ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「マイナス賃金、マイナスGDPでは大規模介入は難しい」

ドル円=149-154、ユーロ円=159-164、ユーロドル=1.04-1.09

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨11位(11位)、株価4位(4位)、外債利払いでのドル円の下押しは限定的か、マイナス賃金、マイナスGDPでは大規模介入は難しい」
先週は5日連続陽線で再びボリンジャーバンド上限へ上昇した。下はボリンジャーバンド中位を抜けきれない。リズム的には下押しがあっていいが下げも中位までか。需給では15日以降、数日は外債利払いの円買いが出る。ただ今週発表の10月貿易収支は7000億円程度の赤字予想で、依然ドルの下支え要因だ。7~9月期のGDPは4四半期ぶりのマイナス成長となる見込み。実質賃金は9月で18か月連続で減少。日銀がマイナス金利政策から抜け出せない要因はある。政府は5%賃上げ企業には減税するという強引な手法も打ち出してきた。植田日銀総裁が緩和政策を終了するはもう少し先、春闘を見てからだろう。

 さて円安が進み介入観測もあるが、貿易赤字による円安なので投機的でもない。IMFは介入する必要はないとしている。まだ欧米中銀がインフレにデリケートな姿勢をとっている状況だが、そこへ大規模円買い介入を行うのはG7から批判も出るので、口先介入か小規模介入にとどまる。ただ貿易赤字なので、ドル買いが収まるわけではない。

*米ドル「通貨4位(5位)、株価(NYダウ)12位(12位)、FOMCが慌てて緩和気味の市場に警鐘を鳴らす。世界の混乱の中で米国の強さは変わらず」
 11月は12通貨中で9位と弱いドルだが、先週は最強通貨となった。FOMC後のパウエル議長のインフレ低下発言で、米金利が下げ、ドルが下落していたことに先週は議長やFRB当局者が警鐘をならした。内容は一様で、「政策金利がインフレとの戦いを終わらせるのに十分に高い水準に達したとの確信はまだない」というものだ。ただ市場のデータはそれほど強くはない。

 4QGDPのアトランタ連銀ナウは2.1%と3Qの4.9%から大幅低下している。クリーブランド連銀のCPIナウは11月が3.16%に低下、サプライチェーンインデックスは10月は-1.74で9月の-0.69からさらに低下した。

 今週の10月CPI予想も9月の3.7%から3.3%へ低下する予想だ。

他の焦点は、11月17日のつなぎ予算終了で、政府機関の閉鎖となることだ。再び一時的な政策を打ち出さないと共和党も批判されるので何とか一時的な合意が再びなされるのだろう。ムーディーズは警戒して米国の格付け見通しをネガティブに変更したが、米国民間経済の強さが失われるわけでもないので混乱はしないだろう。米国は世界の紛争に武器・資金を提供、途上国にも救済資金を提供している。財政赤字が膨らむのは当然だ。それを阻止すると世界は混乱する。混乱すれば相対的に米国の強さが浮かび上がりまた米国にお金が集まってくるだろう。

*ユーロ「通貨5位(4位)、株価8位(7位)DAX)、リセッションの可能性あるも、利下げは「今後、数四半期はない。米ドル主導で動く」
 先週はドルが強く、年初来でもドルに再び抜かれ5位。対円では強く年初来高値を更新(161.94)。 前回の高値は2008年8月のリーマンショック前の169円台。
3Qのユーロ圏域内総生産(GDP)速報値は前期比0.1%減と予想を下回った。デギンドスECB副総裁は4Qはやや縮小するか、良くてもほぼ横ばいとなる可能性が高いとの見方を示した。リセッションの可能性はあるが、金融緩和には言及されない。ラガルドECB総裁は日、金融引き締めを緩める利下げへの転換を巡り「今後、数四半期はない」との認識を示した。欧州ではインフレ基調が鈍化するなか、景気不安が強まっている。当面も物価の安定へ引き締め継続が必要だとして、早期の利下げ観測をけん制した。

 一方、ビルロワ・ド・ガロー仏中銀総裁は、「われわれはインフレとの戦いに勝利しつつある。サプライズやショックがなければ、主要金利の引き上げは終わった。引き下げについて話すのは時期尚早」と強調した。インフレ率が2025年までに目標である2%に戻るべきだと述べた。

*ポンド「通貨3位(3位)、株価15位(15位)、3Qはマイナス成長免れる。中銀総裁は高金利維持を示唆」
 年間ではポンドは3位、株価は15位、高金利でポンド高、株安が続く。対円では年初来高値圏で推移している。英経済はマイナス成長を免れた。3Q・GDPは前期比0.0%だった。予想は0.1%減。ハント財務相は、引き続き高インフレが成長の最大の足かせになっていると指摘。11月22日の予算演説では投資や雇用を促進する対策を発表すると述べた。今の所、100億ポンドの減税が見込まれている。これにより、企業は設備投資に基づいて100%の税軽減を請求できるようになる。英財務省当局者らは、減税計画を2028-29年まで3年間延長してもインフレ上昇は起こらないとみている。現在、保守党と野党労働党との国民の支持率の差は20ポイントを超えており、保守党政権は圧迫されている。

 今週は10月消費者物価の発表がある。予想は前年比4.8%で9月の6.7%から低下する。コアも6.1%から5.8%に低下する予想。まだ目標の2%には程遠い。英中銀の利下げ開始予想は来年の7月以降だ。
ベイリー中銀総裁は、「インフレ率はまだ高すぎる。2%の物価目標まで確実に戻すために、高い金利を長期間、維持するつもりだ。さらなる利上げが必要かどうか見守りたい」と述べ、物価の動向などを注意深く見ていく考えを示した。

*豪ドル「通貨8位(7位)、株価14位(16位)、利上げしても豪ドルは下落」
 政策金利を0.25%引き上げたが豪ドルは弱い。先週は対ドルで0.65台から0.63台へ下落した。弱い円に対しても97円だから96円台へ下落した。RBAはインフレ率が予想外に上振れる可能性があると警告した。経済成長率と雇用に関する見通しも引き上げた。「理事会の優先事項はインフレ率を目標に戻すこと、合理的な時間枠でインフレ率が目標に到達することを確実にするために追加の金融引き締めが必要かどうかは、データとリスク評価の進展次第になる」とした。

 成長率見通しは4Qが前年比1.5%と従来の1.0%から上方修正。24年末時点の見通しは0.25%引き上げて2.0%とした。 失業率は24年に4.25%でピークを打つとし、従来予想の4.5%から引き下げた。現在の失業率は3.6%。消費者物価上昇率は2024年末までに約3.5%になると予想。従来予想の3.3%から引き上げた。25年末までに目標レンジの上限になると予想している。3Qは5.4%。

9月雇用統計、10月製造業・非製造業PMIが弱かったこともあり利上げ反対派もいる。
さて豪中首脳会談が行われた。両国は貿易、気候変動、農業の分野で協力することで合意した。豪は輸出全体の39%、輸入の28%が対中国だ。今後の中国の経済指標からも目が離せない。


*NZドル「通貨9位(9位)、株価19位(19位)、インフレ期待低下で反落」
 豪ドル同様にNZドルも弱い。NZの対中貿易依存度は豪より低いが、やはり中国が最大貿易相手国となっている。輸出の24%、輸入の20%が中国だ。中国の経済指標がNZ経済に大きく影響する。4Qのインフレ期待指数は2.76%と3Qの2.83%から低下したことはNZの長期金利を押し下げ、NZドルを下落させた。NZ中銀のインフレ報告書は、経済の減速と商品や商品の需要の低下の結果、物価下落が待ち構えているという認識を示した。1年後のインフレ期待は3.60%で、2Qの4.17%よりも低下した。また10月製造業PMIは42.5で9月の45.3より悪化した。売上高の減少、コストの上昇、選挙の不確実性により製造業部門が8か月連続で縮小した。11月29日の政策金利決定会合では5.5%で据え置きが予想されている。

 さて今週はサンフランシスコでAPEC首脳会議が開催される。この地域はNZ輸出の70%以上を占め、NZにとっては重要な機会となる。ただNZの選挙では国民党が勝利したが過半数に足りず現在、連立政権設立のための交渉中だ。暫定首相は前労働党政権のヒプキンス氏だ。APECに参加しないことはないが、代理出席では不安が残る。
 今週の経済指標は10月サービス業PMI、総合PMI、3Q卸売物価などがある。

テクニカル分析

*ドル円「先週は全日陽線も10月31日の高値上抜けず」
日足、先週は全日陽線。10月31日の大陽線のレンジは上下ともまだ抜けない。11月9日-10日の上昇ラインがサポート。11月1日-10日の下降ラインが上値抵抗。5日線。20日線上向き。
 介入警戒感でドルロングも出来ないが、仲値のドル需要で踏み上げ。
週足、10月23日週、30日週ともに長い上ヒゲを出すも先週は大陽線。ただ10月30日週の高値151.71を上抜けず。10月30日週-11月6日週の上昇ラインがサポート。10月30日週-11月6日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、11月は9月-10月の上昇ラインを下抜いて下落スタートも先週は戻す。5月-7月の上昇ラインがサポート。22年10月-23年10月の下降ラインが上値抵抗。5か月線、20か月線は上向き。
年足、2023年はここまで大陽線。2022年の長い上ヒゲを駆け上る。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。

*ユーロドル「ボリバン3σ上限から反落。5日線下向く」
日足、ボリバン3σ上限から反落。5日線下向く。20日線上向き。11月2日-10日の上昇ラインがサポート。11月9日-10日の下降ラインが上値抵抗。
週足、10月2日週以降は右肩上がり。ただ雲の上出ず、先週は陰線。10月30日週-11月6日週の上昇ラインがサポート。8月28日週-11月6日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向き、20週線下向き。
月足、11月は9月-10月の下降ラインを上抜いてスタート。22年11月-23年10月の上昇ラインがサポート。21年6月-23年7月の下降ラインが上値抵抗。5か月線、20か月線下向き。
年足、陽転。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し長い下ヒゲでサポ―ト。このところ陽転、陰転を繰り返す。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインを上抜くも元に戻る。

*ユーロ円「年初来高値圏維持」
日足、ボリバン2σ上限に沿って上昇。雲の上。11月8日-10日の上昇ラインがサポート。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン3σ上限。10月30日週-11月6日週の上昇ラインがサポート。5週線上向き、20週線上向き。
月足、年初来高値圏維持。7月-10月の上昇ラインがサポート。2008年8月-2023年10月の下降ラインが上値抵抗。5か月、20か月線は上向き。
年足、3年連続陽線。今年はさらに大陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜く。

情報提供元:FX湘南投資グループ
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