数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識や教養として役立つ本も紹介する。

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少数株主にとっての「非上場株式売却入門」 いしだのりこ著、クロスメディア・パブリッシング

本書によると、日本では「非上場株式を売却するマーケット(株式市場)がない」という。事業承継やM&Aの必要性が叫ばれて久しいが、非上場株に対するマーケットは未成熟と言わざるを得ないだろう。

最新(令和3年)の経済センサスによると、日本の事業者数は367万者で、そのうち法人/会社企業数は177万社。執筆日時点の上場企業数は3904社(2023年9月21日時点)であるから、法人数に絞っても上場している日本企業の割合はわずか0.2%だ。つまり99.8%が非上場企業ということになる。

非上場企業の多くは同族会社だ。本当は適正価格で換金したいのに、会社の言いなりに二束三文で売るか、買い取りを拒否されるなどで悩んでいる人が多いという。本書ではそんな世間一般には知られていない「非上場株式売却の方法」をテーマに資産防衛の観点から特に知ってほしい最低限の知識をまとめ、読みやすい口語体で解説している。

全6章で構成されており、前半は株式に関する基礎知識と非上場株式特有の問題について取り上げ、後半は具体的に非上場株式を売却する際に必要な知識として売買価格の評価方法や換金化の事例、少数株主に関するQ&Aなどにページを割いている。

現金化できないのに多額の納税義務が生じるかもしれないという相続税の問題もあるそうだ。事業承継税制は大株主を対象としており、少数株主に対しての優遇措置はない。「自分は会社を継ぐわけではないから関係ない」と思っている方こそ、準備をしておく必要があるだろう。

著者は東証一部上場企業の創業者一族に嫁ぎ、現在はFAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)を中心に、生前相続対策支援や不動産投資等のほか、「少数株ドットコム」という屋号で非上場株式売却支援事業を行っている。PR本と言えなくもないが、敬遠せず手に取ってみては。(2023年7月発売)原文ママ

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(画像=「M&A Online」より引用)

文:M&A Online