セブン&アイ・ホールディングスに対するカナダのコンビニ大手、アリマンタシォン・クシュタールの買収提案で改めてクローズアップされたのが外資規制。国の安全保障にかかわる業種(指定業種)の企業に外国企業が投資する際、国への事前届け出が必要となる。
では、渦中のセブン&アイは該当するのか。
2020年に事前届け出の基準を厳格化
答えはイエス。指定業種のなかでも、国の安全を損なうおそれが大きい「コア業種」に指定されている。
外為法(外国為替及び外国貿易法)は武器、原子力、工作機械、半導体など国の安全保障上、重要な業種を指定し、外国企業が国内企業の株式を取得する場合、事前に届け出るように定めている。
2020年5月に施行された改正外為法では上場企業の株式を取得する際、事前届け出の基準となる出資比率を従来の「10%以上」から「1%以上」に厳格化した(非上場株は1株以上の取得)。中国などを念頭に海外への先端技術の流出を防ぐため、規制を強化したのだ。
一方、役員派遣をしない、重要事業の売却・廃止を提案しない、非公開の技術情報にアクセスしない、などの一定の要件を満たせば、事前届け出を免除する制度を新設し、対日投資を阻害要因にならないよう配慮した。ただ、「コア業種」については免除制度を原則利用できない。
セブン 、リスト改訂で「コア業種」に変更
上場企業については事前届け出に該当するかどうかの目安を示すリストが公表されている。
リストは次の3つに分類されている。
①指定業種以外(事後報告業種)の事業のみを営んでいる会社
②指定業種のうち、いわゆるコア業種以外の事業のみを営んでいる会社
③指定業種のうち、いわゆるコア業種に属する事業を営んでいる会社
財務省が9月13日に公表した上場企業4032社を対象とするリストの改訂版によると、①が2025社、②が1047社、③が950社。②と③を合わせて約2000社のいずれかに外国企業が出資する際、原則として事前届け出が義務付けられている。
コンビニ事業を主力とするセブン&アイはこれまで指定業種のうち、コア業種以外の②に分類されていたが、今回の改訂で「コア業種」の③に変更された。
買収提案との関連性は?
コア業種への指定で憶測を呼んだのが買収提案との関連性。セブン&アイは8月に、「サークルK」などを展開するカナダのコンビニ大手、アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けており、コア業種への“格上げ”が買収交渉の行方に影響を及ぼす可能性があるからだ。
財務省は最新の会社の事業内容を反映するため、定期的に全上場企業に照会を行い、リストを改訂しており、2020年5月の公表開始から今回が6度目。
コア業種への指定について、セブン&アイは「財務省の照会は6月から行われ、買収提案とは何ら関係がない」としている。
セブン&アイは定款で小売業、食料品の製造、印刷物・電子出版物の製作、家畜飼料業、石油製品販売、不動産業、金融業、インターネットを利用した情報提供サービスなど70を超える事業を目的に掲げる。しかし、どの事業がコア業種にあたるのか明らかではない。
セブン&アイは9月初め、アリマンタシォンの買収提案について、「買収価格が著しく低く、実現可能性も低いなど、提案内容が不十分だ」とする書簡を送付した。
当初提案での買収金額は5兆6000億円規模で、セブン&アイの企業価値に照らして見合わないと判断した模様だ。一方、アリマンタシォンは買収金額の引き上げを検討していると伝えられている。