株式会社ファインデックス
(画像=株式会社ファインデックス)
相原 輝夫(あいばら てるお)――株式会社ファインデックス代表取締役社長
1966年愛媛県出身。1990年に大学を卒業後、国内大手電機メーカーにてエンジニアとして勤務し1994年に創業、現在に至る。2011年3月ジャスダックに上場、2014年11月東証第一部、2022年4月に東証プライムへ移行。幼少期からモノ創りが大好きで、座右の銘は、建築家ミース・ファン・デル・ローエの「神は細部に宿る」。
株式会社ファインデックス
ソフトウェア開発会社としてスタートした当社は、30年以上にわたり、日本の医療市場で信頼されるベンダーの一つとして、大学病院からクリニックまで、全国の医療機関へ臨床を支援するさまざまなソリューションを提供しています。研究開発を強みとする当社は、国立大学病院との共同研究開発による製品を複数販売しており、現在では医療機器のグローバル展開へ向けて活動しています。

目次

  1. これまでの事業変遷について
  2. 経営判断をする上で最も重視していること
  3. 自社が今後関連していくテーマ
  4. ZUU onlineユーザーならびにその他投資家へ一言 など

これまでの事業変遷について

株式会社ファインデックス
(画像=株式会社ファインデックス)

冨田:まずは創業期からの事業の変遷についてお話いただけますか。

株式会社ファインデックス 代表取締役社長・相原 輝夫氏(以下、社名・氏名略):私はNECでエンジニアとして働いていましたが、そこから独立して創業したことが当社の始まりです。元々は、医療システムとは関係ない年金システムのエンジニアでした。しかし、医療業界で紙カルテから電子カルテに変わるタイミングだったこともあり、たまたま医療システムの仕事に関わることになりました。

それがきっかけで、いくつかの病院にシステムを提供していくうちに、口コミで評判が広がり、大きな仕事をご依頼いただくようになりました。それが医師会や大学病院などのお客様とのお仕事に発展し、現在の規模まで伸びてきました。

冨田:医療システムに舵をきった背景にはどのような考えがあったのでしょうか。

相原:私自身も社員も、医療システムには改善できる点がたくさんあると感じていました。当時の医療システムには効率的でない部分が多く、それを改善することが私たちにとって面白く、社員も楽しんで取り組んでいました。仕事をしているというよりも、サークル活動のような感覚で取り組んでいました。また、当時は電子カルテの創成期で、医療業界のIT化のニーズが拡大していたこともタイミングが良かったです。

冨田:順調に成長してきたように感じましたが、市場の特徴や成長性についてはどのように考えていますか。

相原:医療の世界では、一つのミスで大きく信用が失われるため、失敗は許されません。医療データはプライバシーに関わるため、データ漏えいや破損についての意識は非常に強いのです。また、医師会や学会などの強いネットワークがあることで、情報が伝わる速度が速かったり、参入障壁が高かったりすることもこの業界の特徴です。

そのため、今まで大手企業がマーケットを握っていましたが、私たちのような中小企業が伸びてきたことは珍しいパターンだと思います。

経営判断をする上で最も重視していること

冨田:一度の失敗が命取りになる業界で、順調に拡大を続けていることは素晴らしいことだと思います。そのような環境の中で、どのような軸で経営判断を行っていますか。

相原:「私たちがやるべき仕事」であるかどうかが重要な軸であり、経営判断の根幹だと思います。例えば、誰でもできるような仕事や単に利益を追求するだけの仕事は、積極的に選ぶべきではないと考えています。私たちにしかできない仕事に取り組むことで、社員の熱意も高まると感じています。

冨田:目先の利益ではなく、お客様から信頼される仕事を選ぶことで、業界内での評価も高まり、事業拡大してきたという話につながっているわけですね。

相原:そうですね。私たちは医師会や大学病院などの大きな病院のネットワークの中で信頼されてビジネスをしてきました。例えば、医療者の求人情報のようなビジネスは、利益を作りやすいですが、医師会などが取り組むべきことであり、第三者である事業会社がそれをビジネスにして利益を得ることは、医療機関から利益を吸い上げることだという意見もあり、私たちのやるべきことではないと判断してきました。

逆に、電子カルテのデータ管理やクラウドを使った患者情報の取り扱いなどは、すぐには利益が出にくいですが、私たちの仕事だと考えて取り組んできました。なぜなら、これらに取り組むことが、将来的に大きな価値を生み出すことに繋がるからです。情報漏洩を防ぐためにデータはアナログで管理するという常識から、重要なデータもネットワークを通じて即時でやりとりすることが当たり前になりつつあり、そのレギュレーションの変化によって、利益にはなりにくいが「私たちがやるべき仕事」と認識していた領域に、お金もついてくるようになってきています。この移り変わりにより、私たちが価値提供できる領域は広がっていくと感じています。

自社が今後関連していくテーマ

冨田:これから未来に向けて話を進めたいと思いますが、今後、貴社が大きく関わっていくと考えているテーマについて教えてください。

相原:まずは、私たちの事業の軸にある、病院情報システムと呼ばれる分野です。院内のDXはすでに多くの医療機関が進めていますが、それが発展し病院の中と外を結びつける仕事が新しいビジネスとして生まれてきます。

例えば、医療機関でもクラウドサービスの利用が可能になり、これまで院内に閉じて運用されていたデータを院外と安全にやり取りすることができるようになってきました。多くの患者はスマートフォンを介してクラウドサービスの利便性を享受できるようになると同時に、病院と薬局や介護施設、クリニックなどがデータでつながり始めます。これにより、施設間でのスムーズな情報共有が広がっていきます。

冨田:それは非常に便利そうですが具体的にはどのようなサービスが提供されるのでしょうか。

相原:例えば、私たちが昨年京都大学医学部附属病院様でスタートしたプロジェクトでは、患者が当社製のアプリをインストールし、各自の診療IDと紐付けることで、スマホで保険証の確認ができ、病院への来院も自動で検知されることで、病院での受付が不要になりました。また、診察終了後に患者が病院から出た際には、アプリに登録済みの決済システムから自動で支払いが行われることで自動精算機での会計も不要になるのに加え、指定した薬局に寄ると既に処方薬が準備されている、など大規模病院の受診フローが各段にスムーズになっていきます。

冨田:今後、そのような未来を実現し、さらに発展させていくためには、何が重要であると考えていますか。

相原:それは、もう一つのテーマとして考えている「データ」の活用です。患者データの匿名性が安全に担保されながら、創薬や様々な研究に利用され始めることが重要です。これは10年以上前から検討されていたことで、安全性や法律などの観点から実現されていなかったものです。

この領域については、これまで状況を観察することしかできなかったのですが、徐々に条件が整い始めており、私たちも経過を観察する側から、実用のための制度や仕組みを作る側としてこの取り組みに関わるようになってきました。この「データ」の活用については、私たちのビジネスだけでなく、医療業界全体に影響を与えるような大きな要素ですので、重点テーマの一つとして考えています。

冨田:2つのテーマが重なることで医療業界だけではない世界観まで広がって行くような予感がして今後の展開が楽しみです。

ZUU onlineユーザーならびにその他投資家へ一言 など

冨田:最後にZUU onlineユーザーや今回の記事を読む投資家の方たちへ一言お願いします。

相原:私たちはヘルステックをはじめとした新しい技術を次々と開発していますが、コンシューマービジネスではないため、皆様の目に触れにくく、実際に私たちの存在を感じるシーンも少ないかもしれません。

しかし、いずれは、世の中の多くの人が知っているもの、あるいは実際に触れているものに一気に変わるタイミングがくると思います。なかなか理解が難しい分野ですが、そのような予感を持って当社分析していただけると、同じ世界感を共有することができ、期待を持っていただけるのではないかと考えています。

氏名
相原 輝夫(あいばら てるお)
社名
株式会社ファインデックス
役職
代表取締役社長