金融車とは「ローンの返済中にも関わらず別の融資などによって差し押さえられた車両が、何らかのルートで市場に出回っているもの」のことを言います。大手中古車買取店では買取してもらえず、もちろん販売もしてもらえません。金融車を売買するためには、各地域に点在する地域密着型の金融車専門店に相談する必要がありますが、その特性上、非常に特殊でリスクの高い売買となるため注意が必要です。本記事では金融車とは具体的にどのような状態のものなのかを解説し、売買におけるメリット・デメリットをご紹介します。後半では最も重要な「お店選び」についても触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
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金融車とは?:ローン会社名義のまま流通する車両
金融車は担保として差し押さえられた車両が市場に出回って販売されている車のことを言います。
金融車のおおまかな特徴は以下となります。
- 違法性はない
- 相場よりも遥かに安い金額で取引される
- 車検が残っていれば公道を走行可能
- 名義変更ができない
- 元の使用車が納税していないと次の車検は受けられない
- 任意保険に加入できない
- 売却も廃車もできない
車検さえ残っていれば、金融車を購入し公道を走行することに何の違法性もありません。
しかし、多くの場合は車の所有者は個人ではなくローン会社であり、ローン会社の許可が降りないと名義変更はできません。
よって、所有者はローン会社で使用者は元の持ち主のままであるため、金融車を購入した次のオーナーの名前は車検証上には載らず、それが理由で任意保険に加入することができません。
自動車税を納税していないと車検を受けることができませんが、自動車税の請求は「車検証上の使用者」に届くため、その方が納税していなければ新たに車検を受けることもできません。
もちろん売却や廃車手続きの為に必要な書類も揃わないため、転売することも不可能です。
金融車そのものに違法性はなく、相場よりもはるかに安く取引されていますが、上記のような点で普通の車とは大きく違う特殊な状態の車両となります。
金融車となる主な経緯は?:金銭的な理由が大半
金融車が金融車となる経緯は色々ありますが、大きく分けて以下4つのパターンがあります。
- 担保実行され差し押さえられた
- 車とは別の債務返済が出来ず「代物弁済」となった
- 使用者が直接金融車専門店へ売却した
- ローン返済が滞りローン会社に差し押さえられた
担保実行され差し押さえられた
銀行などではローン返済中の車を担保にお金を借りることはできませんが、中小企業クラスの金融会社であれば、ローン返済中の車でも資産的価値があると判断し、車を担保に融資を行うことがあるようで、金融業界ではこれを「車担保融資」といいます。
そこで返済が滞った車両は「担保実行」され、差し押さえられて金融車専門店へ移動され、それが市場へと流出していきます。
車とは別の債務返済が出来ず「代物弁済」となった
車以外のローンや融資の返済が滞った場合、現金での返済ができない代わりに物で支払うことになります。
これを「代物弁済」と呼びます。
ローンが残っている車もこの対象となるため、車は金融車として市場に出回ることになります。
使用者が直接金融車専門店へ売却した
使用者が何らかの金銭的理由からローン返済中の車を金融車専門店へ直接売却してしまったケースで、現在市場に出回っている金融車の多くはこれに当てはまります。
ローン返済が滞りローン会社に差し押さえられた
車のローン自体を滞納し、所有者であるローン会社に車を差し押さえられたというケースです。
1?3までのケースでは所有者であるローン会社以外が市場に流通させていますが、この場合は所有者であるローン会社自身が自ら車両を引き上げて市場へ流通させていることになります。
使用者の属性でも経緯は変わる
また、使用者が「個人」なのか「法人」なのかによっても経緯は多少異なります。
個人の車が金融車になるのは、主に使用者本人の金銭トラブルや借金苦、失業などが直接的な原因となるでしょう。
法人の車が金融車になるのは、「高級車を社用車として使用していたが経営難に陥り、資金繰りのための融資を受けたいと思い、ローン返済中の社用車を担保に借金をしたが結局破産してしまい車は金融車となってしまった」という経緯が多いようです。
金融車に高級車が多いのはこういった背景があります。
このように金融車そのものに違法性はないとしても、そうなった経緯には必ず「訳アリ」な理由があるため、売買には細心の注意が必要です。
金融車は売却できる?:普通の売却はできない
金融車は、通常の売却時に必要な印鑑証明書や譲渡証明書などの書類が揃わないため、ディーラーや買取店で売却することはできません。
金融車を手放したい場合は、金融車を専門に扱っている地域密着型の業者に依頼する他なく、その時は例外なく相場よりもはるかに安い金額での買取となります。
このように金融車には多くの制限があり、安易に手を出すべきではないといえます。
それでも訳アリの金融車が生まれる背景には、金融車を売買する上でのメリットがあるはずです。
では、次項では金融車の売買に関するメリット・デメリットについて解説していきます。
金融車の売買におけるメリットとデメリット
結論からいうと、金融車の売買は圧倒的にデメリットのほうが大きいですが、やむを得ない事情がある場合は一時的な救済処置にもなり得ます。
では、それらはどのような内容なのでしょうか。
金融車を売却するメリット:即金性が高い
ローンが残っている車を担保に出したり金融車専門店に売却すると、通常では売却できない車を現金化できるというメリットがあります。
「どうしても目先の資金が必要で、それを乗り越えさえすれば後は大丈夫なのに!」というタイミングでは有効な手段となるかもしれません。
また、売却する際には必要書類と車両が全て揃っていればその場で売買が成立し、「即日現金払い」を謳っている業者が多い為、手続きが簡潔で済むというメリットもあります。
ローン返済中の車を金融車専門店へ売却する際の主な必要書類は以下となります。
- 車検証 / 自賠責保険証 / リサイクル券
- 自動車税納付書
- 使用者の印鑑証明書
- 使用者の実印
- 使用者の免許証コピー
金融車を売却するデメリット:安く買い叩かれ悪用リスクもある
金融車の買取金額は一般相場の半額以下は当たり前で、残りの車検期間が短いとさらに金額が安くなります。
簡単にいうと100万円の価値があるはずの車が、金融車であるが故に50万円以下でしか買取してもらえないということになります。
また、名義変更ができないためトラブルに発展しやすいという致命的なデメリットがあります。
あなたの車があなた名義のまま販売されるので、次のオーナーが交通違反を起こした場合はあなたに罰金請求が届きますし、あなた名義の車が犯罪に利用される可能性もあります。
そして売却したからといってローン請求が止まるわけではないので、車を手放した後もローンの支払いは続きます。
ローン会社に無許可で売却したことが発覚した場合は車両の返還要求をされたり、強制的に名義を抹消されることもあるでしょう。
最悪の場合、詐欺や横領罪に問われる可能性もあります。
つまり、ローン返済中の車を金融車専門店に売却、引き渡すことはハイリスク・ローリターンであると言えます。
金融車を購入するメリット
逆に金融車を購入する側について考えてみましょう。
金融車を購入する最大のメリットは「高級車を破格の値段で手に入れることができる」という点です。
<値段の一例>
市場価格1200万円相当のレクサスLC500が610万円
市場価格330万円相当のアルファードが160万円
市場価格1000万円のベントレーが560万円
このように、車そのものは綺麗で問題がなくても、金融車というだけで相場の半額程度で買えてしまいます。
また、権利移転(名義変更)の手続きもない(できない)ため、購入する際は使用権利だけの売買となります。
そのため必要な書類も少なく、乗り出しまでの手間は通常よりも少なくて済みます。
金融車を購入するデメリット
当然ながら、購入する側にとっても以下のような沢山のデメリットがあります。
- 名義やナンバーの変更ができない
- 使用者が違うため、ディーラーでの整備を断られる場合がある
- 書類が無いため通常の売却も廃車もできず、保有し続けなければならない
- 再売却時はさらに安く買い叩かれる
- 名義が違うため、任意保険に加入することができない場合がある
- 次の車検を受けられない場合がある
- 元の所有者がローン完済し、突然車の返還を求められる可能性がある
- 元の所有者が突然車検や名義を抹消する可能性がある
- 元の所有者がローンを滞納し、ローン会社が突然車両を引き上げる可能性がある
- 元の所有者が死亡したり行方不明になる可能性がある
- 元の所有者が反社会的勢力である可能性がある
- 車両やナンバーから、元の所有者が購入者の住所を特定する可能性がある
- ネットオークション等でも取引禁止されている事が多い
このように、購入する側にとっても数々のデメリットが存在します。
近年では違法性の高い金融車を取り扱う業者は減り、きちんと管理やアフターフォローを行う金融車専門店が増えているようですが、それでもこういったリスクはある程度覚悟しておく必要があります。
実際に「自動車税は新オーナー自身が支払う」「違反金は新オーナーが支払う」「元所有者からの要求には仲介に入る」「金融車でも加入できる任意保険を紹介」「金融車の車検担当会社の斡旋」など、双方に安心を与えるようなルールや規則を設け、健全化に務めている業者もいるようです。
信頼できる業者の見極め方とは?:業者選びが最重要課題
金融車を扱う業者といえば、反社会的勢力や悪徳業者のイメージが強く、実際にそのような業者が存在していることは否定できません。
金融車の売買において業者選びには細心の注意が必要ですが、どんなところに気を付けたらよいのでしょうか。
信頼できる業者の見極め方を紹介します。
買取・購入後のアフターフォローを徹底している業者
売主、買主の双方に対してアフターフォローを徹底している業者を選ぶことは、最重要ポイントとなります。
金融車を取り扱う業者は、通常とは異なり自動車税、違反金、ローンの滞納、車検など様々な問題の仲介を行わなければ即トラブルに直結します。
買ったら買いっぱなし、売ったら売りっぱなしの業者では確実にトラブルに巻き込まれてしまいますので、徹底したアフターフォローを宣言している業者を選ばなくてはいけません。
「自社提携の整備工場を持っている」「事故対応サービスの窓口を設けている」「任意保険会社との提携」「放置違反金保証」などのサービスを提供している業者を見つけましょう。
いつでもすぐに連絡が取れる業者
何かあった時にすぐに連絡が取れない業者は、いざと言う時に何の力にもなってくれない悪質な業者である可能性があります。
ネット上では携帯電話番号で24時間・年中無休で対応している業者も見かけます。
連絡が取りにくい業者は信用できないため、避けたほうが無難でしょう。
倒産するリスクがない業者
金融車専門店で金融車を購入し、肝心のお店が倒産してなくなってしまった場合どうしますか?
元の所有者の居場所や連絡先などは知り得ないでしょうし、きっと途方にくれてしまうことでしょう。
そういった最悪の事態を避けるためにも、経営が安定していて倒産するリスクが少ない業者を選ぶべきです。
誇大広告・委託販売をしていない業者
誇大広告が多かったり、委託販売ばかりしている業者には要注意です。
その他にも「HPの内容がしっかりしており、頻繁に更新されている」「会社住所が明記されている」「買取・販売の実績を公表し、更新している」「自社在庫を持っているか」など、注意すべき点は沢山あります。
必ず利用前に精査し、信用できる業者を選びましょう。
金融車の売却に関するQ&A
Q 金融車を買えば安く高級車に乗れるからお得なのでは?
A 確かに安く高級車に安く乗れますが、購入者の資産になるわけでも所有物になるわけでもありません。
特性をよく理解してから購入しなければトラブルに巻き込まれる可能性があります。
Q 金融車が事故にあった場合はどうなるの?
A 保険金の支払いは使用者や所有者の許可が必要で、協議中扱いとなり支払いが滞る可能性があります。
最悪の場合は修理費や損害賠償が実費負担になる可能性もあるため、購入前に販売元とよく打合せをすべきです。
金融車売却のまとめ
金融車の売却には「即金性が高い」というメリットがありますが、相場よりもはるかに安い金額にしかならず、売却後に新オーナーに悪用されたりするトラブルに発展するリスクがあります。
一方で、購入する際には「破格の値段で車が買える」というメリットがありますが、元所有者の都合で突然車を奪われたり、車検や売却で不便な思いをするかもしれないというデメリットがあります。
売却時・購入時ともに細心の注意を払って利用する必要がありますので、金融車を取り扱う際はくれぐれもご注意ください。