CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)に関わる動きが目立っている。

CVCは企業が自己資金でファンドを組成し、自社の事業の発展に役立つようなスタートアップなどに出資をする取り組みで、4月に入って積水ハウス<1928>や、ANAホールディングス<9202>などの大手企業が新たにファンドを設立したほか、これからファンドを設立する大正製薬(東京都豊島区)や、スタートアップの支援を行っている既存のファンドに出資することで事業の拡大を目指す商船三井<9104>などの事例もある。

政府は2022年に「スタートアップ育成5か年計画」を策定しており、スタートアップへの投資額を5年後の2027年度に10倍を超える規模(10兆円規模)に拡大するとの目標を掲げている。

また同計画では「事業会社からベンチャーキャピタルへの投資促進策について検討する」としており、追い風が吹いている状況にある。CVCに関する動きは、当面衰えることはなさそうだ。

CVCファンドに80億円を出資

積水ハウスと積水ハウス イノベーション&コミュニケーション(東京都港区)は2024年4月1日に、税務や会計をはじめファンド運用などを支援する会計事務所のAGSコンサルティング(東京都千代田区)と共同で、CVCファンド「積水ハウス投資事業有限責任組合」を設立し運用を始めた。

有望なスタートアップへの投資を通じて、新たな技術やサービス、ビジネスモデルの事業化を支援するのが狙いで、建設業や不動産業での顧客獲得や設計、生産、製造、アフターサービスなどの業務改善に取り組む企業なども投資の対象とする。ファンドの規模は50億円で、運用期間は2024年4月から2034年3月までの10年間の予定。

ANAホールディングスは2024年4月11日に、ベンチャーキャピタル事業を手がけるグローバル・ブレイン(東京都渋谷区)と共同で、CVCファンド「ANA未来創造ファンド」を設立した。

エアモビリティ(空飛ぶクルマなどの空の移動手段)、ドローン、宇宙などの次世代モビリティ関連をはじめ、Fintech(金融とITを結び付けた新しいサービス)やデータ解析、グリーンエネルギー、AI(人工知能)などを手がけるスタートアップに投資する。ファンドの規模は80億円で、運用期間は10年間。

スタートアップと組んでアフリカ事業を拡大

創薬を中心に医療テクノロジーに特化した投資を行っているNewsight Tech Angels(東京都中央区)は2024年4月9日に、大正製薬と共同で新規ファンドを設立することで合意した。

詳細は未定だが、同ファンドではテクノロジー分野の革新的なスタートアップの育成と成長を加速させることを目的に投資を行うという。

商船三井は2024年4月8日に、アフリカ最大級のベンチャーキャピタルであるノバスター ベンチャーズが運営するスタートアップ向け投資ファンドNovastar Ventures People and Planet Fund III LPに出資することを決めた。

アフリカでの事業拡大が狙いで、パートナーとなり得るような有望なスタートアップを探索し、海運をベースとした物流事業のほか、洋上風力発電などのグリーンエネルギーや農業など今後成長が見込まれる分野で事業展開を加速する。

スタートアップ育成5か年計画では「大企業がスタートアップを買収することは、スタートアップのエグジット戦略(出口戦略)としても、また大企業のオープンイノベーション(社内外の知見や技術、サービスなどを駆使してイノベーション=革新を創出する取り組み)の推進策としても重要である」としており、大企業によるスタートアップへの出資を促している。

文:M&A Online