特集「令和IPO企業トップに聞く 〜 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。

株式会社i-plug
(画像=株式会社i-plug )
中野 智哉(なかの ともや)――代表取締役 CEO
1978年兵庫県生まれ。2001年中京大学経営学部経営学科卒業。2012年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。株式会社インテリジェンス(現パーソルグループ)で10年間求人広告市場で法人営業を経験。 2012年4月18日に株式会社i-plugを設立し、代表取締役CEOに就任。
i-plugはキャリアを支援するテックカンパニーです。2012年4月18日に創業し、2021年3月18日、東証マザーズ(現グロース)に株式を上場しました。主力事業の「OfferBox(オファーボックス)」は、企業から学生に直接オファーを送る新卒ダイレクトリクルーティングサービスです。当社は、事業や働き方を通して「人と企業、人と情報」といった新たな"つながり"をつくることにより、あらゆる人の自己実現を成せる未来を目指しています。

目次

  1. これまでの事業変遷について
  2. 上場する前と後の変化
  3. 今後の事業戦略や展望
  4. 今後のファイナンス計画や重要テーマ
  5. 投資家へ一言

これまでの事業変遷について

ーー初めに、創業から現在までの事業の変遷について教えてください。

株式会社i-plug 代表取締役 CEO 中野智哉(以下社名・氏名略)
i-plugは、2012年4月にグロービス経営大学院の同期生3人で創業しました。当初は新卒の人材紹介やSNS事業など、様々なビジネスモデルを試みましたが、成功には至りませんでした。

その後、大学生とのヒアリングの中で就職活動に課題を感じ、OfferBoxという新しい事業を立ち上げました。 この事業も当初は困難を極め、売上が上がらない時期もありましたが、2014年半ばに就職活動スケジュールの変更が起点となり、市場の変化に合わせた事業の転換を経て、継続的な成長を遂げてきました。スタートアップとしての挑戦は常に模倣のリスクとの競争であり、速度が成功の鍵であったため、毎年少なくとも1.7倍から2倍の成長を目指し、企業を大きくしていきました。

ーー就職活動スケジュール変更が大きなターニングポイントになったのですね。

中野:それが一番大きかったですね。元々当社のサービスを使用していただいている企業でOfferBox経由から採用が生まれることはありました。しかし、多くの企業がOfferBoxを使わなきゃいけないマインドになるのは大きな変化が無いとなかなか難しいですね。

何かの兆しがない限り、人はなかなか新たに行動を変えようと思わないので、弊社の場合は後から運良く顧客が増えたと思っています。就職活動のスケジュール変更は大きな分岐点になりました。

株式会社i-plug
(画像=株式会社i-plug)

上場する前と後の変化

ーー上場を目指した理由や上場前後の変化についても詳しくお聞かせください。

中野:会社創業から上場を目指した理由として、一人ひとりの可能性を拡げるためには相当なスピードでの成長と企業の信用が必要であると認識していたからです。

特にOfferBoxのような低価格サービスを提供する上では、上場企業であることが信用を裏付ける証になります。上場企業と未上場企業間の信用の差は顕著で、上場企業は監査が入り、企業の情報が公開されるので、上場はブランディングと認識向上に寄与します。また、上場を目指すことで、成長スピードを上げなくてはならなかったため良い機会でした。

くわえて、上場準備を進めることで組織の成熟を促し、成長に耐えうるリスク対策や内部統制を強化することを早いうちから経験できて良かったなと思います。上場準備は教習所によく似ていて、ルールを認識し、運転を練習した上で道を走ることと同様に、リスク対応の仕方や上場後の経営の仕方を明確にした上でさらにチャレンジすることができました。

今後の事業戦略や展望

ーー今後の事業戦略や成長イメージについてもお伺いできればと思います。

中野:今後の戦略は3つありまして、1つ目は、入社時のミスマッチを減らすために、学生と企業との双方が納得できる質の高いマッチングを一つでも多く増やすことです。就職活動における一社目の選択が本人のキャリアに非常に大きく影響すると考えています。後悔のない選択をしていただくためにも、OfferBoxを更に成長させていく必要があります。

2つ目に、新規事業の投資を進めること です。終身雇用の終焉とキャリアの多様化に伴い、キャリアアップやキャリアチェンジの重要性が増しています。企業でも一つの事業だけで長く経営できる人は存在しません。もともと創業当初に考えていた大学生自体の成長や学びの領域も新たにやっていこうと考えています。

3つ目に、これらの戦略を内製だけで行うのは可能とは言い切れないので、M&Aや資本業務提携の観点で、一緒に事業を進める仲間を集めていきます。大学からキャリアを作っていく一連の流れで、一人ひとりの可能性を引き出し、日本の労働市場の課題解決に貢献できると考えています。

今後のファイナンス計画や重要テーマ

ーーその戦略を実現していく上で、今後のファイナンスの計画や重要テーマを教えていただけますか。

中野:基本的にまず内部留保、次にデット、最後にエクイティの順番で資金調達するようにしています。OfferBoxの収益を、新規事業やM&Aに投資していくイメージです。内部留保で成立しないM&Aはデットファイナンスで資金調達します。

日本国内の労働市場は少子高齢化によって縮小傾向にあるので、弊社のビジネスモデルは規模の大きなファイナンスと合わず、資金調達しづらい側面があります。ただ、市場を海外に移せば大きな利益が望めると思いますが、日本の労働市場を活性化させるためにも、これからも日本市場に焦点を当てていくつもりです。

投資家へ一言

ーー最後にZUUonlineユーザーに一言お願いします。

中野:i-plugで実現しようとしていることは、とても大きなテーマで、グロース市場の一企業がチャレンジする権利があるのかというぐらい大きなテーマだと思っています。

しかし、今後も日本を良くするためのチャレンジはやっていきます。どんどん成長して、しっかり収益を出していきたいという非常に強い想いが僕にはあります。その想いに共感していただき、ぜひ皆様に株主になっていただければと思います。単純に企業が成長し株価が上がって利益を生むために応援していただくだけではなく、企業が日本を良くすることに注目して、僕らの想いに共感して応援いただけると嬉しいです。

氏名
中野 智哉(なかの ともや)
社名
株式会社i-plug
役職
代表取締役 CEO

関連記事