総括
FX「さあトランプが出てきた。トランプ大統領とメキシコペソの過去と今後は」メキシコペソ見通し
予想レンジ 8.3-8.8
(ポイント)
*22年、23年と最強通貨となった。ペソ円の年足は3年連続陽線
*24年も好スタート ただドルも強く現在3位
*トランプ大統領とメキシコペソの関係は
*ニアショアリングと郷里送金がペソ高の原動力
*弱点は財政赤字拡大
*24年はペソ安予想もある(対ドル)
*自動車生産・輸出・国内販売、いずれも増加、23年
*12月消費者物価は上昇もコア低下
*1月発表の他の指標はやや弱い
*6月2日が大統領選挙
*2024年1Qに利下げを検討する可能性、ロドリゲス中銀総裁
*中銀ヒース理事、来年2月か3月までに金利を「調整」する可能性示唆
*マヤ鉄道の開業は財政負担となるか
*対ドル1.6台突入はペソ高懸念にも注意
*大統領は「スーパーペソ」の復活を歓迎
*ペソ高が輸出に悪影響を与えるという懸念なし、財務副大臣
*トランプ大統領が誕生すればメキシコに一波乱あり
*メキシコペソ「8.3-8.8、さあトランプが出てきた」
(ドルに抜かれるが上位は維持)
2024年スタートは先週末では最強通貨であったが、今週はドルとポンドに抜かれ3位。対円では年初来3.86%高でまずまずの動き。もちろん下落しているわけではないが、対ドルで16ペソ台は定着せず、現在は17台前半で若干ドル高ペソ安。
(今後の焦点は2月8日の政策金利決定)
今後の焦点は2月8日の政策金利決定、FRBの動向や声明が参考にされる。その前に、11月小売売上、経済活動指数、1月インフレ指標、12月失業率、貿易収支、4Q・GDP、1月企業信頼感指数、製造業PMIなど十分なデータを入手できる。米墨どちらが先に金融緩和政策に転じるかが注目される2024年。
(ペソが一時下落、トランプ大統領の予備選勝利で)
ペソは今年も対円では強いが、対ドルで足踏み、年初来最強の地位を米ドルに譲っている。
メキシコペソは今週、中東紛争の拡大や共和党アイオワ州党員集会でのトランプ氏の勝利などを受けて対米ドルで下落した。昨年の中国の経済成長率が予想を若干下回ったこともリスク回避を強め、ペソに影響を与えた。
トランプ大統領は予備選の勝利演説で、メキシコとの「国境を封鎖する」と約束した。「なぜなら、今、我々は我が国に流入してくる何百万もの人々の侵略を受けているからだ」と。
テキサス州が米国に入国するトラックに対して厳格な検査を実施した際に起きたように、このような動きはメキシコと米国の間の貿易の流れに影響を与える可能性がある。
また、リスク回避と米国の早期利下げ期待の低下によりドルが上昇した。
米国の利下げ前にメキシコの利下げが行われれば、両国の公定金利の差が少なくとも一時的に縮小するため、ドルにとって有利となる。
ただトランプ大統領も米経済に深く関わってきているメキシコへの攻撃を強めると、自らも悪影響を受けることも間違いない。
(トランプ大統領によるメキシコのリスク )
アイオワ州でのトランプ氏の勝利後にペソが下落したが、米大統領選でトランプ氏がヒラリー・クリントン氏を破った2016年ほど「もはやメキシコに対するリスクは強くない」と見られている。
「トランプ大統領によるメキシコのリスクは、1) フェンタニル危機2)移住3)トランプ氏が提供できるインセンティブによる企業の移転、そしてそれはメキシコからのニアショアリングの機会の一部を奪う可能性がある。4) 2026 年に予定されている USMCA の見直し5) 現在の地政学的紛争に関するコメント、などだ。
リスクは「バイデン氏も同じ」としながらも、トランプ氏の発言が「より攻撃的」であり、それが「市場のさらなる動きを引き起こす」と指摘されている。
2024年のUSD:MXN為替レートはトランプ氏の発言に対して「限定的な形で」反応し、今年のペソは1ドル=18〜18.50ペソまで下落すると予想した。ただ円安が続けばペソ円の水準は大きくは変わらない。
テクニカル分析
雲の上、ボリバン上位は維持
日足、年初来堅調。8.60台では揉み合う。雲の上、ボリバン上位は維持。1月2日-17日の上昇ラインがサポート。1月16日-18日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン中位を割り込んでいたが上位に浮上。12月18日週-1月2日週の上昇ラインがサポート。11月20日週-27日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、23年7月から山なり状態が続く。10月-12月の上昇ラインがサポート。8月-11月の下降ラインが上値抵抗。
年足、23年で3年連続陽線。14年-22年の下降ラインを上抜く。22年-23年の上昇ラインがサポート。
VAMOS MEXICO
2017年のトランプ大統領就任時のメキシコ政策とメキシコ側の対応と当時の報道
トランプ米大統領は、①メキシコ政府の資金負担による国境間の壁建設、②メキシコから米国への不法移民の強制送還および移民送金の規制、③北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを主張、実施されればメキシコ経済に打撃となる。
ペソは下落したが、メキシコ中銀の利上げや為替スワップ入札等のペソ防衛策、トランプ政権の保護主義的な通商政策への警戒感の後退で下げ止まった。中銀は、5回連続となる利上げを実施した。
またNAFTAからの離脱を命じる大統領令を検討していると報じられペソは下落したが、その後、トランプ大統領がカナダのトルドー首相、メキシコのペニャニエト大統領と電話会談を行い、NAFTAの再交渉を目指すが、現時点では終結させないことで合意したと報じられ、ペソは反発。
・当時の報道=メキシコは米国にとって安全保障面においても重要な国であり、政治・経済的に不安定化することは米国も望んでいないと考えられる。為替市場においては、ペソの持ち直しはある程度進んだが、購買力平価でみた通貨の実力からすると、依然として割安感は大きく、今後の対米通商交渉の進展を通じて不透明感が後退していけば、この先もペソが戻りを試す展開が十分に想定される。
この後、コロナ禍、ウクライナ危機での米国のサプライチェーン見直し、ニアショアリング政策でペソが急騰したことは申すまでもない。