総括
FX「国民が外貨預金を選好。リラ安の一番大きな要因」トルコリラ見通し
(通貨最下位、株価首位)
予想レンジ トルコリラ/円5.0-6.0
(ポイント)
*リラが安い要因は国民が外貨預金を選好するからだ
*7月経常収支は54.66億ドルの赤字で6月の黒字から赤字へ
*8月は月間最強通貨となったが、年間では依然最弱通貨
*新しい経済性政策はエルドアン大統領も支持
*トルコの格付け見通し「安定的」に引き上げ=フィッチ
*予想外の利上げでのリラ急騰は1日で終わる、その後は尻すぼみ
*2Q・GDPはまずまずだが、3Qは苦しい
*貿易赤字は続く
*8月製造業PMI悪化
*リラ買い介入は行わず
*為替保護リラ預金制度を解除へ
*エネルギー問題で海外と交渉
*ムーディーズはトルコの政策に前向きな評価
*エルドアン大統領はEUに加盟したい
*新財務大臣は合理的な政策に変わると主張、経常収支改善も目標
*今年は建国100周年
(外貨預金=リラが安い要因はこれが一番)
リラ安の一番大きな要因(2番目が経常貿易赤字)は、外貨預金が全預金の44%を占めていること(これでもかなり減少した)。
日本の外貨預金は全預金の0.6%、個人金融資産の0.3%に過ぎない。トルコでは外貨が生活資金となっている。国民にリラが信用されていない。外貨を持つことが、インフレを防ぐ生活防衛だ。
(トルコ市場の現状)
8月は月間最強通貨となったが、年間では依然最弱通貨だ。一方株価は世界最強となっている(年初来47.87%高)。長期金利は21%台へ利回り上昇。
8月の消費者物価は前年同月比58.94%上昇と予想の55.9%を上回った。リラ急落や最近の増税で2カ月連続で上昇率が加速した。7月は47.83%上昇だった。
(インフレとの戦いには時間がかかる)
シムシェキ財務大臣はインフレとの戦いには時間がかかり、移行期間には忍耐が必要だと指摘。「インフレを管理・抑制するため、必要なことは全て(金融引き締め、信用政策、所得政策)行う。われわれはインフレと戦う決意を完全に固めている」としている。シムシェク財務大臣は、中央銀行が外貨準備を売却して為替相場に介入したという主張を一蹴した。
(新しい経済性政策はエルドアン大統領も支持)
また、シムシェキ財務大臣は、同国の経済プログラムはエルドアン大統領の全面的な支持を得ていると明言した。政府は前日、今年と来年の物価上昇率見通しを大幅に引き上げ、成長率見通しは下方修正している。
エルドアン大統領はは長い間、経済理論の主流に反する見解を打ち出して高金利に公然と反対し、国内の物価上昇圧力を増大させてきた。しかし5月に再選を果たした大統領は、外国投資家からの信頼が厚いシムシェキ氏を経済政策のかじ取り役に起用して政策の180度の方向転換を開始、最近の積極的な利上げを後押しする姿勢を見せて一部の市場関係者を驚かせた。
(財務相、中銀総裁の動き)
シムシェキ財務大臣は、今後ドイツやニューヨーク、ロンドン、アジアと中東の幾つかの都市で投資家との会合を開く予定を明らかにした。
一方、トルコ中銀のエルカン総裁は「物価情勢の著しい改善を達成するまで、われわれが持つ全ての手段を通じて金融引き締めを継続していく」と語った。
(今週の経済指標、9月11日発表分も)
・7月経常収支は54.66億ドルの赤字。6月は6.51億ドルの黒字だった。エネルギー価格の上昇で貿易赤字が拡大、一方、旅行収支黒字は微減。
・7月失業率は9.4%で6月の9.6%から改善した。
・7月鉱工業生産は前年比7.4%増、6月は0.2%増だった。7.4%増は2022年6月以来の大きさ。明日は7月小売売上と8月自動車生産の発表がある。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
8月24日の大陽線後は、尻すぼみ 次の一手が出ない
日足、8月24日の大陽線で一気にボリバン3σ上限を突破、5.77をつける。ただ、行き過ぎで反落。中位割り込む。5日線下向き、20日線上向き。
8月24日-9月11日の上昇ラインがサポート。8月24日-9月11日の下降ラインが上値抵抗。雲中。
週足、横ばい。8月28日週-9月4日週の上昇ラインがサポート。8月21日週-28日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向き、20週線下向き。
月足、8月最強もまだ2σ下限近辺で推移。23年6月-7月の下降ラインを上抜く。7月-8月の上昇ラインがサポート。5月-6月の下降ラインが上値抵抗。
年足、8年連続陰線。その間52円から5円台へ沈む。今年は僅かに陽転していたが3月から陰転。
メルハバ
トルコの格付け見通し「安定的」に引き上げ=フィッチ
フィッチは9月8日、トルコの格付け見通しを「安定的」に引き上げた。経済政策の変更により、短期的なマクロ金融不安の軽減が想定されるという。格付けは「B」で据え置いた。