この記事は2023年9月20日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「ティーケーピー(TKP)【3479・グロース】」を一部編集し、転載したものです。
中核事業を貸会議室運営に原点回帰
26年2月期に売上高575億円目指す
貸会議室運営を中心に「空間再生」ビジネスを展開しているティーケーピー(TKP)の業績が急拡大している。コロナ禍で影響を受けた対面による会議やセミナー、研修等の需要が大きく回復。子会社の売却などにより筋肉質な経営体制への転換を進めたことも奏功した。今後は貸会議室やホテル・宿泊施設の積極出店を加速。このほど発表した中期経営計画では、最終年度となる2026年に売上高575億円、営業利益94億円を目指していく。
▼河野 貴輝 社長
第1四半期営業利益は約44%増
リージャス売却で財務大幅改善
同社は7月に24年2月期第1四半期業績を発表。売上高は31・5%減となったが、営業利益は43・8%増、経常利益は66・4%増(いずれも前年同期比)と大きく伸びた。
これは貸会議室需要の回復に加え、子会社売却により経営体制が筋肉質になったことが奏功している。23年2月、同社はレンタルオフィス事業を展開していた子会社で、381億円の企業価値がある日本リージャスを三菱地所に、また台湾リージャスをIWG Group Holdings Sarlに売却。投資コストの高いレンタルオフィス事業をやめ、売却代金の一部を借入金返済に充てた。これによって有利子負債が大幅に減少。また海外事業からも撤退し、収益を上げやすい財務体質を整えた。
「リージャスを売却したことで売上は3割減りました。しかし営業利益、経常利益はコロナ前を含めても最高水準にあります。特に4月次は過去最高の営業利益になりました。当社は『空間再生流通事業』を謳っています。リージャスを売却したことでオリジナルのビジネスが残り、原点に戻った」(河野貴輝社長)
全国に約240施設を展開
顧客基盤は年間3万社ほど
同社のコア事業は時間貸の貸会議室運営事業だ。不動産を保有せずに賃貸借・業務委託などの契約で物件を仕入れ、会議室や研修場所として貸し出す。国内大企業を中心に年間約3万社の顧客基盤を有するのが強み。同社の売上に占める会議室室料の割合は約5割だ。
収益の源泉は、取り壊しが決まっている物件や、景気後退時に安価で仕入れた物件。会議室として貸すと同時に、オフィス家具や弁当ケータリングなどのサービスで付加収益を得ている。23年2月現在で施設数は合計237、契約面積は約14万坪に及ぶ。
ホテル・宿泊施設もアパホテルのFC事業を含め21施設展開。研修特化型だけでなく、会議室を備えつつ一般客も泊まれる施設も多い。宿泊の売上割合は全体の24%となっている。
コロナの影響から完全復活
利益を生み出す経営体質に
20年から本格化したコロナウイルスの世界的感染拡大は、同社の業績にも大きな影響を及ぼした。それ以前の19年には、日本リージャスと台湾リージャスを子会社化、事業規模を拡大したが、直後の感染拡大により20年2月期業績予想を下方修正。21年2月期から22年2月期は利益面で赤字が続いていた。しかし23年2月期は貸会議室・宿泊事業において上場来の過去最高営業利益率を達成した。
「リーマンショックの時は売上が4分の1ほどに落ち込みました。コロナ禍の今回も同じで、TKP単体の月次売上が約40億円から10億円に落ちたことがありました。しかし23年2月期には貸会議室・宿泊事業の需要が回復して売上が大幅に戻った。営業利益率は創業18年で一番高い状況です」(同氏)
賃貸していた会議室をコロナ禍でも解約しなかったことにより、安定した利益率を確保。リーマンショック時に安い賃貸料で大量に仕入れた物件が利益を下支えしているという。
▼研修需要の復調で稼働率も向上
出店ラッシュで増床
新中期経営計画を策定
23年4月、同社は26年度までの新中期経営計画を発表した。これまでは、コロナ禍の影響で先行きが不透明であったことなどから、中長期的な計画の公表を見送ってきた。しかし、昨今の入国制限の大幅な緩和、新型コロナウイルスの5類への移行等、社会経済活動の正常化が大きく進んできたこと。また、同社グループの事業も、経営状況が堅調に回復していることから、改めて策定したもの。最終年度となる26年2月期の数値目標は、売上高575億円、営業利益94億円だ。
基本方針は、貸会議室の床面積を積極拡大しながら周辺事業を取り込み、シェアを拡大し対象市場を拡張すること。まず24年2月期は既に約8400坪の増床・新規出店が決定している。特に東京・品川駅付近での出店を強化、2000坪超を新たに供給する予定だ。
23年6月には、大規模な再開発が進む福岡・天神に貸会議室「TKPエルガーラホール」をオープン。600名収容可能な大型マルチイベントホールを含む多目的施設で、ビジネス用途のみならず、演劇やコンサート、イベントなども実施可能だ。
「これからは会議室・宿泊などのハードだけでなく、ソフトも増やしていきたい。我々が場所を貸すだけでなくコンテンツ主催者になれれば、イベントなどさまざまなことを仕掛けられます」(同氏)
さらに同社の手元には、リージャスを売却した資金がある。これを有効活用したビジネスを展開し、さらに利益を積み上げて行くという。
「このままでもいずれ営業利益は100億円を超えると思いますが、それにとどまらず、手元資金でレバレッジを効かせ、ROEを10%以上に上げていきたい」(同氏)
識学と資本業務提携、
リリカラは持分法適用関連会社化
同社は事業拡大を進めていくため、積極的にM&A・政策投資を進めている。2023年1月に独自の組織マネジメント理論を用いたコンサル会社識学(7049・グロース)との資本業務提携を発表。既存事業の付加価値向上のほか、新規事業の開発を強化する。具体的には、TKPが持つ豊富な顧客基盤・全国のスペースネットワークと、識学の有するVCファンド事業、ハンズオン支援(※)ファンド事業における投資先支援のノウハウを相互に活用していく計画。
また、4月にはインテリア卸大手のリリカラ(9827・スタンダード)を持分法適用関連会社化した。今後はTKPが運営する貸会議室や宿泊研修施設・ホテルへのリリカラのインテリア商品の提供による施設運営・施設開発の最適化と需給の安定化。同時にリリカラのスペースソリューション事業とTKPの施設運営・不動産開発の知見を活かした、空間サービス・施設の共同開発などといった、相乗効果を期待している。
PFI事業にも積極進出
22年、同社は大分県別府市のPFI事業(公募設置管理制度)「上人ヶ浜公園整備運営事業」の管理者に選定された。天然砂湯を持つ上人ヶ浜は大分空港からアクセスしやすく、インバウンド客の訪問が期待される。
「PFIでは、自治体の土地を利用して建物を整備するのでコストを一定セーブできる。ここに企業と一般の両方のお客さんを入れていくことで、地方創生に貢献していきたい」(河野社長)
2023年2月期 連結業績
売上高 | 505億400万円 | 前期比 13.0%増 |
---|---|---|
営業利益 | 35億7,500万円 | 黒転 |
経常利益 | 30億6,200万円 | 黒転 |
当期純利益 | ▲49億3,600万円 | 赤拡 |
2024年2月期 連結業績予想
売上高 | 363億円 | 前期比 28.1%減 |
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営業利益 | 54億円 | 同 51.0%増 |
経常利益 | 50億円 | 同 63.3%増 |
当期純利益 | 67億円 | 黒転 |
※株主手帳23年9月号発売日時点