特集「令和IPO企業トップに聞く 〜 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。
創業時からの事業変遷
ーーこれまでの事業変遷について教えてください。
株式会社アスマーク 代表取締役社長・町田 正一氏(以下、社名・氏名略):
創業当初は東急田園都市線沿線を中心としたインターネット上のコミュニティサイトを作成しました。当時のネットビジネスにおいては資金が必要な通販モールなどが主流でした。しかし、個人で始めた事業だったため、資金を確保することが難しかったです。そこでアメリカのベンチャーで急成長しているオンラインコミュニティを真似たコミュニティサイトの運営を始めました。
その後、2000年に田園都市線の会員を使ってビジネスを立ち上げようと考え、当時インターネットでリサーチをする会社がいくつか出始めていたので、私もそれに習ってリサーチ業界に参入しました。
そして、2020年に新型コロナウイルスの影響で既存の国内リサーチ事業だけでは成長が難しいと感じ、人事関連のサービスや海外展開を始めました。本来であれば2020年にマザーズに上場する予定だったのですが、コロナの影響で一度白紙になりました。その際には会社が倒産するほどの危機に陥りましたが、再びビジネスを見つめ直し、2023年に東証スタンダードへ上場することができました。
今後の事業戦略や展望
ーー貴社はどのような点を強みにしていますか?
町田:お客様のニーズに応えたリサーチができる点です。インターネットだけでなく、オフラインでのインタビューや会場調査にも対応できます。アスマークのようにオンライン、オフラインのどちらも対応している企業は少ないため、この点を強みにしています。
ーー今後はどのような事業戦略を考えていますか?
町田:今後も海外事業を拡大していきたいと考えています。リサーチにおける日本の市場は約2000億円なのですが、まだまだ市場として成熟していません。しかし、世界には約2兆円の市場があります。
ーー海外売り上げを増やすための取り組みや、拡大のイメージについて教えていただけますか?
町田:現在、海外で伸びている事業の中心は、国内のリサーチを発注している自動車メーカーや飲料メーカー、日用品メーカーなどの事業会社です。既存のお客様が海外でのリサーチができるようにノウハウや手法の整備を進めてきました。そのため、海外展開においては、新規開拓ではなく、既存の国内リサーチを対象としたお客様中心にサービスを展開しています。
現在、49カ国の世界のリサーチ会社とパートナー関係にあります。例えば、日本の電気メーカーが消費者の意見を聞きたいという場合、アスマークはすぐにアレンジして様々な国と繋ぐことができます。時にはスタッフが現地に行って一般家庭を訪問することもあります。
現在、海外市場の売上は約5億で全体の15%を占めています。5年前から外国人のスタッフも増やしており、今後も海外事業を拡大していきたいと考えています。通常はインターネットでリサーチして終わりの会社が多い中で、我々はクライアントのニーズに応えて様々なことができます。今後も海外のパートナーを増やし、お客様の課題解決に繋げていきたいと考えています。
また、リサーチを基盤とした新規事業も展開しています。2020年にHumapという人事向けのサービスを始めました。当初は投資家から「HRを始めても大丈夫なんですか?」という声もありましたが、自信を持って大丈夫だと考えました。リサーチで培った従業員満足度調査やハラスメント調査、研修などをベースにしているので、アスマークがHRのレッドオーシャンで戦っても差別化できると思っています。また4月には顧客データ分析が可能な「データクリアパス」をリリースしました。このサービスは、リサーチでわかる「意識」データと顧客が保有する「行動」データを統合・分析できる顧客データ分析サービスです。
今後もリサーチのノウハウを活かして事業を展開していきます。
今後のファイナンステーマ
ーー今後、事業を拡大する上でM&Aについてはどのように考えていますか?
町田:M&Aにおいては、アスマークの事業に相乗効果が期待できる企業に限定して考えています。アスマークのビジネスが広がるような、デザイン系の会社、ビッグデータを分析する会社などを対象にしています。また、小さな会社でも職人が多くいる会社は非常に魅力的なのでM&Aを進める可能性は高いです。
ーーそのような領域でシナジーを生み、進出していくイメージはすでにお持ちですか?
町田:現段階では具体的なイメージはできていません。まずは、自前で事業を立ち上げ、その先にM&Aを考えるつもりです。ただリサーチ業界では後継者がいないケースが多く、後継者不足の企業から何度か事業提携の提案をいただいたことがありました。しかし、いきなりM&Aを行うと失敗する可能性が高いと考えています。相性やビジネスの相乗効果を確認しつつ、慎重に進めていくつもりです。
ーーありがとうございます。今後はどのように成長したいと考えていますか?
町田:リサーチ業界においてアスマークが頼りにされる存在になりたいと考えています。今後もさらにクオリティを高めていけると考えています。まだまだリサーチのプロ集団とは言えないので、安い・早いだけでなく、クライアントの課題を解決できる企業を目指していきます。
ZUU onlineのユーザーに⼀⾔
ーーZUU onlineユーザーへ一言お願いします。
町田:アスマークは業界で一番の成長率を継続していきたいと考えています。そしてアスマークは、新たなチャレンジが大好きな会社です。これからも様々なことにチャレンジしていくので、楽しみながら応援いただけると幸いです。投資家の皆様にご指導いただきながら、それにお応えする形で頑張っていきたいと考えています。
- 氏名
- 町田 正一(まちだ・まさかず)
- 社名
- 株式会社アスマーク
- 役職
- 代表取締役