断言できる。
いざスタートすると、アクセルペダルの踏み加減によって得られる加速力は必要にして十分。スポーティさに溢れている。確かに、決して「背中をバックレストに押さえつけられる」という形容が当てはまるレベルではない。だが、ドライバーはペダル操作に対する十分に敏感なレスポンスと、耳に届く快音が楽しめ、MT仕様の場合には「すべての動きを自分でコントロールしているんだ」という実感が追加される。ドライバーを主人公にした一連の走りのテイストが、「スポーツカーを操っている」という満足感を色濃く引き立ててくれるのである。加えて、絶品のコーナリング時の軽やかな身のこなしが気分を盛り上げる。車重が絶対的に軽いことに加え、重量物を極力車両の中央部に寄せた初代モデル以来のこだわりが効いている。

【新世代スポーツ研究】喝采を叫びたくなる傑作オープン、マツダ・ロードスターの「究極の人車一体感」
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極端にいえば、「街中の交差点をひとつ曲がっただけで、スポーツカーらしいシャープな走りを味わうことができる」のだ。この感覚こそが歴代のロードスターに共通する大きな美点。ロードスターに乗ると、快哉を叫びたくのは、この走りがあればこそだ。トップを開け放って、風を感じながらのドライビングは、抜群に楽しい。気分がまさにリフレッシュする。

世の中の「スポーツカー」と呼ばれるクルマたちの中にあって、これほど手軽に、そして日常的に気持ちを昂らせてくれる存在はない。自動車……とくにスポーツカーを取り巻く環境は年々と厳しさを増している。クルマは実用的な道具であると同時に、趣味の対象でもある。ロードスターは、「スポーツカーの魅力とは、絶対的なスピード性能に由来するわけではない」という真実を雄弁に語る名作。このモデルの故郷に生まれ育ったボクたちは、ロードスターを誇りに思っていいはずである。

マツダ・ロードスター主要諸元

グレード=990S
価格=6MT  295万9000円
全長×全幅×全高=3915×1735×1235mm
ホイールベース=2310mm
トレッド=フロント:1495/リア:1505mm
車重=990kg
エンジン=1496cc直4DOHC16V(プレミアム仕様)
最高出力=97kW(132ps)/7000rpm
最大トルク=152Nm(15.5kgm)/4500rpm
WLTCモード燃費=16.8km/リッター(燃料タンク容量40リッター)
(市街地/郊外/高速道路:12.0/17.7/19.5 km/リッター)
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:マルチリンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=195/50R16+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=2名
最小回転半径=4.7m

フォトギャラリー

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Writer:河村康彦、Photo:山上博也

(提供:CAR and DRIVER