2023年末のボーナス(年末一時金)が、初めて全産業平均で80万円を突破することが分かった。一方、国際的にみると円安の影響で日本人のボーナスは大幅な下落が続いている。名目のボーナス支給額は増えたものの、グローバルでは日本人の貧困化に歯止めがかかっていない。手放しでは喜べない状況だ。

ドルベースでは3年間で25%の目減り

⺠間調査機関の労務⾏政研究所によると、東証プライム上場企業187社を対象に9月5日時点で調査した年末⼀時⾦の妥結⽔準調査によると、対前年同期⽐で 1.5%増の80万28 円となった。全産業平均で80万円を超えるのは1970年の調査開始以来、初めて。

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るった3年前の2020年末のボーナス(74万3968円)と比較すると7.5%の増加となり、コロナ禍の影響は完全に払拭された格好だ。

もっとも急激な円安により、ドルベースに換算すると2020年末の7130ドルから5350ドルと25.0%の減少になる。かつてはボーナスで海外旅行を楽しむ消費者も多かったが、円安と海外の物価高で事情は一変した。

この程度の支給増では、気楽に海外に出かけるわけにはいかないだろう。事実、JTB総合研究所によると夏のボーナス直後となる8月の日本人出国総数は、2023年が120万1247人。コロナ前だった2019年の211万人と比較すると、43.1%もの大幅減となっている。

国内も物価高で実質横ばい

ならば、国内で消費すればボーナスの上昇を実感できるのか?そうとも言えないようだ。2020年を100とする消費者物価指数は2023年9月時点で106.2に上昇している。これも円安により輸入品価格が値上がりした影響が大きい。物価を勘案すれば、年末一時金は3年間で1.3%の増加にすぎない。

さらに回答企業の従業員平均年齢が2020年の38.6歳から2023年には39.0歳と0.4歳上昇していることを考えれば、同一年齢では実質的に横ばいと見てよいだろう。初の80万円超となった今年年末一時金だが、消費を押し上げる効果は限定的な可能性が高い。

年末一時金の妥結額を業種別に見ると、製造業が前年同期比1.7%増の83万1644円、非製造業が同0.8%増の67万6060円。業種別に見ると最も高額だったのは自動車の95万6459円、最も低額だったのがサービスの59万6421円。対前期比の伸び率が最も高かったのは鉄鋼と機械の+6.1%、最も低かったのが紙・パルプの-6.4%だった。

文:M&A Online