メキシコペソ見通し
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「混沌から正常化へ。ただ貿易赤字と財政赤字は懸念事項」メキシコペソ見通し

予想レンジ 8.4-8.9

 (ポイント)
*新閣僚人事発表始まる
*4月小売売上は改善
*選挙後の一連の混乱よりメキシコの経済の実情も理解したい
*そもそも財政支出拡大のための政策は選挙対策
*成長を阻害する独善的な政策は回避されると予想する
*これからの焦点、6月27日の政策金利決定など
*中銀は6月利下げ議論開始示唆も、5月前半消費者物価は高止まり
*ニアショアリングによる景気拡大基調は変わっていないが、1Qの景気減速が不安
*ただ2Q以降は再び景気回復か
*4Qには米大統領選。トランプ不安はある
*政府は混乱を沈静化する発言を行なった
*メキシコの格付けはジャンク債の手前だ
*輸出、移民、郷里送金でメキシコは米国に大きく依存
*ペソは年間首位から10位へ後退
*米墨インフレ格差、金利差、景況感格差の指標でデコボコな動き
*中銀四半期報告書ではインフレ予想を引き上げ
*IMFに下方修正されたGDPが重し
*フィッチ、メキシコの2024年の成長予測を2.2%に下方修正

(金融市場、最悪時から反発もまだ選挙前のレベルには遠い)
 大統領選挙・総選挙後の混乱が続いていたが、先週後半から、通貨ペソ、ボルサ株価指数、10年国債の市況が徐々に回復している。選挙後では、ペソ円が6.49%安、ドルペソが8.05%安、ボルサ指数が3.35%安、10年国債が10.37%で選挙後の最悪の事態(ペソ円8.212、ドルペソ18.7356、ボルサ51807、10年国債10.59%)からは反発。年間ではペソ円は4.22%高で12通貨中10位。依然、円よりは強い。

以下の発言などもメキシコ市場を支えた。

*AMLO大統領=ペソは強い経済のため堅調に推移する
*中銀総裁=過度な動きには介入する可能性を示唆
*財務省=連邦税収は2024年の最初の5か月で過去最高となった
*米国務省=メキシコの司法改革について「透明性」の重要性を強調

(危機的ではない)
 5月末から6月始めに、南ア、メキシコ、欧州議会選挙が続き、市場は混乱した。ただいずれも落ち着いてきた。いずれも民主主義国家なので、国家に損害を与える政策をとれば、修正される。「ならず者的カオス」状態にはならない。実情は混乱していないが、表面的な事象を追う市場が混乱した。

 ただメキシコの場合、財政赤字拡大、不安定な貿易経常収支があるのは事実である。その中で金利差だけ求めた資金が右往左往したのだろう。シェインバウム次期大統領は、AMOLO大統領の財政拡大によってもたらされた赤字を認識、改善に努めると発言。ニアショアリングが進むことで税収も増加しているので改善は可能だ。

 貿易経常赤字は、ニアショアリングの進展による資本財の輸入増加で赤字が膨らむことがあるが、前向きな赤字で将来の安定黒字が想定される。

(最近の経済指標。小売売上は改善)
4月小売売上は改善した。
 
前月比0.5%増(前月0%、予想0.3%減)
前年比3.2%増(前月1.7%減、予想1.5%増)

本日、4月経済活動指数の発表がある。前年比で予想3.8%増、前月は1.3%減。

(今後の焦点、6月27日の政策金利決定など)
今後は6月24日の6月前半の消費は物価を経て6月27日の政策金利決定となる。

 2024年1Qの民間支出が2023年4Qよりも拡大したことがわかった。総需要は経済が堅調に推移していることを示しており、インフレ再加速のリスクにより中銀が金融政策を緩和することを思いとどまらせる可能性がある。2024年1Qの総需要は前四半期比1.5%増加し、2023年4Qを0.4%上回った。1Qの民間支出は前四半期比1.5%増加し、4Qを0.9%を上回った。

(シェインバウム次期大統領の最初の仕事は)
 最初の仕事は、政府の2025年度予算を策定することだ。ここでの最優先事項は、メキシコの財政赤字を縮小することだ。財政赤字は2018年のGDP比2%から2024年には5.8%にまで拡大する見込みで、それによって同国の債務は持続可能であるという明確なシグナルを送ることになる。
 次の課題は減速している経済を再び成長させることだ。成長を加速させるために、米国を含む多くの西側諸国が推進している「ニアショアリング」、つまり中国よりも友好国や地理的に近い国にサプライチェーンを移す動きを活用すべきだ。パンデミックと中国との緊張の高まりの両方に対する反応であるこの傾向は、メキシコにとってより多くの外国投資を誘致する重要な機会となる可能性がある。

 しかし、その地位を獲得するためには、政府は司法の独立を含む法の支配に対するより強いコミットメントを示さなければならない。
良いニュースは、メキシコには再生可能エネルギーを活用する余地がかなりあり、シェインバウム氏は再生可能エネルギーの容量拡大に取り組んでいることだ。悪いニュースは、AMLO大統領の公約である、発電量の少なくとも 54% を国営管理下に置くことを堅持していることだ。国営電力会社である連邦電力委員会が石炭とディーゼルを段階的に廃止しながら発電容量を急速に増やさない限り、この公約を果たすのは非常に困難だろう。