1985年、横浜国立大学卒業後、(株)福武書店(現(株)ベネッセコーポレーション)入社。進研ゼミ事業で編集長や営業課長などを経て、1998年より人事部門へ。ベネッセグループのさまざまな事業で、採用や組織企画、人事制度の設計など幅広い人事業務の経験を積む。
その後、2013年から大手アパレル、2019年に不動産と、さまざまな業界で企業の人事戦略責任者として活躍。2022年9月、(株)AOKIホールディングス入社。2023年現在、当社取締役執行役員グループ人事管掌としてAOKIグループの人事戦略を担う。
公式ホームページ:https://www.aoki-hd.co.jp/
ダイバーシティ経営の取り組み
ダイバーシティ経営の取り組みとしては、2021年、社内にサステナビリティ推進室を設置し、グループ全体での積極的なアプローチがスタートしました。現在は、AOKIグループ内のファッション、ブライダル、エンターテイメントといった働き方やマーケットが異なる業態で、それぞれの事業における課題や特性を考慮し、共通の取り組みと個別の施策を推進しています。
女性管理職の増員などを含む女性の活躍推進については、以前からグループ全体の課題と認識しており具体的な取り組みも行っていました。元々当社は紳士服専門店としてスタートしており、従業員も男性中心でした。その後グループとして、ファッション事業では商品展開の拡大や業界特性から女性の新卒者の応募数も多くなり女性従業員が増加しました。またブライダル事業では事業の特性により女性が中心であり、結果グループとしては従業員構成も多様化し、採用や人材確保という面では男女の区別なく進められている状況です。
ただし、長い歴史を持つ会社として、これからの事業展開と従業員の働きやすさやウェルビーイングの両立を考える際には、過去の歴史を踏まえる必要もあります。そのうえで、元々ある風土を変革しながら、事業拡大と従業員の幸福度向上との両立を推進しています。
AOKIホールディングスが考える、今の時代に必要な従業員とその向き合い方
まず、ダイバーシティ経営を社内で浸透させる施策の一つとして、人事がグループ従業員向けに発行している社内報の中で、サステナビリティに関するテーマを毎号連載し、従業員の理解を深めるための工夫をしています。さらに、2022年からは情報発信だけではなく、実際に制度を活用してもらえるためのガイドブックをリニューアルしました。例えば育休を取得するためにはどういう手続をしたらいいかなどの内容をわかりやすく解説しています。1つ1つは小さな施策ですが、丁寧に積み上げていく取り組みを続けていくことを大切にしています。
女性に活躍してもらうためには、当事者やマネジメント側の意識だけでなく、制度面の投資も必要です。当社やグループ各社の本社は比較的働き方の自由度が高く、在宅勤務などがしやすい環境ですが、マジョリティである店舗勤務をしている方の環境整備については課題もあります。たとえば、ファッション事業では店舗が夜8時まで営業していることやブライダルなど土日祝日に働く必要のある事業もあるので、従業員が子どもを保育所に預けられない問題があります。この点については、実際に働く従業員にヒアリングをしながら、柔軟に対応していきたいと考えています。
従業員側のウェルビーイングと企業成長を一致させるためには、さまざまな課題もありますが、方向性としては解決できるように調整しています。現在は一部事業で、従業員の意思や状況によって働き方をフレックスに選べる制度を導入するなどの施策を始めました。
外国人採用については、事業的に海外進出していないことや、お客様のご要望を細かくくみ取りご提案をする事業形態が多いことから、注力できていないのが現状です。しかし、2030年には600万人の労働力不足が予測されるなど、日本の就労人口が減少していくなかで、外国人採用についても議論を進めていけなくてはいけない検討すべき課題と認識しております。
これからのお取り組みについて
2023年に、これまでの従業員満足度調査から、より具体的に従業員の想いを測り、効果的なアプローチ手法をとるため新たな従業員エンゲージメントサーベイを導入しました。導入の結果ほぼ100%の従業員から回答がありました。自由にのびのびと回答いただいた内容から、今後何を強化していくとエンゲージメントが高まるのか、サステナビリティ推進室と人事部が密に連携しながら分析と検討をしています。
サーベイの結果から、AOKIグループ全体での特徴として経営理念の浸透がされている点、従業員の多くが自身の会社や仕事に誇りを持っている点を確認できたことは大変ありがたいと感じました。一方で、自身のキャリアへの不安や今後の会社の方針について知りたいという声も見られたため、コミュニケーション面については課題を感じており、現在改善に向けてさまざまな施策を実施しています。
従業員の育成面では、当社グループは異なる事業分野を持つため従業員がグループの中で越境体験をしやすいというのが強みです。違う事業で異なるアプローチの結果、成果を出す経験を積むことで、新しい視点を得られる機会を提供しやすいと思っています。今後はこの環境をさらに活用し、公募制ではなく従業員主体でのジョブローテーションの強化を進めることで成長支援を行っていきたいと考えています。また、スキルの向上については、会社が与えるOFF JTだけでなく、公的資格取得支援制度のような、従業員自らが学びたいことを支援する環境づくりを強化し、人財育成のための投資を推進していきたいと考えています。
- 氏名
- 川口 佳子(かわぐち よしこ)
- 会社名
- 株式会社AOKIホールディングス
- 役職
- 取締役執行役員 グループ人事管掌