総括
FX「ドル円膠着の要因は、ただ日銀会合前の報道合戦で波乱あり」
ドル円=147-152、ユーロ円=156-161、ユーロドル=1.03-1.08
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価3位(4位)、ドル円膠着の要因は、ただ日銀会合前の報道合戦で波乱あり」
10月のドル円は主に149円台で推移している。出来高も少なく膠着している。貿易需給は落ち着いてきた。7月からの3か月で見れば9400億円の赤字、去年の同時期は6兆3480億円の赤字で今年は赤字が85%減少。ただまだ貿易赤字なので急激な円高には結びつかない。
週末には日経の「日銀、金利操作の再修正論 長期金利「上限」1%接近で」の報道で中東市場で先週のNY終値比、円高が進んでいる。ただ日銀総裁の最新の発言(10月20日)では「消費者物価の先行きについて、輸入物価の上昇を受けた価格転嫁の影響が薄れる中でいったんは縮小するものの、賃金上昇などを伴って再び、緩やかに拡大する。内外の経済や金融市場をめぐる不確実性が極めて高い中、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現することを目指していく」と述べ、大規模な金融緩和を続けていく姿勢を示している。来週の日銀金融政策決定会合により注目が集まる。
9月消費者物価は2.8%上昇、13カ月ぶり3%を下回わった。今週は10月の東京の消費者物価の発表があり、予想は2.5%の上昇だ。日銀野口審議委員は「マイナス金利の解除は2%物価目標の実現が確実になっていることが前提、持続的な物価上昇にはまだ距離がある」と緩和姿勢の継続を示唆している。
介入については世界的には原則禁止だが、財務省は口先介入で市場に緊張感を保たせている。米企業、ファンドの23年決算での円キャリーの手仕舞い、世界の紛争と株安によるリスク回避の動きで、円買いも出ている。過去5年の10月末のドル円の動きは2020-22年が円高、18-19年が円安であるが、どちらも大きな動きではない。どちらかと言えば観測記事は金融引き締め方向、日銀関係者や自民党は緩和維持である。
9月ほどの決算特殊玉による円安はない。要人発言に耳を傾けての取引となる。
*米ドル「通貨4位(4位)、株価(NYダウ)11位(14位)、内外での負担・混乱はあるが世界は米国に頼るしかない」
ドルは年間で4位、10月は3位、先週は4位とまずまずの位置にある。一方株価は先週、ナスダック、ダウ、S&P揃って下落。GDPナウは5.4%、CPIナウは3.36%で景気は強く、インフレは抑制されている。問題のサプライチェーンインデックス(GSCPI)はマイナス0.69と落ち着いている。今週は3Q・GDPに注目したい。
11月1日のFOMCを前にパウエル議長は、インフレの鈍化や労働市場のひっ迫が緩む傾向が続いているとした上で、追加の利上げなどは今後の経済指標を見極めて慎重に判断していく考えを示した。
議長は「ことしの夏以降インフレが鈍化していることは非常に好ましい傾向だ」と述べた。一方で9月の小売業の売上高が市場の予想を大きく上回るなどことしは一貫して想定を超える経済成長が続いていると指摘した。そのうえで今後も経済成長が続き、労働市場がひっ迫する新たなデータがあればさらなる金融引き締めが正当化される可能性があると述べた。フェッドウオッチでは11月は政策金利据え置きを予想している。
ウクライナ問題に続き、パレスチナ紛争での財政負担がある。国内では政府閉鎖問題、下院議長の選出問題、終わらないストライキなど、内外で混乱の火種はある。ただ米国が戦場にならない有利さはある。
世界のリーダーとして責務を果たす負担が、国内経済の足を引っ張る不安を残しながら、やはり米国に頼るしかないのが現状だ。
*ユーロ「通貨5位(6位)、株価8位(7位)DAX)、ECBは据え置きか、明るい経済指標がユーロを支えた」
10月2日週は12週ぶりに週足は陽線となったが、翌週は再び陰線、ただ先週はスイスフランの上昇に連れ陽線を回復し、年初来でもカナダを抜いて5位に上昇、月間では2位、先週も3位と持ちなおしている。
ユーロの上昇は、悪化の一途を辿る経済指標に明るさが見えたこともある。ユーロ圏、ドイツともに10月のZEW景況感指数が改善を見せたこともある。今週は製造業PMIなどで占う。
ECB当局者は、インフレは低下しているが目標の2%には遠いとして、さらなる引き締めも示唆するが、今週は4.5%で据え置きとなりそうだ。先週発表された、ドイツの9月の生産者物価は前年同月比で14.7%下落、19499年の統計開始以降で最大の下落率を記録、インフレが一段と緩和するとの期待が高まりそうだ。今週はドイツ10月のIFO景況感指数の発表もある。
ギリシャが13年振りに投資適格級を回復したことも明るい材料だ。懸念はそのギリシャより長期債利回りが高いイタリアの財政問題だ。
*ポンド「通貨3位(3位)、株価13位(11位)、 利上げには苦しい経済指標化、財政は評価され格付け上方修正」
年間3位を維持している。7月半ばから続いてきた米金利の上昇によるポンドの下げも落ち着いてきた。IMFの成長見通し上方修正やムーディーズの格付け見通し引き上げもポンドを支えた。ムーディーズは、英国の格付け見通しを従来の「ネガティブ」から「安定的」に引き上げ、S&Pは見通しを「安定的」に据え置いた。S&Pの格付けは「AA」と3番目に高く、ムーディーズは「Aa3」で4番目に高い。
さて来週は政策金利の決定がある。5.25%で据え置きか。ベイリー中銀総裁は8月の賃金の伸びが引き続き堅調だったことで、インフレ率を目標水準まで引き下げるには賃金の伸びがまだ大き過ぎるとの認識を示した。9月消費者物価が前年同月比6.7%上昇、8月と同じだった。総裁は賃金の伸びがインフレ目標と合致する水準を「まだ大きく上回っている」としながらも、インフレ率は「下がり続ける」と予想。9月のインフレ率が予測より高かったものの、食料や燃料など変動の大きい項目を除いたコアインフレ鈍化の兆しは有望だと指摘した。
10月の英消費者信頼感指数はマイナス30で、昨年1月以来最高となった前月(マイナス21)から大きく悪化した。9月の小売売上高は前月比0.9%減と、予想を大幅に下回った。生活費上昇による圧迫が続いたほか、季節外れの暖かさで秋物衣料の販売が減少した。予想は0.2%減。小売売上高が急減したことを踏まえると、9月のGDPは横ばい、もしくは減少した可能性が高い。3Q全体のGDPが減少したことを意味している。利上げするのは苦しいところか。
*豪ドル「通貨8位(9位)、株価15位(16位)、雇用伸びず、今週は消費者物価、RBA総裁の講演あり 中国懸念」
豪ドルはNZドルを抜いて8位へ上昇。オセアニア勢は下位で低迷、株価も豪、NZ指数ともにマイナス圏だ。基調は中国景気減速で弱い。日本も世界の多くの国も中国貿易を上位に位置づけているが、豪、NZはその比率が高く影響が大きいのだろう。中国経済指標はやや回復しているが、不動産問題も深刻、米国からの経済指標の影響も貿易取引減少に繋がり苦しい。
さて直近の議事要旨では、「インフレ上振れリスクを懸念」とあったことから豪ドルは一時買い戻されたが、その後発表された9月の雇用統計は、就業者数の伸びが予想を下回ったことで売りが入った。
就業者では正社員が減少、パートタイムが増加した。失業率は3.6%とやや改善した。市場では引き続き11月の0.25%利上げ確率が25%程度となっている。
今週は、3Qと9月の消費者物価や10月製造業・サービス業PMIに注目したい。ブロック総裁らRBA幹部の11月政策金利決定を前にしての講演もある。
*NZドル「通貨9位(8位)、株価19位(19位)、下落、消費者物価低下、中国貿易縮小」
弱い、豪ドルに抜かれ年初来9位へ後退。力強い2Q・GDPや、22年4QのGDP上方修正でリセッションを消し去ったことでの上昇は終えた。3Q消費者物価は2年ぶりの水準に低下した。中銀のインフレターゲットの1-3%を依然上回ったものの、インフレ圧力鈍化を受けて11月の利上げ観測が後退、NZドルが下落した。 前年比伸び率は5.6%と、2Qの6.0%から鈍化した。予想の5.9%も下回った。 11月の利上げ確率が指標発表前の33%から20%に低下した。
また中国への輸出が減少していることもNZドルの支えを失った。NZの9月貿易収支は23.29億NZドルの赤字で、前年同月の25.19億NZドルから縮小した。輸出は、粉ミルク、バター、チーズの海外向け出荷の減少(31%減)があった。中国向け輸出は前年同月比で20%減となった。中国からの輸入も17%減となった。今週は10月ANZの消費者信頼感指数の発表がある。
テクニカル分析
*ドル円「ボリバン上位で推移」
日足、ボリバン上位で推移。まだ10月3日のレンジ内での推移。10月17日-20日の上昇ラインがサポート。10月3日-20日の下降ラインが上値抵抗。5日線。20日線上向き。
週足、10月2日週は5週ぶり陰線も長い下ヒゲで、その後は2週連続陽線。7月24日週からほぼ右肩上がり。10月9日週-16日週の上昇ラインがサポート。10月2日週-16日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、一時、介入騒ぎで147前半まで突っ込むも戻してほぼ寄り引き同時。8月-9月の上昇ラインがサポート。22年10月-23年10月の下降ラインが上値抵抗。5か月線、20か月線は上向き。
年足、2023年はここまで陽線。2022年の長い上ヒゲを駆け上る。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「5日線上向き中位越す」
日足、ボリバン2σ下限から反発し漸く中位を越す。10月19日-20日の上昇ラインがサポート。10月19日-20日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く、20日線下向き。
週足、10月2日週は12週ぶり週足陽線も10月9日週は陰線。先週はスイスに引かれ陽転。雲の上に出るか。5週線、20週線下向き。10月2日週-16日週の上昇ラインがサポート。10月9日週-16日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、2か月連続陰線も今月も陰転。ボリバン中位割る。23年6月-7月の上昇ラインを下抜く。22年10月-23年9月の上昇ラインがサポートも下抜く。8月-9月の下降ラインが上値抵抗。5か月線、20か月線下向き。
年足、陰転。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し今年は反発していたが陰転。22年の下ヒゲが長く反発力あり上昇したが元に戻る。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインを上抜くも元に戻る。
*ユーロ円「雲の上に出る。2σ上限。5日線、20日線上向き」
日足、ボリバン3σ下限下抜きから2σ上限に上昇。雲の上に出る。10月19日-20日の上昇ラインがサポート。8月31日-9月20日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン上位で高原上に推移。10月2日週-16日週の上昇ラインがサポート。8月28日週-10月16日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向く、20週線上向き。
月足、スピード緩めるも年初来高値圏にあり。7月-10月の上昇ラインがサポート。8月-9月の下降ラインが上値抵抗。5か月、20か月線は上向き
年足、3年連続陽線。今年はさらに大陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜く。