総括
FX「経済は強いが、ペソ高修正の要因も多い。短期波乱、長期有望」メキシコペソ見通し
予想レンジ 7.9-8.4
(ポイント)
*大統領も為替ヘッジプログラムの縮小を支持
*リスク回避、決算で売られる
*米国との金利差縮小、インフレの勢いも違う
*メキシコ経済の強い内容は変わっていない
*IMFは成長見通し上方修正
*今夜は小売売上
*スーパーペソでインバウンド失速
*短期的には売り圧力、長期的には有望維持
*ペソ安の要因は経済が弱いからではない
*郷里送金は増加継続も受け取り金額がペソ高で目減り
*UAWのストや米国政府閉鎖問題はメキシコに影を落とす
*1ドル17ぺソがペソ上伸を阻む 現在18.0
*メキシコ政府、OECD、フィッチも成長見通しを上方修正
*トランプ大統領が誕生すればメキシコに一波乱あり
*短期波乱、長期有望
(ペソ下落、大統領も為替ヘッジプログラムの縮小を支持)
ロペスオブラドール大統領は10月18日、メキシコは通貨が安定しているため、中銀は8月末に発表した為替ヘッジプログラムの縮小を堅持すべきだと述べた。
9月からヘッジプログラムを縮小するという同行の決定は、発表当時ペソの下落を加速させたが、それでもペソは今年世界的に最も強い新興国通貨の一つだ。大統領は、銀行の自主性を尊重しており、調整前のようなヘッジに戻るべきではないと考えていると述べた。
「われわれは通貨が安定しており、通貨が強化されているという事実を信じなければならない。人々はスーパーペソの終わりだと思っていたが、昨日は再び1ドル=18ペソ未満に達した。通貨は好調で、メキシコの経済力に対する信頼は厚い」とした。
(このヘッジプログラムは2017年の創設以来、ボラティリティを抑えることを目的として設計されており、パンデミック下の2020年に強化された。中銀は8月下旬時点で、これらの商品に約75億ドルの未払いポジションを抱えていた。アナリストらは同行のヘッジプログラム終了を、おそらく決定前に通貨が上昇しすぎていたことの表れと受け止めた)
(リスク回避、決算で売られる、スイスが追ってくる)
6円60銭台から始まった今年の相場だが、8月1日に8円77銭の年初来高値(2014年12月以来の高値)をつけてからは小幅安となっている。年初来では対円で21.58%高で最強だが、10月はここまで4.67%安と最弱だ。対円での日銀円買い介入観測や、イスラエル・パレスチナ紛争でのリスク回避もペソ安に影響している。また10月に入れば、米系ファンドの決算もあり、収益を上げてきたメキシコのポートフォリオの利食いもでる。メキシコのボルサ株価指数は今年一時15%高であったが、現在は0.7%高に上げ幅を縮小してきた。
(メヒア中銀理事、データ次第)
中銀議事録によると、インフレ率が目標の3%プラスマイナス1%に達するは前回の24年4Qから、2025年2Qに後ろ倒しされた。メヒア中銀理事は目標への収束が遅れている主な理由は、コアインフレ率の高止まりとサービス価格の上昇である。中銀は先月の会合で4回連続で基準金利を11.25%に据え置き、インフレ率は8カ月連続で低下し、9月には4.45%となった。
メヒア理事は中東の紛争で原油価格が上昇すればインフレに悪影響を与える可能性があり、逆に、世界経済の減速により一次産品価格が下落し、インフレ圧力が低下する可能性があると述べた。メヒア理事は、インフレ圧力が緩和された場合にのみ利下げペースの議論を検討すると述べた。(一般的な意見だが、利下げにも言及したことがポイント)
(米国との金利差、インフレの勢いの差)
11月のFOMCでの利上げ観測はないが、米10年国債が上昇してきたことも、リスク回避の流れに繋がっている。心理的には対ドルでの1ドル16台というのはメキシコ国内からもペソ高警戒論が出ていた。現在は1ドル18.00ペソ。ペソ高で郷里送金の目減り、メキシコへの観光客の減少がスーパーペソの頭を押さえている。
(メキシコ経済の内容は変わっていない)
ただニアショリングを中心としたメキシコの景気回復は変わっていない。日本を含め世界中から中国回避や税金優遇のメキシコへ進出してくる製造業が多い。回避された中国からもやってきている。
メキシコは10月11日、国内投資を呼び込むための税制優遇措置を定めた政令を公布した。 具体的には今年と来年の投資について加速度償却により56-89%の控除を実施し、従業員の訓練に関しては3年にわたって25%の控除を追加する。 ロペスオブラドール大統領は、中国依存を減らそうという世界的な動きによってメキシコも恩恵に浴するべきだと発言している。
(IMF成長見通し上方修正)
IMFは23年の成長見通しを7月時点の2.6%から3.2%に上方修正した。24年も1.5%から2.1%に引き上げていることも経済の強さを示している。経済は強くしたいがペソ高は困るという悩みが少し出てきた。
(今夜は小売売上、PEMEXは7.82%の賃上げ)
今夜は8月小売売上の発表がある。予想は前年比で4.4%増、7月は5.1%増。またメキシコ国営石油会社PEMEXは7.82%の賃上げで労働組合と合意に達した。
テクニカル分析
ボリバン下位で推移
日足、ボリバン3σ下限へから反発するも、中位や雲を越えられず下落。10月9日-19日の上昇ラインがサポート。10月18日-19日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。
週足、中位割り込みボリバン下位で推移。3月20日週-10月9日週の上昇ラインがサポート。9月25日週-10月2日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向き20週線を下抜く。
月足、9月で6か月連続陽線も陽の陽はらみで売り圧力。今月は陰線スタート。7月-8月の上昇ラインを下抜く。5か月、20か月線まだ上向き。1月-3月の上昇ラインがサポート。8月-9月の下降ラインが上値抵抗。
年足、22年の長い上ヒゲを上抜く大陽線。14年-22年の下降ラインを上抜く。21年-22年の上昇ラインがサポート。
VAMOS MEXICO
スーパーペソでインバウンド失速
いわゆるスーパーペソにより、メキシコへの旅行が海外旅行者にとってドル換算でより高価になった。パンデミック中にメキシコを世界有数の観光地の一つにした旅行ブームは、ペソ高で旅行コストが上昇し、メキシコ人が休暇期間中に海外旅行を選ぶようになったため終息しつつある。
8月にメキシコを訪問した外国人旅行者の数は前年比1.5%減となり、2021年3月以来初めて年間減少となった。一方、同月に海外に渡航するメキシコ人は26%以上増加したという。
外国人旅行者にとってメキシコへの旅行はドル換算でより高価になり、8月の総支出額は7.2%減少した。同時に、海外に渡航するメキシコ人による支出はほぼ30%増加した。
メキシコは、パンデミック中に国際観光を制限しなかった数少ない主要観光地の1つで、2020年から2022年にかけて他国では禁止または制限されていた旅行者、特に米国からの旅行者の恩恵を受けた。