株式の配当金は、特定の銘柄を保有することで得られるリターンです。平均的な利回りを想定した場合、年間100万円の配当金は現実的といえるのでしょうか。

年間の配当金100万円を目指すには4,500万円以上が必要

年間100万円の配当金は可能?資金はいくら必要かシミュレーション結果を解説
(画像=KtStock/stock.adobe.com)

東京証券取引所の平均利回りを想定した場合、年間100万円の配当金を得るには約4,500万円~6,850万円の資金が必要です。実際の金額は銘柄によって変わりますが、仮に5.0%の利回りで運用しても、2,000万円を投資に回す必要があります。

外国株式に目を向けると、国内より利回りが高い銘柄もありますが、それでも年間100万円の配当金を得るのは容易ではありません。株式投資において配当金だけを重視すると、株価の変動によって大きな損失が生じる可能性もあります。

配当金100万円はいくら?必要な投資資金を計算

平均的な利回りを想定する場合、年間100万円の配当金を得る資金はいくら必要になるのでしょうか。以下では、東京証券取引所に上場している国内株式を想定して、必要資金の計算を行いました。

平均利回りを想定した場合の計算

年間100万円の配当金を得るための必要資金は、以下の式から計算できます。

<必要資金の計算式>
1年間の配当金(100万円)÷利回り=必要資金

日本取引所グループの資料「株式平均利回り(※1)」によると、2024年2月における配当金がある企業の平均利回りは以下の通りです。

プライム市場:2.06%
スタンダード市場:2.21%
グロース市場:1.46%

上記のデータをもとに、100万円の配当金を得るのに必要な資金を計算(※2)してみます。

<プライム市場>
100万円÷2.06%=4,854万3,689円
<スタンダード市場>
100万円÷2.21%=4,524万8,868円
<グロース市場>
100万円÷1.46%=6,849万3,150円

上記の通り、平均利回りが最も高いスタンダード市場でも、年間100万円の配当金を得るには約4,500万円の資金が必要です。利回りが下がるにつれて必要資金は増え、グロース市場では約6,850万円の資金が必要になることが分かりました。

(※1)参考:日本取引所グループ「その他統計資料
(※2)小数点以下は切り捨て。税金を含めないで計算。

利回り別の必要資金はいくら?

上記の計算結果は、あくまで平均利回りを想定したものです。実際の必要資金は銘柄によって変わり、中には利回りが5.0%を超える国内株式も見られます。

平均利回りから離れている場合、年間100万円の配当金を得る資金はいくら必要になるのでしょうか。参考として、以下では利回り別の計算結果を紹介します。

<年間100万円の配当金に必要な資金>

利回り必要資金
1.0%1億円
2.0%5,000万円
3.0%3,333万3,333円
4.0%2,500万円
5.0%2,000万円
6.0%1,666万6,666円
(※小数点以下は切り捨て)

配当金は企業の業績や株主還元の方針によって変動するため、上記の必要資金はあくまでも参考程度に留めてください。

年間配当金100万円で暮らせる?生活費はいくら必要か

年間100万円の配当金で暮らす場合、1ヵ月に使える生活費は以下のように計算できます。

<1ヵ月に使える金額を計算>
年間のリターン÷12ヵ月=1ヵ月に使える金額
100万円÷12ヵ月=8万3,333円
(※小数点以下は切り捨て)

ここからは単身世帯と二人以上世帯に分けて、年間100万円の配当金で暮らす場合のシミュレーションを行います。

単身世帯のシミュレーション

総務省統計局の家計調査によると、2023年における単身世帯の平均支出額は以下の通りです。

消費支出の内訳1ヵ月あたりの支出額
食料4万2,049円
住居2万3,799円
光熱・水道1万3,045円
家具・家事用品5,760円
被服及び履物4,447円
保健医療7,367円
交通・通信2万1,654円
教育2円
教養娯楽1万8,794円
その他の消費支出3万704円
合計金額16万7,620円

1ヵ月あたりの平均支出額が8万3,333円を超えているため、100万円の年間配当金だけで暮らすことは難しいといえます。どれくらい生活費が不足するのか、以下で簡単にシミュレーションをしてみます。

<不足している生活費の計算>
1ヵ月あたりの生活費-1ヵ月あたりの配当金=不足している生活費
16万7,620円-8万3,333円=8万4,287円

1年間に換算すると、単身世帯の場合、不足している生活費は101万1,444円になります。

二人以上世帯のシミュレーション

二人以上世帯についても、総務省統計局の家計調査(2023年)をもとにシミュレーションを行います。

消費支出の内訳1ヵ月あたりの支出額
食料8万1,738円
住居1万8,006円
光熱・水道2万3,855円
家具・家事用品1万2,190円
被服及び履物9,297円
保健医療1万4,645円
交通・通信4万2,693円
教育1万446円
教養娯楽2万8,630円
その他の消費支出5万2,498円
合計金額29万3,997円

<不足している生活費の計算>
29万3,997円-8万3,333円=21万664円

100万円の年間配当金だけでは、二人以上世帯の場合、毎月の生活費は21万664円不足することが分かりました。1年間に換算すると252万7,968円となるため、配当金だけでの生活は難しいといえます。

年間配当金100万円を現実的にする方法4選

資金不足によって目標を達成できない場合は、どのように投資の計画を立てればよいでしょうか。ここからは、年間100万円の配当金を現実的にする方法をご紹介します。

【1】配当利回りが高い株式を選ぶ

配当利回りが高い株式を選ぶと、目標を達成するための必要資金が減ります。実際にどれくらい減るのか、東証プライム市場の平均利回りをもとに計算してみましょう。

<100万円の配当金を得るための必要資金>

利回り必要資金
2.06%(平均利回り)4,854万3,689円
3.06%(平均から+1%)3,267万9,738円
4.06%(平均から+2%)2,463万541円
4.12%(平均利回りの2倍)2,427万1,844円
5.06%(平均から+3%)1,976万2,845円
(※小数点以下は切り捨て)

配当利回りが2倍になると、目標金額を達成するための必要資金は2分の1になります。株式投資のリターンは株価によっても決まるため、利回りの高い株式がよい銘柄とは限りません。配当利回りが高い銘柄はあくまでひとつの選択肢なので、実際の投資では他の指標や情報も確認してください。

【2】米国株式も選択肢に入れる

配当利回りが高い株式を探す場合は、米国株式を候補に入れてみるのもよいでしょう。国内株式に比べると、米国株式は株主への還元意識が強い傾向にあります。

例えば、米国株式には配当利回りが10%を超えている銘柄や、数十年にわたって配当金を増やしている(連続増配)銘柄が見られます。このような銘柄を選べば、資金が少なくても年間100万円の配当金を期待できるかもしれません。国内株式とは違って米国株式には、為替変動をはじめとした特有のリスクがあるため、投資の前には情報収集や銘柄分析を徹底することが重要です。

【3】受けとった配当金を再投資する

配当金を再投資すると、複利運用によってリターンを増やす効果が期待できます。

複利運用とは、配当金などの運用益を再投資に回すことで、利益からリターンを生み出す手法です。長期的に続けると、再投資に回す運用益が積み重なっていくため、元本が少なくても大きなリターンを期待できる可能性があります。株価が下落している局面においては、複利効果は生まれない点には注意が必要です。

【4】他の投資手法や金融商品で資金を増やす

配当金で期待できるリターンは限られるため、複利運用を続けても年間100万円を達成できるとは限りません。投資資金が大きく不足している場合は、他の投資手法や金融商品もひとつの選択肢になります。

具体例としては、株式の売買や投資信託での運用などがあります。他にもETF(上場投資信託)や債券など、金融機関によってはさまざまな金融商品を取り扱っています。それぞれ特有のリスクあるので、金融商品としての特徴やリスクの種類を確認してから投資を検討することが大切です。

年間配当金100万円を目指すときの注意点

株式投資で配当金だけを重視すると、損失のリスクが上がってしまうこともあります。実際には何に注意して、株式を運用したらよいのでしょうか。

減配と無配になる銘柄もある

配当方針は、その企業の業績や経営戦略によって変わることがあります。もし保有中に1株あたりの配当金が減ったり(減配)、配当金自体がなくなったり(無配)すると、安定したリターンを期待することはできません。

以下では、株価1,000円、1株あたりの配当金が20円の銘柄に5,000万円を投資するケースを想定して、配当金が減った場合のシミュレーションを行いました。

1株あたりの配当金年間配当金
20円100万円
18円90万円
16円80万円
14円70万円
12円60万円
10円50万円

1株あたりの配当金が2円下がると、年間配当金は10万円ずつ減っていきます。年間100万円の配当金を目指す場合は、投資資金が数千万円単位となるため、1株あたりの配当金が数円減るだけでリターンは大きく変わります。

保有銘柄の配当方針はこまめに確認し、減配や無配になる可能性がある場合は、ポートフォリオを他の銘柄と入れ替えることも検討しましょう。

配当金には20.315%の税金がかかる

原則として、個人投資家に支払われる配当金には20.315%の税金がかかります。確定申告をすると配当控除は受けられますが、それでも一定額の税金は負担しなければなりません。年間100万円の配当金に20.315%の税金が課されるケースを想定して、手元に残るリターンを計算してみましょう。

<手元に残るリターン>
税引前のリターン-(税引前のリターン×税率)=手元に残るリターン
100万円-(100万円×20.315%)=79万6,850円

配当金にかかる税金を抑えたい場合は、新NISAの活用を検討してみましょう。新NISAは非課税投資枠の範囲内で、金融商品から生じたリターンが非課税になる制度です。新NISAには2つの投資枠があり、成長投資枠では年間240万円の範囲で上場株式を取引できます。

株価が下がると損失が生じる

株式の保有中に株価が大きく下がると、配当金ではカバーできない損失が生じることもあります。

例えば、株価1,000円の銘柄を5万株保有するケースについて考えましょう。配当利回りを2.0%とすると、年間の配当金は100万円(5万株×1,000円×2.0%)になりますが、株価が800円に下がった場合は1,000万円の損失(200円×5万株)が生じます。

そのまま保有を続けることは可能ですが、将来的に株価が回復するとは限りません。また、株価や業績が低迷すると、無配または減配になるリスクも高まることが予想されます。

そのため、配当金だけにこだわった運用は避けて、株価の変動も見越した計画を立てるようにしましょう。

年間の配当金100万円を目指そう

4,500万円以上の投資資金があれば、国内株式でも年間100万円の配当金が現実的になります。保有中に株価が下がって資産を減らすこともあるので、株価の動向にも注意することが必要です。企業の業績や業界を取り巻く環境も分析しながら、できるだけリスクを抑えられる運用方法を検討してみましょう。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。

(提供:Wealth Road