大手菓子メーカーの江崎グリコ<2206>は、冷凍食品の定期宅配サービス「GREEN SPOON(グリーンスプーン)」を運営するGreenspoon(東京都渋谷区)の全株式を取得し子会社化した。

両社は2022年に、江崎グリコのアーモンドミルクとGreenspoonのスープを使った共同販促キャンペーンを実施したのを手始めに、グリコがGreenspoonに出資するなど関係を深めており、両社の事業成長を一層加速するためM&Aに踏み切った。

今後は、商品の共同開発をはじめ、双方のブランド力、顧客基盤、販売チャネルを生かした協業を進める。

大企業によるスタートアップへのマイナ―出資からM&Aに至る一つの事例として関心を集めそうだ。

会員数は4年間で15万人に

GREEN SPOONはサブスクリプション(定額)サービスで、メインディッシュ、スープ、スムージー、サラダの四つの分野で70種類以上のメニューを用意している。

一つの商品に6~10種類の野菜を用い、幅広い栄養が摂れるメニューとして開発しており、珍しい野菜や栄養価の高い野菜など、こだわりの食材を使用しているのが特徴。

こうした豊富に野菜が摂れる健康面に加え、電子レンジを用いて簡単に調理ができる手軽さなどが支持され、会員数は4年間で15万人に達している。

東京商工リサーチによるとGreenspoonの2023年3月期の売上高は7億4500万円(前年度比16.5%増)、当期損益は4億2900万円の赤字(前年度は3億3000万円の赤字)だった。

東京商工リサーチでは、2023年3月期は増収だったが広告費負担重く、赤字が継続しているとしている。

【Greenspoonの業績推移】東京商工リサーチ調べ

決算期

売上高(億円)当期損益(億円)
2021/3 3.28 -1.63
2022/3 6.39 -3.30
2023/3 7.45 -4.29

糖質摂取量を抑える食事法を後押し

江崎グリコは、一食当たりの糖質摂取量を20~40gに抑えるなどの食事法を後押しする「SUNAO」ブランドを展開しており、これまでに乾麺のパスタやソース、冷凍生パスタを発売し、一部の地域では法人向けの宅配サービスも行っている。

同社ではGreenspoonの子会社化に伴って、主菜、副菜の分野を強化し、おいしさと健康にこだわる20~40代の女性を中心に、販売を拡大していく。

Greenspoonの田邊友則代表取締役CEO(最高経営責任者)は「江崎グリコからは出資、融資合わせて多大な支援をいただいた。単体上場を目指すことの蓋然性も上がっていたが、GREEN SPOONを世に残すブランドにするという目的を考え、今回の結論に至った」と大企業の傘下に入る決断を下した理由を説明。

これに対しGreenspoonの元出資者であるAkatsuki Venturesの石倉壱彦代表取締役は「今回のグリコグループへの参画は、投資を受け、共に成長してからのM&Aになる点は今後、大企業とスタートアップとのM&Aという観点でエポックメーキングなディールだと思う」とし、今回のM&Aが大企業とスタートアップの新たな関係として広まる可能性を指摘している。

文:M&A Online