近年、多くの業界でAI(人工知能)の活用が進んでいます。人間の脳と同等かそれ以上の情報処理能力を有する技術であるAIは、画像認証や音声認証、機械学習による予測が得意です。中でもデータ分析は、AIが得意としている機械学習と相性が良いため、積極的に活用されています。

しかし、AIによるデータ分析の内容などについてしっかり理解している方は、意外と少ないのではないでしょうか。ここでは、AIによるデータ分析の基礎的な知識から活用事例までを解説します。

目次

  1. AIを活用したデータ分析とは?
  2. AIを利用したデータ分析の活用事例
  3. AIによるデータ分析のメリット
  4. 効果的なデータ分析にはAIを活用しよう

AIを活用したデータ分析とは?

データ分析をAIに任せる時代に!メリットや活用事例を解説
(画像=Koto Online編集部)

AIを活用したデータ分析を簡単に説明すれば、「これまで人の手で行われてきたデータ分析をAIが担うようになった」と表現できます。では、AIをデータ分析に活用することによって何が変わるのでしょうか。

それは、データ分析の速度と処理できるデータ量の多さです。AIは大量のデータを高速で処理することが可能なため、膨大な量のデータを活用した精度の高い分析結果を得られることに特徴があります。精度が高い分、意思決定の根拠となるような信頼度の高い情報が得られます。

もちろん、これまでは人の手で行ったデータ分析でも意思決定の根拠となる情報は得られていました。しかし、その情報には分析担当者の主観や経験も含まれていたため、誤った判断材料となることもありました。

しかしAIは、データのみに基づいて膨大なデータを分析することで、客観的かつ信頼性できる情報が得られます。

データマイニングによる効率的かつ高度な分析が可能

データマイニングとは、膨大な量のデータの中から重要な情報を発掘(マイニング)する手法のことです。

従来のデータマイニングとAIを活用したデータマイニングの違いは、ビッグデータの分析を行い、重要な情報を発掘できるかどうかです。ビッグデータはただ膨大な量のデータという訳ではなく、多様かつ大量のデータであり、「Volume(量)」「Variety(多様性)」「Velocity(頻度)」の3つのVを網羅した有益な情報が含まれています。

これまで、膨大な量のデータの分析には時間がかかるのが一般的でした。そのため、せっかく収集したデータを活用できないこともしばしばありました。しかし、AI技術によりデータ分析を自動で行うことが可能となると、膨大な量のデータを効率的に分析することができるようになりました。それにより、高度な情報の発掘・分析が可能となりました。

機械学習とディープラーニングの違い

AIがさまざまなデータを分析するうえで欠かせないのが機械学習です。機械学習とは、コンピューターに大量のデータを分析させることで規則性や傾向を学習させ、アルゴリズムに従って予測や判断を行うことをいいます。

機械学習はAIを構成する技術のひとつであり、膨大な量のデータから一定の規則性やパターンを見つけ出すことで、特定の作業を自動的に実行できるようになります。

一方、ディープラーニングは、脳の神経細胞であるニューロンの構造を真似て作られた、ニューラルネットワークをベースとしたシステムです。機械学習よりも高精度な処理を行える点に特徴があります。

ディープラーニングのベースとなるニューラルネットワークは、入力層と呼ばれる箇所でデータを識別し、隠れ層で分析を行い、出力層で結果を出力するようにできています。これは、実際に生物が音や映像を脳や神経で認識する構造と似ています。

AIを利用したデータ分析の活用事例

ここからは、実際にAIを利用したデータ分析の活用事例を5つご紹介します。

  1. 見積もり作成
  2. 需要予測
  3. 故障検知
  4. 採用活動
  5. 自動運転

見積もり作成

企業内では、どうしても属人化してしまう業務が発生します。例えば見積書の作成がそのひとつです。企業によっては、営業担当者しか作成できない見積書が数多くあるだけでなく、作成する頻度が多いため時間を取られるという課題を抱えています。

このような課題は、AIによるデータ分析を利用することで解決が可能です。AIのデータ分析により、必要経費や作業工数などから自動で見積もり金額を抽出すれば、誰でも見積書を作成できるようになります。そうなれば、営業担当者は見積書作成の時間を短縮でき、業務の効率化が図れます。

需要予測

需要予測とは、自社の商品やサービスが将来どれくらい売れるかを予測することです。

企業は、商品やサービスを利用すると思われる消費者や市場のニーズを予測することで、商品をどれくらい作るか、どれくらい仕入れるかを決定します。その工程にAIによるデータ分析を取り入れることで、より正確な需要予測が可能となります。正確な需要予測を行えば、商品やサービスの過剰な供給などを防ぎ、企業の損失を回避したり、利益を上げたりすることができます。

また、AIのデータ分析によって導き出された結果をもとに消費者のニーズを予測することで、新商品や新サービスの開発に役立てることもできます。

故障検知

製造業では、工場で使用する機械に不具合や故障が発生すると製造ラインが止まり、大きな損失を被る可能性があります。不具合を見つける作業は従来、人間の目で確認していたため、機械類の故障・不具合を発見・予知することには限界がありました。

しかし、工場内にカメラやセンサーを設置し画像や映像を処理できるAIを活用すれば、故障を未然に防ぐことが可能となります。カメラの画像データやセンサーから受信した温度変化などのデータをもとに、故障や不具合を発見・予知します。

採用活動

大規模な採用活動を行うような企業では、書類選考にも時間と労力が必要になります。その採用活動においてAIのデータ分析を活用すれば、会社に最適な人材の効率的な抽出を実現できます。

求人媒体が保有している応募データや過去の応募資料をデータとしてAIに分析させれば、応募者のスキルや職務経歴などから採用基準に適しているかどうかが判断できるようになります。

採用活動における人材と企業のミスマッチは採用コストや教育コストに影響を与えるため、AIのデータ分析の導入は経営面の改善にもつながるでしょう。

自動運転

AIのデータ分析活用事例で今最も注目されているのは自動運転でしょう。AIを搭載した自動車がカメラやセンサーからの画像データ・外部データを分析し、運転手がハンドルを握らなくても自動で運転してくれる技術です。

自動運転は、道路や標識、障害物などをカメラやセンサーが認識する領域のみの技術と思われがちです。しかし、目的地への最適ルートを探すなど、データ分析を活用する領域の技術でもあります。膨大な量の交通データをAIに学習・分析させることで、交通事故に対するリスク管理や事故の予測・回避が可能となり、事故の減少につながります。

自動運転はまだ発展途中の技術であすが、今後さらに技術が進化すれば、運転手を乗せずに走行できる車が登場するかもしれません。

AIによるデータ分析のメリット

データ分析をAIに任せる時代に!メリットや活用事例を解説
(画像=Koto Online編集部)

次に、AIを活用したデータ分析のメリットを見ていきましょう。大きく以下の5つのメリットが考えられます。

現状把握が可能

データ分析の真髄は現状把握にあると言っても過言ではありません。データ分析により現状を把握できれば、次に取るべき行動を素早く、かつ正確に導き出すことができます。

現状を客観的に把握できれば、ユーザーが期待しているサービスを提供できているかどうか、機械や設備が効率的に稼働しているかどうかなど、さまざまな情報を得ることができるため、次の一手を策定するうえで非常に有効です。

従来の課題解決では、経験や勘に頼ることも多々ありました。しかし、経験や勘には主観が入るため、客観性に欠けた一面的な解決策しか作ることができない可能性があります。

しかし、当然のことながらAIは、主観的な判断からデータを分析することはありません。客観的な分析結果からこれまで気付くことがなかったような情報を得られるようになり、それらを活用した新しい課題解決の方法を見出すことも可能となっています。

高度な未来予測が可能

AIが最も得意とする分野のひとつである予測も、データ分析でより高度なものにできます。

人の手によるデータ分析では、担当者のその日の調子や希望的な要素などによって分析結果が左右され、分析の精度が向上しにくいという問題がありました。また、人の手では分析できるデータの量が決まっていることも、分析精度が向上しない理由となっていました。

しかし、AIにはその日の調子など分析を左右する要因はありません。さらに、AIは人間では到底処理しきれない膨大な量のデータを高速で処理することができるため、分析の精度はかなり高くなります。需要予測や生産計画などにおいて客観的な判断ができるAIの未来予測は、すでに各分野で一定の成果を出し始めています。

迅速かつ有効な意思決定が可能

現代ビジネスにおいて意思決定が遅れてしまった場合、重大な機会損失を招く可能性が非常に高まります。また、大きな組織であればあるほど、意思決定のスピードは遅れてしまうものでしょう。しかし、データ分析にAIを活用すれば、データに基づいた客観的な判断が可能となるため、迅速な意思決定が実現します。

例えば、SNS上で発信される自社や自社製品についての投稿をリアルタイムで収集し、そのデータを分析すれば、顧客ニーズの顕在化やトレンドの把握ができるため、既存サービスや商品の見直しや新規事業の立ち上げなどの意思決定を迅速に行えるでしょう。

業務の効率化が図れる

AIによるデータ分析によって抽出された質の高いデータは、業務の効率化にも貢献します。良質なデータが抽出可能になれば、通常であれば発見できないような作業の無駄を見つけ出すことも可能です。必要な業務を洗い出し、無駄な作業を排除していけば、作業の効率化は大きく進みにます。

業務の効率化を図る理由としては、労働人口の減少や働き方改革の推進などが挙げられますが、属人化の防止という観点も重要でしょう。企業内で属人化が発生していると、担当者の不在や退職によって業務が停滞する恐れがあります。

そうした事態に陥らないよう、AIを活用したデータ分析で業務の洗い出しをしておけば、社内の誰もが業務内容や業務の進め方を理解できるようになり、結果的に業務の効率化につながっていきます。

人材不足の解消

近年、少子高齢化による労働人口の減少が進み、小売業や飲食業、建設業を中心に多くの業界で人材不足が深刻となっています。そうした中、AIによるデータ分析の活用は人材不足の解消にも役立つと期待が寄せられています。

前述の通り、AIによるデータ分析を活用すれば、必要な業務とそうではない業務を区別できます。AIのデータ分析で業務の洗い出しを行い、人がやらなければいけない業務とITツールなどに作業を置き換えられる業務を明確化できれば、最小限の労働力で業務を遂行することが可能となるでしょう。

また、AIのデータ分析によって従業員の業務負担が軽減されれば、労働環境の改善によって企業イメージがアップし、求人応募の増加も期待できます。

効果的なデータ分析にはAIを活用しよう

AIをデータ分析に活用すれば、今まで人の手で行っていた膨大な量のデータ分析を高速かつ効率的に行うことが可能となります。また、より精度の高いデータを得られるため、未来予測も可能になります。さらに、AIの導入によって業務を効率的に行えるようになれば、多くの企業が直面する課題である人材不足の解消にもつながるでしょう。

今や多くの企業がAIを導入していることから、今後はさらにデータ分析の重要性が高まることが予想されます。AIをデータ分析領域で活用することは、企業を支えるだけでなく、社会全体の課題解決につながる大きな一歩となると言っても過言ではないでしょう。

(提供:Koto Online