金額トップはJSRの非公開化案件

金額トップは官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)が半導体材料大手のJSRを買収し、非公開化した案件で、買付代金は最大9000億円に達した。ただ、JSRへのTOBは昨年6月に計画が発表された後、各国競争当局などの承認を経て今年3月から4月にかけて買い付けが行われた。

今年に入って発表された案件として最も大きいのはKDDIが実施したローソンに対する5000億円規模のTOB(4月末に成立)。ローソン株の50%を取得して三菱商事との折半出資による共同経営に乗り出す。

これに次ぐのはキリンホールディングス。最大約2200億円を投じて、サプリメントなど健康食品大手のファンケルを子会社化するもので、TOBが6月半ばから進行中。

キリンは2019年に33%を出資し、ファンケルを持ち分法適用関連会社としていた。主力のビール市場が伸び悩む中、酒類・飲料、医薬品に続く第3の柱としてヘルスサイエンス領域を育成中で、その要に健康食品を位置付ける。昨年8月には、オーストラリアの健康食品大手ブラックモアズを約1690億円で買収した。

投資ファンドの関与が激増

足元のTOB戦線の活況を牽引しているのが海外勢を中心とする投資ファンド(投資銀行も一部含む)の存在だ。上期のTOB全41件のうち、3分の1超にあたる15件で投資ファンドが関与している(一覧表)。

前年の2023年は年間を通じて11件だったので、明らかな“激増”といえる。なかでも海外投資ファンドは記録的な円安を追い風に、日本市場での買収を加速している形だ。

投資ファンドの顔ぶれをみると、海外勢が11件のTOBに関与し、国内勢による4件を圧倒した。

◎2024年上期:投資ファンドが関与するTOB15件の一覧

届け出 対象企業 買付者
1月 T&K TOKA 米ベインキャピタル
ペイロール MBO、米TAアソシエイツ
ベネッセホールディングス MBO、スウェーデンEQT
2月 ウェルビー MBO、ポラリス・キャピタル・グループ(国内独立系)
ローランドディー.ジー. MBO、米タイヨウ・パシフィック・パートナーズ
アウトソーシング MBO、米ベインキャピタル
スノーピーク MBO、米ベインキャピタル
3月 JSR 産業革新投資機構(JIC)
5月 ジャパンフーズ アイ・シグマ・キャピタル(丸紅系)
日本KFCホールディングス 米カーライル・グループ
日本ハウズイング MBO、米ゴールドマン・サックス
6月 永谷園ホールディングス MBO、丸の内キャピタル(三菱商事系)
NCホールディングス 米MIRIキャピタルマネジメント
サン電子 米トウルー・ウインド・キャピタル
インフォコム 米ブラックストーン