「事業承継、後継者問題を結婚で解決する」というユニークなサービスを提供する「しあわせ相談倶楽部」(東京都千代田区)。代表の村田弘子さんはこれまで会計事務所や病院、200年以上続く老舗企業から町工場までさまざまな経営者本人やその跡取りの縁談を仲介してきた。村田さんにファミリービジネスと結婚を通じた事業承継について聞いた。

婚活で事業承継を後押し

ー事業承継問題の解決策として結婚相談所を始めたきっかけについて教えてください。

70年続く会計事務所の2代目にお見合いで嫁ぎ、家業のサポートをしていました。家業の助けになればと相続をテーマにセミナーを開催するなど外向きの仕事をしていましたが、何故かいつも顧問先や取引先から「村田さん、誰かいい人いませんか」という話になり、身上書を託されることもしばしばでした。

会計事務所の創業者である義父は精力的に税理士業を営む傍ら、ご縁をつなぐ活動にも熱心でした。義父の家にはまるで物流倉庫のように引き出物がたくさんあったのですが、嫁いで間もない頃はその理由がわかりませんでした。会計事務所なので葬儀に参列する機会は多いのですが、なぜ結婚式の引き出物がこんなにあるのかと。

今なら義父の気持ちが分かるような気がするのです。終活セミナーがはやり始め、人生をどう終わらせるかを考えるのが一種のブームになりましたが、一方で新しい命を吹き込み、次代を紡ぐことが大事です。家族経営や同族経営のファミリービジネスにおいても承継自体を回していかないと、しばしば指摘される「黒字廃業」は解消しないと義父は思っていたのでしょう。

義父は生前、「経営者の孤独に向き合い、寄り添いなさい」と話していましたが、私も縁結びの活動をするうち、義父から無言のバトンを渡されたような気分になっていきました。しあわせ相談倶楽部を立ち上げたのは2012年のことです。

名家の跡取りや起業家、老舗の士業事務所の跡取り、またはそのご両親などが良縁を探していますが、自分が大事にしてきたものを「未来につなげたい」という思いは人間の本能であり、そこに世代的に古いも新しいもないと思うのです。

年間20組を成婚に導く

ー成婚件数は年間でどのくらいありますか。

今年の成約は20組程度になるかと思います。コロナ禍を経てフルリモートで対応していますが、相談件数は増えています。婚活はいまやアプリやマッチングサイトが主流となりましたが、良家や資産家の跡取り息子や娘さんなどはお顔出しできないですし、万が一何かあったら取り返しがつきません。そうした方々からのご相談が増えています。

仲人役はきめ細かなフォローやサポートが求められますし、両家のつり合いを考えるとネットワークも必要です。「(難易度が高く)ウチではできない」とプライベートバンク(富裕層向け金融)の担当者や顧問先、プライベートでお付き合いのある方々からのご紹介も多く、相談件数も増えてきたので2021年に株式会社として法人化しました。

M&A Online
(画像=村田弘子代表、「M&A Online」より引用)