この記事は2024年6月4日に「CAR and DRIVER」で公開された「【買っておきたい21世紀名車】上質で速い、独自の走りの世界を提案。レクサスIS Fの肖像」を一部編集し、転載したものです。
AMGやMを追撃したリアルスポーツ
2005年、トヨタはレクサス・ブランドの国内展開を開始。まずGS/SC/ISの3モデルで日本のプレミアムカー市場に打って出た。
いずれのモデルも、静かで快適なうえに質感も良好だったが、そのデザインコンセプト、「L-フィネス」同様、「上品だけれど個性に欠ける」という側面があった。この点は、プレミアムブランドの先達として「明確な個性」を備えていたメルセデスベンツやBMWに及ばない部分だった。
2007年に発表されたレクサス初のスポーツセダンであるIS Fは、そうした状況を覆す革新的なモデルとして誕生した。
なにしろ、手頃なサイズの4ドアセダンに大排気量V8エンジンを押し込むという大胆な手法は、同時期に登場したメルセデスAMG・C63やBMW・M3によって初採用されたもの。プレミアムブランドのスポーツモデルとしては世界最先端のコンセプトだった。それを、プレミアムブランドの中では新興のレクサスが採り入れたことに世界中が驚いた。
しかも、排気量5リッターの2UR-GSEユニットは、トヨタのスポーツエンジンの伝統に則ってヤマハ発動機と共同開発。423psと505Nmという強力なスペックを誇るだけでなく、ハードコーナリング時にも安定した潤滑を可能とするスカベンジポンプを搭載したり、吸気バルブにチタン製バルブを採用するなど、本格的なチューニングが施されていた。
足回りも強靭だった。BBS製の19インチ鍛造アルミホイールを採用したほか、タイヤは前後異径のミシュラン・パイロットスポーツPS2もしくはBSポテンザRE050Aという本格的な銘柄をチョイス。ブレーキもブレンボ製のアルミモノブロックキャリパーを奢るなど、まさにグローバル・スタンダードな成り立ちを誇っていた。
実際にIS Fのステアリングを握ると、V8エンジンのスムーズかつ軽快な吹き上がり、そしてサーキット対応のフットワークが印象的だった。しかも当時まだ世界的にも珍しかった19インチタイヤの衝撃を剛性感の高いボディが完璧に受けとめることで、世界トップクラスの動力性能車とは思えない快適な乗り心地も実現していたのである。
圧倒的なパフォーマンスの持ち主ながら、それを必要以上にひけらかすことのないエクステリアのセンスも秀逸。レクサスは、IS Fにより、初めて独自のスポーツネス、「ハイグレードで胸踊る走りの世界」という明確な個性を手に入れた。
レクサスIS F主要諸元
モデル=2008年式IS F
新車時価格=8SAT 766万円
全長×全幅×全高=4660×1815×1415mm
ホイールベース=2730mm
トレッド=フロント:1560/リア:1515mm
車重=1690kg
エンジン=4968cc・V8DOHC32V(プレミアム仕様)
最高出力=311kW(423ps)/6600rpm
最大トルク=505Nm(51.5kgm)/5200rpm
10・15モード燃費=8.2km/リッター(燃料タンク容量64リッター)
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=フロント:245/40R18/リア:255/35R18+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=4名
0→100km/h加速=4秒台
フォトギャラリー
(提供:CAR and DRIVER)