公務員は副業に対して規制が多いため、不動産投資も認められないのではないかと不安に思って踏み切れない人もいるでしょう。実際、公務員は不動産投資を副業にすることはできるのでしょうか。公務員の不動産投資が副業に当たるかどうかの条件などについて解説します。
目次
公務員は不動産投資に向いている
実は公務員は不動産投資に向いているといわれます。その大きな理由が、融資審査における属性の高さと不動産投資は手間がかからず公務に支障が出ないことです。
属性が高い
公務員は人事院勧告によって給与額が保証されるので、会社員よりも収入が安定しています。金融機関のローン審査では返済能力が重要な判断ポイントになりますが、業績によって給与が下がるリスクがない公務員は返済能力が高いと判断されます。
また、同じ公務員でも国家公務員や地方公務員、現業職など様々な種類がありますが、与信に職種による差はないので、公務員であれば平等に評価される点もメリットです。
運営する手間がかからない
公務員は後述するように全力で職務の遂行に専念しなければならない、と法律で定められています。そのため手間のかかる副業は避ける必要があります。
パート・アルバイトやインストラクター・講師など多くの副業は自分が動かなくてはならず、本業に多少の影響が生じる恐れがあります。その点、不動産投資は不動産管理会社に物件の管理を委託すれば自分が動くことはほとんどないため、公務に支障が出ない点で公務員に向いているといえます。
公務員の副業が禁止されている理由とは
不動産投資に向いているといわれても、いまひとつ踏み切れない理由が公務員の副業禁止規定の存在です。公務員の副業(営利企業の経営)は国家公務員法・地方公務員法で規制されています。
禁止されている理由の1つは国家公務員法第96条にある「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」という「服務の根本基準」に影響する可能性があるからです(地方公務員法は第30条「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない)。
もう1つは第103条にある「職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職務を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない」という「私企業からの隔離」の目的に反する可能性があるからです(地方公務員法は38条に同様の規定)。
公務員は職務に専念し、私企業と関係を持たないために、副業が禁止されているのです。ただし、次に紹介するように、事業規模に当たらない投資であれば申請によって認められる場合もあります。
公務員の不動産投資が副業にならないための条件
公務員の副業については、人事院規則14-8に細かく基準が規定されています。公務員の不動産投資が副業とみなされないためには、以下の3つの条件をクリアする必要があります。不動産投資を行う場合は、この3つの条件をクリアできる物件を購入することが大前提です。不動産会社に条件を伝えて物件を紹介してもらうのもよいでしょう。
「5棟、10室以上」の事業規模ではないこと
人事院規則では不動産が事業規模に該当するかどうかの基準を示しています。一戸建てなら5棟以上、共同住宅なら10室以上、土地賃貸なら10件以上、駐車場なら駐車台数10台以上で自営とみなされます。区分マンション所有であれば基準に該当することは稀でしょう。
年間家賃収入が500万円以下であること
収入でも規制があり、年間家賃収入が500万円を超えると事業規模とみなされます。区分所有で1室所有している程度であれば、家賃が10万円だったとしても年間家賃収入は120万円なので問題なくクリアできます。一棟経営では部屋数や家賃によって500万円を超える可能性もあるので、避けたほうが無難です。なお、家賃収入から管理費など経費を差し引くことはできません。
自分で管理していないこと
事業規模ではなく家賃収入が500万円以上でない場合でも、自分で管理していると副業とみなされる恐れがあります。自主管理で公務に支障が出ることは避けなければなりません。家賃5%程度の手数料はかかりますが、必ず委託管理にするようにしましょう。
また、旅館・ホテル、出力10キロワット以上の太陽光発電なども副業とみなされるので、詳しくは人事院ホームページの「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」で確認するとよいでしょう。
公務員が不動産投資する際に注意すべきこと
公務員が不動産投資をする際に注意すべきことを確認しておきましょう。普通の不動産投資と相続による不動産取得の注意点は以下のとおりです。
投資する際は必ず許可を得てから始める
副業とみなされる以上の投資をする際は、許可を取る必要があります。無断で行っていると不動産所得が加わることによって住民税の金額が増え、発覚するケースもあります。指摘されて処分を受けるよりも、許可を得て行ったほうが精神的にも安心できます。
申請する際は、所属している部署の責任者に報告し、雇用されている省庁や市区町村役所に申請して許可を得るのが手順です。人事院では下記の書式を用意しているので、記入のうえ提出します。
また、申請書以外に物件概要書類、不動産管理会社の委託契約書、貸借条件一覧表も併せて提出が必要なので準備しておきましょう。
副業に該当するか迷う場合は、まず所属部署の責任者に相談して判断を仰ぐのが妥当です。
相続で不動産を取得した場合はどうなる?
不動産投資を考えていなくても、相続で不動産を取得する場合もあるでしょう。被相続人がアパートを経営していた場合は、相続人が自分一人のケースでは一棟そっくり相続することになります。
事業規模の物件である場合、そのまま経営を引き継ぐと副業とみなされるのではないかと心配になりますが、公務員でも相続によってやむを得ず経営を引き継ぐ場合は、許可を得られやすい傾向です。ただ、一定規模を超えているからといって強制的に売却させられるということはないようですが、許可を得なければならないのは普通の不動産取得と同じです。
公務員が投資しやすい不動産クラウドファンディング
公務員の不動産投資は、事業規模に該当しなければ認められることを確認しました。それでも不動産投資に対して不安が残る場合は、不動産クラウドファンディングへの投資がおすすめです。
不動産クラウドファンディングは、インターネット上で募集されているファンドに不特定多数の投資家が共同で出資する不動産小口化商品の一種です。多くの場合、投資家は事業者と匿名組合契約を結び、事業者が物件を運用して得た収益の中から分配金を受け取る仕組みになっています。
所得区分は雑所得となり、他の雑所得と合わせて年間20万円以下なら確定申告不要です。匿名組合契約のため、出資した人の氏名が登記されることはないので、安心して投資できます。
ただし、不動産クラウドファンディングでも実際に不動産を共同所有する任意組合型のファンドに投資した場合は、不動産登記されるので注意が必要です。所得区分も不動産所得となります。
不動産クラウドファンディング比較サイトには現在募集中または募集開始が近いファンドが一覧で掲載されているので、匿名組合型と任意組合型の違いに注意しながら、詳細を確認するとよいでしょう。
(提供:YANUSY)
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