企業の発展は、社長の存在のみによってもたらされるものではなく、副社長や取締役といった影の参謀役の存在が欠かせない。各企業におけるのNo.2にご出演いただき、その役割と彼らの視点から思い描く事業戦略、さらには未来構想について伺おうと思う。

    株式会社西部技研
(画像=株式会社西部技研)
下薗 誠(しもぞの まこと)――株式会社西部技研 取締役常務執行役員 事業統括兼プロダクト営業本部長
1979年4月 デンヨー㈱入社
1986年7月 相生精機㈱入社
1993年10月 当社入社
2001年7月 Seibu Giken America, Inc. 取締役(現任)
2002年4月 当社取締役営業本部長
2007年1月 西部技研環保節能設備(常熟)有限公司董事(現任)
2008年3月 当社常務取締役営業本部長
2014年7月 ㈱西部技研DRエンジニアリング取締役(現任)
2021年5月 当社常務取締役プロダクト営業本部長
2024年3月 当社取締役常務執行役員事業統括兼プロダクト営業本部長(現任)
「環境に優しい空気のソリューションを届ける。」をパーパスとして、デシカント除湿機や VOC 濃縮装置等の開発からアフターサービスに至るまで、一気通貫の事業をグローバルに展開しております。様々な素材をハニカム形状に成形して多様な機能を持たせる当社のコア技術を活用し、世界各国のお客さまのニーズに迅速かつ柔軟に対応できることが強みであります。今後も当社の空気処理技術により、クライメイト・ニュートラルな未来実現を目指してまいります。

目次

  1. 事業の変遷について
  2. 御社におけるNo.2の役割について
  3. No.2が意思決定の際に重要視をしている点について
  4. No.2の思い描いている御社の未来構想について
  5. ZUU onlineユーザーならびにその他投資家へ一言

事業の変遷について

—— 創業から現在までの事業変遷についてお話しいただけますでしょうか。

株式会社西部技研 取締役常務執行役員・下薗 誠氏(以下、社名・氏名略): 当社は、民間の開発会社として、創業者の隈利實が、九州大学で研究助手をしながら一般企業からの研究受託をするところから始まりました。その後、自社製品開発に取り組み、ハニカム成形技術を応用した全熱交換器という製品を日本で初めて商業化しました。また、それ以前にハニカムフィルターという機能性フィルターも作っており、こちらは創業初期の売上の核となっていました。ハニカムフィルターは現在も販売していますが、事業規模は小さくなっています。

—— 1974年に全熱交換器を国産化・商品化したとのことですが、その後の技術開発について教えていただけますか?

下薗: 1984年には、ハニカム成形加工技術を応用し活性シリカゲルを用いた除湿ローターを世界で初めて世に出しました。現在、デシカント除湿機に用いられる吸着剤のスタンダードはシリカゲルとなっていますが、シリカゲルを用いた除湿ローターを世界で初めて作ったのは西部技研です。さらに、1988年には揮発性有機化合物を濃縮する濃縮装置を開発しました。これらの技術を基に、ハニカム成形加工技術やその機能性を向上させる吸着技術を高め、主要な基本製品が出来上がりました。

—— 海外や国内の営業活動についてお聞かせください。

下薗: 私が入社した1993年ごろは、当社はハニカムフィルターを中心に販売をしており、開発した全熱交換器やローターも機器としての売上はほとんどなかったです。当時、しっかりした営業部隊もなく、海外には技術力で売れるという考えで、空調機器メーカーからの引き合いに対応していました。売上の多くは海外向けであり、国内はハニカムフィルターを受託生産していた程度でした。

—— そこからどのようにしてブランド戦略が立ち上がりましたか?

下薗: 創業者が亡くなった後、創業者の妻である隈智恵子を中心にブランド戦略が立ち上がり、1998年から当社のコア技術を活かした自社ブランド製品ができはじめました。これにより、売上や付加価値が向上し、企業としての成長が見えてきました。

—— その後の事業展開について教えてください。

下薗: 当時は機器を大手の設備会社に販売するというのが主なルートでしたが、卸先に依存する経営構造となっており、利益率もよくありませんでした。そこで当社は、付加価値をさらに上げ、会社の利益を上げるために、エンドユーザーに近づくビジネスを展開しました。そうすることで、機器の販売だけでなく、ドライルームシステムを開発し、設計から施工、メンテナンスまでを行えるようになりました。今後もこれら事業を拡大し、さらに成長していくことを目指しています。

御社におけるNo.2の役割について

—— 御社におけるNo.2の役割について、社長との役割分担という観点でお話を伺えればと思います。

下薗: 現社長の隈は経営に注力しており、現場に入ることはそう多くはありません。私自身はどちらかというと現場主義で、やはり現場に赴いて、現場の声を拾って、それを改善改良に活かすための働きをしたいという思いがずっとあります。

私は国内の現場の実態を把握して、その現場の声を適切に経営者やマネージメント層に伝える役割、ブリッジ役を担っていると思っています。もともとは営業部門が弱い会社だったので、私は現場に近いところで営業を担ってきたというイメージですね。

No.2が意思決定の際に重要視をしている点について

—— 意思決定をされる際に重要視している点は何でしょうか?

下薗: 決定すべき内容にもよりますが、最終的には、会社にとって全体最適になるかどうかを考慮します。もちろん、現場の声も意思決定の際には考慮に入れます。しかし、もし現場の犠牲がどこかの部門で出るとしても、最終的には経営者の一人として、会社にとっての最適が常にベースになると考えています。

—— 成長を目指す上で、どちらの意見が優先されるべきだと思いますか?

下薗: この10年ぐらいで、どちらが優先されるべきかというプライオリティを継続的に設定してきました。長年の経験からか、社員の意見や現場の声をうまく取り入れることができるようになりましたが、最終的には会社にとって最適な選択をすることが大切だと思います。

No.2の思い描いている御社の未来構想について

—— 次に、株式会社西部技研の未来の構想についてお話しいただければと思います。

下薗: 当社は、創業者が素晴らしい財産として残した技術がキーのコンポーネントとなっています。また、現在展開している製品は、創業者が開発商品化した当時品と比べて何倍も素晴らしい性能や耐久性があります。それをさらに磨きをかけることで、コアプロダクトの進化を続けることが重要だと考えています。当社の技術志向型のスタンスは変えずにコア技術を高めながら、いかに付加価値を高めるかと常に考え続ける必要があります。

創業者は技術があれば売れるというのが口癖でしたが、現代は技術だけで売れる時代ではありません。とはいえ、ハードウェアの進化の流れは止められないということを我々は肝に銘じておかなければならないと思います。付加価値を高められるノウハウをどれだけそこにアドオンできるのか、システムソリューションをどこまで進化させられるのかが鍵になると感じています。

近年は中国の車載バッテリー向けのデシカント除湿機が業績を牽引してきましたが、今後は北米や日本、欧州での車載バッテリー向けの製品等の拡大を図っていきます。 例えば、韓国系や日系のバッテリーメーカーが米国に建設する新たな工場で使われる設備として、当社の製品を導入してもらうといった形での今後の展開が期待できます。その時に、当社のエンジニアリング技術が要求されてきますので、我々もそれに対応できるような、しっかりしたメーカー、エンジニアリング企業として、お客様の信頼が獲得できるサプライヤーになっていくことが今後の課題と考えています。

ZUU onlineユーザーならびにその他投資家へ一言

—— 最後にZUU onlineユーザーならびに投資家の皆様に一言いただけますか?

下薗: 現在、自動車業界は電動化の変革時代を迎えており、当社はその一端を支える企業として、この変革に対応していく必要があります。従来の機器販売に加え、これまで国内で展開してきたソリューション提案を海外に拡充させていくことが、我々の目指すべき方向です。

我々は、明るい未来を見据えて、これからも邁進していきたいと考えています。投資家の皆様におかれましては、ぜひ長い目で株式会社西部技研を応援していただきますようお願いいたします。

氏名
下薗 誠(しもぞの まこと)
社名
株式会社西部技研
役職
取締役常務執行役員 事業統括兼プロダクト営業本部長

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