資産を減らさないことを前提にした場合、資産が10億円あると利息だけで生活できるのでしょうか。生活水準や利回りによっては生活できない可能性があるため、利息だけで生活する計画を立てることが重要です。

本記事では、定期預金や投資信託などの金融商品を想定して、資産10億円での利息生活をシミュレーションしました。生活水準別の必要な利回りや、資産運用の注意点についてもあわせてご紹介します。

10億円で利息生活ができるかは生活費や利回りによって変わる

資産10億円で利息生活はできる?利回り別のシミュレーション結果をご紹介
(画像=snowing12/stock.adobe.com)

10億円の資産で利息生活ができるかは、その人の生活費や利回りによって変わります。

たとえば、平均的な生活水準を想定すると、10億円の利息だけで暮らすには0.201%の利回りが必要です(単身世帯の場合)。定期預金だけで運用する場合、2024年3月時点の平均金利は0.068%なので、利息だけでの生活は成り立ちません。

また、毎月の生活費が増えると、利息生活を送るのに必要な利回りも上がります。安定した利息生活を送りたい場合は、事前に細かくシミュレーションをすることが重要です。

資産10億円の利息生活をシミュレーション

定期預金や投資信託、株式投資などで運用をする場合、資産10億円での利息生活は現実的といえるのでしょうか。以下では3つの運用方法にわけて、実際の利息生活をシミュレーションしました。

毎月の生活費については、総務省統計局による家計調査の結果(※2023年の平均)を基準にしています。

<単身世帯の生活費>

消費支出の内訳1ヵ月あたりの平均支出額
食料4万2,049円
住居2万3,799円
光熱・水道1万3,045円
家具・家事用品5,760円
被服および履物4,447円
保健医療7,367円
交通・通信2万1,654円
教育2円
教養娯楽1万8,794円
その他の消費支出3万704円
合計16万7,620円

<二人以上世帯の生活費>

消費支出の内訳1ヵ月あたりの平均支出額
食料8万1,738円
住居1万8,006円
光熱・水道2万3,855円
家具・家事用品1万2,190円
被服および履物9,297円
保健医療1万4,645円
交通・通信4万2,693円
教育1万446円
教養娯楽2万8,630円
その他の消費支出5万2,498円
合計29万3,997円

なお、本シミュレーションでは金融商品の取引や保有にかかる手数料は考慮していません。実際の利息(リターン)は異なる可能性があるので、シミュレーション結果は参考程度に確認してください。

定期預金で運用する場合

日本銀行が公表している資料(※)によると、2024年3月時点における定期預金の平均金利(期間総合)は0.068%です。仮に10億円を預け入れる場合、1年間で受けとれる利息は以下となります。

(※)日本銀行「定期預金の預入期間別平均金利(新規受入分)(1)総合

<1年間の利息の計算式>
預け入れる金額×金利=1年間の利息
<1年間の利息を計算>
10億円×0.068%=68万円

次に、単身世帯・二人以上世帯の生活費(年間)を計算してみます。

<単身世帯の生活費を計算>
16万7,620円×12ヵ月=201万1,440円
<二人以上世帯の生活費を計算>
29万3,997円×12ヵ月=352万7,964円

計算結果を見比べると、定期預金の利息だけで生活を送ることは難しいといえます。

投資信託で運用する場合

投資信託は、その運用成績によってリターンが変わり、元本が保証されているわけでないのですが、ここでは計算上、一定のリターンが1年に得られたと想定して考えたいと思います。投資信託は資産構成によって利回りが異なるため、「3%・5%・10%」の3パターンでシミュレーションを行います。

10億円×3%=3,000万円(3%の場合)
10億円×5%=5,000万円(5%の場合)
10億円×10%=1億円(10%の場合)

10億円の資産があれば、年間3%の利回りでも生活できる結果となりました。

ただし、投資信託はその運用成績によってリターンが変わり、元本が保証されているわけでないことに注意してください。

株式投資の配当金で運用する場合

日本取引所グループの資料(※)によると、配当金をだしている銘柄(有配会社)の平均利回り(024年4月時点)は以下の通りです。

(※)参考:日本取引所グループ「その他統計資料

プライム市場:2.08%
スタンダード市場:2.26%
グロース市場:1.55%

各市場で10億円を運用した場合に、1年間で期待できるリターンを計算してみます。

<1年間に受けとれる配当金の計算式>
投資金額×配当利回り=1年間に受けとれる配当金

<1年間に受けとれる配当金を計算>
プライム市場:10億円×2.08%=2,080万円
スタンダード市場:10億円×2.26%=2,260万円
グロース市場:10億円×1.55%=1,150万円

いずれの上場市場でも、平均の生活費を上回るリターンが期待できます。ただし、上記の利回りはあくまで平均値なので、銘柄によっては配当金が減る可能性もあります。

資産10億円の利息生活で必要になる利回り

資産を減らさずに10億円で利息生活を送るには、どれくらいの利回りが必要になるのでしょうか。ここからは次の3パターンで、必要になる利回りを計算しました。

・平均的な生活水準:家計調査の平均から生活費を計算したもの。
・余裕のある暮らし:「平均的な生活水準+月5万円」で生活費を計算したもの。
・裕福な暮らし:「平均的な生活水準×2倍」で生活費を計算したもの。

単身世帯と二人以上世帯にわけて、実際のシミュレーション結果をご紹介します(※小数点第四位以下は切り捨て)。

平均的な生活水準

利息生活を送るのに必要な利回りは、「1年間の生活費÷保有している資産額×100%」で計算できます。したがって、シミュレーション結果は以下の通りです。

<単身世帯の場合>
(16万7,620円×12ヵ月)÷10億円×100%=0.201%
<二人以上世帯の場合>
(29万3,997円×12ヵ月)÷10億円×100%=0.352%

余裕のある暮らし

余裕のある暮らしについても、同じ流れでシミュレーションを行います。

<単身世帯の場合>
(21万7,620円×12ヵ月)÷10億円×100%=0.261%
<二人以上世帯の場合>
(34万3,997円×12ヵ月)÷10億円×100%=0.412%

裕福な暮らし

次に、裕福な暮らしのシミュレーション結果を見てみましょう。

<単身世帯の場合>
(33万5,240円×12ヵ月)÷10億円×100%=0.402%
<二人以上世帯の場合>
(58万7,994円×12ヵ月)÷10億円×100%=0.705%

いずれの生活水準も、1%未満の利回りで利息生活を実現できることがわかりました。

資産10億円で暮らせる年数のシミュレーション

利息生活ではなく、資産10億円だけで生活を送ると何年暮らせるでしょうか。実際にシミュレーションをしたところ、平均的な生活水準の単身世帯では497年、二人以上世帯では283年暮らせることがわかりました。

以下では、実際のシミュレーション結果をご紹介します(※小数点は切り捨て)。

単身世帯の場合

資産10億円で暮らせる年数は、次の式から計算できます。

<暮らせる年数の計算式>
保有している資産額÷1年間の生活費=暮らせる年数

3パターンの生活水準を想定した場合、単身世帯が暮らせる年数は以下の通りです。

<平均的な生活水準を計算>
10億円÷(16万7,620円×12ヵ月)=497年
<余裕のある暮らしを計算>
10億円÷(21万7,620円×12ヵ月)=382年
<裕福な暮らし>
10億円÷(33万5,240円×12ヵ月)=248年

二人以上世帯の場合

二人以上世帯についても、同じ流れでシミュレーションを行います。

<平均的な生活水準を計算>
10億円÷(29万3,997円×12ヵ月)=283年
<余裕のある暮らしを計算>
10億円÷(34万3,997円×12ヵ月)=242年
<裕福な暮らし>
10億円÷(58万7,994円×12ヵ月)=141年

10億円の資産があると、裕福な暮らしでも100年以上暮らせることがわかりました。

資産10億円で利息生活をするときの注意点

資産10億円での利息生活は、投資手法によってリスクが変わります。資産を減らしたくない場合は、前述のようなシミュレーションをした上で、具体的な運用方法をイメージすることが重要です。

どのような点を意識すればよいか、ここからは資産10億円で利息生活をするときの注意点をご紹介します。

想定利回りで生活できるかを計算する

安定した利息生活を送るには、想定の利回りで暮らせるかを計算する必要があります。10億円の資産があっても、投資手法によっては利息生活が難しいためです。

たとえば、定期預金の平均金利(0.068%)で運用する場合は、1年間で約130~280万円の生活費が不足します(※平均的な生活水準の場合)。不足した分は資産をとり崩す必要があるため、毎年得られる利息も徐々に減っていきます。

資産を減らさずに利息生活を送りたい場合は、ご自身の生活水準を踏まえて必要な利回りを計算してみてください。

長期の分散投資を意識する

10億円の利息生活を想定する場合は、長期の分散投資がひとつの選択肢になります。目的はあくまで生活費分の利益となるため、短期の大きなリターンに期待する必要はありません。

仮に特定の金融商品に一括投資すると、下落したときに多くの資産を失う可能性があります。分配金や配当金を受けとれても、値下がりによる損失がリターンを上回ると、保有資産は徐々に減ってしまうでしょう。

このような事態を避けるには、必要以上のリスクをとらないことが重要です。想定の利回りを設定し、長期の分散投資に向いている金融商品を探してみましょう。

税金対策をする

10億円の資産を運用する場合は、税金対策の有無でリターンが大きく変わります。通常、金融商品の運用によって生じたリターンには20.315%の税金(※)がかかるためです。

(※)所得税、住民税、復興特別所得税を合計した税率。

株式投資や投資信託はもちろん、定期預金または普通預金などの利息も例外ではありません。たとえば、定期預金で1年間に200万円の利息が生じると、40万6,300円(200万円×20.315%)の税金を支払うことになります。

特に対策をしない場合は、この税金を踏まえた想定利回りの設定が必要です。

確定拠出年金を活用する

確定拠出年金は、毎月拠出した掛金で金融商品を運用して、年金資産を積みたてる制度です。原則60歳までは資産を引き出せませんが、拠出時・運用時・給付時に以下の節税効果があります。

拠出時:個人で拠出した掛金全額が所得控除の対象になる。
運用時:金融商品から得たリターンが非課税になる。
給付時:退職所得控除または公的年金等控除が適用される。

仮に毎月3万円を拠出した場合は、年間で36万円分の所得控除を受けられます。また、金融商品の運用益も全て非課税になるため、効率的な資産形成に役立つかもしれません。

ただし、毎月の掛金には上限額があり、最大でも月6万8,000円(年81万6,000円)までの拠出となります。掛金上限額は職業や勤務先などで変わるため、制度の仕組みを確認した上で計画を立ててください。

実際の生活をイメージして運用計画を考えよう

10億円の資産があっても、安定した利息生活を送れるとは限りません。実際に利息だけで暮らせるかは、ご自身の生活水準や利回りによって変わります。理想の生活をイメージしながら、細かくシミュレーションをした上で計画を立ててみてください。

※過去の実績は将来の運用成果等を保証するものではありません。
※本記事は、2024年5月28日現在のものです。今後制度が変更になる場合もあります。

(提供:Wealth Road