うどん店「杵屋」や、そば店「そじ坊」などを展開するグルメ杵屋<9850>の業績の回復スピードが上がらない。当初2024年3月期に黒字化を見込んでいた経常損益が5期連続の赤字に陥る見込みだ。
2024年3月期の事業利益(売上高から売上原価と販管費を引いた額)が一気に倍増する、うどん店「丸亀製麺」などを展開するトリドールホールディングス<3397>とは対照的だ。
両社の間に生じた業績の回復スピードの差はどこにあるのか。
足を引っ張る機内食事業
グルメ杵屋が2024年2月に発表した2024年3月期第3四半期決算によると、うどん店などのレストラン事業は、人流やインバウンド(訪日観光客)需要の回復に加え、14店舗の新規出店(退店は12店舗)効果などもあり、前年同期に比べ20.0%の増収となった。
この増収に伴って同部門の利益は5億2200万円となり、前年同期の5100万円の赤字から脱却した。
冷凍弁当などの業務用冷凍食品の製造事業も同様で、20.7%の増収となり部門利益は4億4300万円(前年同期は4億6700万円)を確保した。
これに対し、足を引っ張る格好となったのが機内食事業で、中国便を中心に復便が想定よりも遅れたため、部門損益は3億7300万円赤字となり、前年同期(2億600万円の赤字)よりも赤字幅が拡大した。
M&Aによる新ブランド開発も
同社では2023年11月に、2026年3月期を最終年とする3カ年の中期経営計画を策定しており、初年度の2024年3月期は経常赤字でスタートし、2025年3月期に経常黒字に転換し、最終年の2026年3月期は経常利益10億円を目指すという。
この中期経営計画の中で、「杵屋」や「そじ坊」に次ぐ、第3、第4の事業の柱となる業態やブランドを育成するとしており、同時に「M&Aや投資などにより業績見込みに差異が生じる場合は、中期計画を再策定する」とし、M&Aや投資によって新たなブランド開発に力を入れる姿勢を見せている。
英国社の子会社化がプラスに
一方、トリドールは、丸亀製麺が好調に推移しているところに、2023年7月に子会社化したピザ店やギリシャ料理店を運営する英国のFulhamの業績が加わり、2024年3月期の事業利益が前年度比96.2%増の137億円に急増する。
2024年2月に発表した2024年3月期第3四半期決算では事業利益が同89.9%増の118億1100万円となっており、通期目標を達成する可能性は高そうだ。
同社は2028年3月期に売上高4200億円、事業利益420億円の目標を掲げており、これを実現する手法の一つとしてM&Aに前向きな姿勢を見せている。
コロナ禍からの回復スピードに差はあるものの、日常が戻る中で今後の成長のカギを握るのはM&Aかもしれない。
文:M&A Online