総括
FX「貿易赤字、リラ安、高インフレのサイクル続く、国民は外貨選好」トルコリラ見通し
(通貨最下位、株価首位)
予想レンジ トルコリラ/円4.8-5.8
(ポイント)
*正統派経済政策はリラ上昇につながらない
*金利を引き上げても上昇しないリラ
*財務相 経済効果が出るのは1年かかる
*外交不安多い(仲介外交の失敗)
*消費者信頼感指数は改善
*今週は貿易収支、製造業PMI、消費者物価
*トルコ、スウェーデンのNATO加盟批准か
*パレスチナ紛争は、強いトルコの株も一時大きく下落させた
*国民の預金が再び海外へ流出している
*リラはメキシコペソや、南アランドのようには反発しない
*恒常的な貿易赤字や国民の外貨選好がリラ安を招く
*9月の消費者物価は61.5%
*為替介入原則なし=中銀
*中銀=インフレ見通しが改善するまで段階的な引き締めは強化
(上がらないリラ)
上がらないリラ。いくら利上げ(先週は30%から35%へ政策金利を引き上げ)をしても為替相場が上昇しないケースは過去数多くあった。20世紀の英国、EMSの南欧国、アルゼンチン、ジンバブエ、ヴェネズエラなどだ。国そのものが海外から評価を受けず、投資対象国とならなかったり、貿易赤字が一向に改善しない国々であった。シムシェキ財務大臣は正統派経済政策は時間がかかる、効果が出るまで1年かかるかもしれないと述べたが、まだその兆しも見えてこない。
(外交不安)
外交の安定も、海外からの投資を呼び込む要素の一つだが、スウェーデンのNATO加盟にも長く時間がかかった。PKKというテロ組織の問題でもあるが宗教上の問題でもあった。今回のパレスチナ紛争でもエルドアン大統領がイスラム教の盟主としてイスラエルのハマスへの反撃を虐殺としたことで、イスラエルとの関係は悪化した。イスラエルからのLNG輸入も中断するだろう。トルコ国内の人権問題もEUが非難するところであり、円滑な経済関係にも障害となる。外交、経済問題と難題多し。ウクライナ・ロシア仲介も頓挫。
(10月消費者信頼感指数は改善)
10月消費者信頼感指数は96.5、前月は95.4、予想は97.5であった。消費者部門は4.4%、建設部門は0.9%、サービス部門は0.5%、実物部門は0.2%上昇したが、小売販売部門は3.3%下落した。
100を超えると楽観的な見通しを示し、100を下回ると悲観的な見通しを示す経済信頼感指数は、2020年に過去最低を記録したが、コロナウイルス対策が緩和されるにつれて回復した。
(今週は消費者物価に注目)
今週は10月貿易収支、製造業PMI、消費者物価などの発表がある。恒常的な貿易赤字によるリラ安で消費者物価が上昇するサイクルが続く。日本もその気配がある。
(トルコ中銀、規制簡素化。効果はあるのか、リラ預金は増えるのか)
中銀は、再び大幅な利上げを実施した翌日、マクロプルーデンスの枠組みを簡素化し、トルコリラ預金の割合を増やすための新たな措置を発表した。
銀行が行っているリラ建て現金融資に基づいて30%の金利で適用されている証券維持慣行を終了すると発表した。
外貨保護口座の更新とリラへの交換を通じてリラの比率を高めるために、外貨預金の準備金要件に手数料を課す慣行に変更が加えられると述べた。
個人のリラ預金に占める割合の月間目標引き上げ率は2.5%から3.5%に引き上げられた。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
浮上せず
日足、陽線が多いが弱い。ボリバン3σ下限も何度か割り込む。雲の下で推移。5日線、20日線下向く。
10月27日-30日の上昇ラインがサポート。10月27日-30日の下降ラインが上値抵抗。雲中。
週足、小動きだがジリ安。10月16日週-23日週の上昇ラインがサポート。10月16日週-23日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向き、20週線下向き。
月足、2σ下限近辺で推移。7月-8月の上昇ラインを下抜く。5月-6月の下降ラインが上値抵抗。
年足、8年連続陰線。その間52円から5円台へ沈む。今年は僅かに陽転していたが3月から陰転。
メルハバ
イスラエルは戦争犯罪国家、また外交関係が波乱か
エルドアン大統領は、10月28日、イスタンブールで開かれたパレスチナ支持の大規模集会で演説し、イスラエルを戦争犯罪国家と非難した。
エルドアン氏は「イスラエルはこの22日間にわたり戦争犯罪を行ってきたが、西側の指導者はそれに反応するどころか、イスラエルに停戦を呼びかけることさえできていない」と述べた。
「われわれは全世界に対し、イスラエルは戦争犯罪国家だと明言するだろう。われわれはそのための準備を進めている」と語った。
エルドアン大統領は、ハマスはテロ組織ではないと強調。イスラエルを占領者だと指摘した。また、一部の西側国家によるイスラエルへの無条件の支援についても批判した。