カンブリア宮殿,RC
(画像=テレビ東京)

この記事は2024年11月28日に「テレ東BIZ」で公開された「異色の無店舗チェーン “究極”のリユースビジネスの全貌!:読んで分かる「カンブリア宮殿」」を一部編集し、転載したものです。

目次

  1. 不要品のお悩みを解決!~無店舗のリユースチェーン
  2. どうなっている? 査定システム~独自のルートで売り切る
    1. ライバルに差をつける戦略1~「客も安心の査定システム」
    2. ライバルに差をつける戦略2~「全て売り切る独自ルート」
  3. 壮絶人生からの逆転劇~異色のリユース誕生秘話
  4. 東大に受かったペンの値段は? ~新たなリユースの形
  5. 実はやりがいがたくさん~リユースビジネスの可能性
  6. ~村上龍の編集後記~

不要品のお悩みを解決!~無店舗のリユースチェーン

横浜市内で暮らす家族の元に、出張買い取りを専門に行っている「買いクル」の伊藤仁がやって来た。テーブルに並べられたのは「グッチ」のブランドバッグに、新品なら4万円する「ダイソン」のドライヤー、溜まっていたさまざまな紙袋から家族旅行の時に食べたという釜飯の容器まで、30個ほどの不要品だ。

▽客が出した不要品は基本、持ち帰るのが「買いクル」の流儀だ

カンブリア宮殿,RC
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注目の査定額は「ざっくり3万400円」(伊藤)。ブランドバッグが2万円、ドライヤーは5,000円、紙袋は1袋10円、釜飯の容器は100円になった。客が出した不要品は基本、持ち帰るのが「買いクル」の流儀だ。

「何でも査定・引き取り、が売りです。お客さんの要望をなるべくくみ取るようにしています」(伊藤)

リユース業界の市場規模は3兆円を超え、今後も拡大すると予想される。競争も激化する中、スタートから6年の買いクルは急成長を遂げている。

「買いクル」の特徴の1つが、買い取った不要品の販売方法にある。

買い取りを終えた伊藤は倉庫へ。そこには使いかけの香水や古いラジカセなどが大量に並んでいたが、「売れるのか?」と思ってしまう物も少なくない。倉庫の隅にはミニスタジオがあり、伊藤は買い取った物をスマホで撮影する。

▽伊藤さんは買い取った物をスマホで撮影する

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写真はパソコンに転送し、「YAHOO!オークション」や「メルカリ」に売値を書き込んだ。

「買いクル」の売り場は店舗ではなく、主に大手のフリマサイト。出張専門で買い取り、無店舗で売るのが最大の特徴だ。

買い取りのエリアは現在124拠点。その9割はフランチャイズという無店舗型リユースチェーンだ。「買いクル」を運営するのは、東京・大田区のRC。従業員46人で、チェーン全体の売上は約15億円にのぼる。「買いクル」のサービスは2018年に開始した。

最近はフランチャイズ加盟の問い合わせが月に200件もあるという。ほとんどはリユース業界・未経験者。「買いクル」を選んだ理由は「店舗を構えないから初期投資が大きくかからないから」(元建設会社勤務)、「ロイヤリティが低かった。フランチャイズでロイヤリティが高いと稼げないイメージがある」(美容院経営)などだ。

新規に店舗を構えれば1,000万円近くかかるが、「買いクル」は無店舗なので初期費用は198万円。本部に支払うロイヤリティは月10万円の固定。(※プランによる)オーナーは売り手に買い取り料を払うが、フリマサイトで売れば売っただけ儲かる仕組みだ。

「未経験者でもできます。もともと未経験者でもチャレンジできるフランチャイズパッケージにしているので」(FC統括本部長・島津大輔)

どうなっている? 査定システム~独自のルートで売り切る

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ライバルに差をつける戦略1~「客も安心の査定システム」

買いクルでは、加盟オーナーに開業前の現場研修を行っている。

本部スタッフとともにあるお宅にやってきたのは1カ月後に開業予定のオーナー。

▽本部スタッフとともにあるお宅にやってきたのは1カ月後に開業予定のオーナー

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リユース業は未経験だ。用意されていたガラステーブルやブランドバッグなどを、スマホで画像検索。同じ物のリユースサイトでの相場を見て査定金額を決めていく。このやり方なら商品知識が少ない未経験者でも査定できる。ダイヤモンドのついた指輪はルーペで指輪の刻印をチェック。

▽ダイヤモンドのついた指輪はルーペで指輪の刻印をチェック

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こうした研修を10日間行い、客にも満足してもらえる査定を実現する。

商品査定の本部サポートは開業後も続く。2024年9月に開業したばかりのオーナー、「買いクル」横浜青葉店の及川貴司が出向いた先のテーブルの上には、年季の入った食器類がズラリと並んでいた。中古相場を調べにかかるが、画像検索に出てこない大皿もあった。

「価値が調べにくいものは本部の鑑定チームに投げることにします」(及川)

5分後には本部から折り返しの連絡が届いた。珍しい商品などは本部の専門スタッフが査定するのだ。

▽珍しい商品などは本部の専門スタッフが査定する

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また、「買いクル」の買い取りエリアが急拡大しているもう一つの理由に、加盟希望オーナー向けに徹底リサーチを行っていることが挙げられる。

開業を希望するエリアにどれくらいライバルがいるのか、競合店の数と位置を調べた地図。さらに、そのエリアの住民がどれだけ買い取り関係のキーワードで検索したかを示したデータも。例えば「不用品回収」で検索した回数は「月に2,400件」といった具合だ。

1週間かけてリサーチし、そのエリアをランクづけし、オーナーに提示している。

▽加盟希望オーナー向けに徹底リサーチを行っている

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ライバルに差をつける戦略2~「全て売り切る独自ルート」

千葉・富津市の「買いクル」の商品が並ぶ倉庫に、巨大なコンテナが置かれている。

「海外に輸出する商品です。月にコンテナ1~2本をカンボジアに送っています」と言うのはRC社長・大堀直樹(45)。「買いクル」は独自に開拓した海外販路を持ち、定期的に商品を送っている。

大堀が海外販路を開拓したのは、日本では売るのが難しい物でも販売できるからだ。

「海外は広い家が多いので、大きい家具の需要はまだまだあります」(大堀)

日本では捨てるのにお金がかかる大型家具が、カンボジアでは多少壊れていても、すぐに売れると言う。

少し汚れたクマのぬいぐるみも「需要があります。中古のぬいぐるみ専門のリサイクルショップもあります」(大堀)。少子化が進む日本と違い、カンボジアは人口のおよそ40%が20歳未満。子ども用品のニーズが高いという。

壮絶人生からの逆転劇~異色のリユース誕生秘話

「買いクル」が売り先として選んだ東南アジアのカンボジア。取引を始めてから大堀は定期的に現地を訪れている。向かった先はカンボジアで提携しているリユース店「サクラショップ」。店内は広く、清潔な印象だ。

▽カンボジアで提携しているリユース店「サクラショップ」

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「日本のへたなリサイクルショップよりきれいだと思います」(大堀)

現在、カンボジア国内に25店舗を展開。その品揃えにブランド品などはほとんどない。「JA共済」のロゴがついたバッグや元の持ち主の名前の入った手袋……客は日本製の質の良さを信頼して買っているという。

大堀は1979年、東京・港区の裕福な家庭で5人兄弟の長男として生まれた。ところが、小学4年生の時に父親が事業に失敗し、失踪。児童養護施設で生活した。

「そこから生活が一変して、天国と地獄を二転、三転したような……」(大堀)

高校を卒業するとフリーター生活を経て中堅のリユース会社に就職し、猛烈に働く。そこでトップクラスの成績をあげ、29歳で独立。中古車をメインにした買い取り業の会社を創業した。

転機は、閉店することになった飲食店にテーブルなどを買い取りに行った時のこと。たまたま、半年前に出店した時の工事の見積書を目にした。金額は800万円だった。

「そういった経費をかけずにどうしたら商売ができるかを考えたら、無店舗に行き着きました」(大堀)

その時、大堀が真っ先に取り組んだのが海外販路の開拓。1人で2年もかけ、東南アジアの国々を回った。

「『何でも査定します』となると、何でも入ってくる。それを余さずに売る出口、販路が必要でしたので」(大堀)

大堀は、競合企業がほとんど進出していなかったカンボジアに目をつけると、現地のリユースショップを回り、交渉した。しかし、相手はまだサービスも始めていない見ず知らずの日本人。門前払いが続いた。

そんな中、1人だけ話を聞いてくれたのが「サクラショップ」のオーナー、チア・チュン・ホンさんだった。

「パワーがある人だと感じました。この人と手を組んだら自分も勉強になるし、『私もやらないといけない』という力をもらった」(ホンさん)

海外販路という地固めをした上で2018年に「買いクル」はスタート。戦略はあたり、急成長を続けている。

大堀がカンボジアに来た時に必ず寄っていく場所が、親のいない子どもたちが暮らす施設。なんでも引き取る結果、売りきれない物も出る。そうした物を中心に寄付活動をしているのだ。子どもたちの施設だけでなく、物が行き届かない貧しい村などにも寄付をする。

「『ありがとう』と逆に感謝されるし、こちらも使いかけの消しゴムや半分しかない鉛筆でも『最後まで使ってくれてありがとう』と思うので、本当のウィンウィンだと」(大堀)

どんな物でも必要としてくれる人、喜んでくれる人がいる。そういう人たちに届けることが大堀の考えるリユース業のゴールなのだ。

▽子どもたちの施設だけでなく物が行き届かない貧しい村などにも寄付をする

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東大に受かったペンの値段は? ~新たなリユースの形

大堀はこれまでなかった新たな買い取りサービスを仕掛けようとしている。

この日、訪ねたのは東京・中央区の「マーケットエンタープライズ」。リユース業界、最大級のプラットフォーム「おいくら」を運営している。年商は190億円。タッグを組み、新たな買い取りサービス、「おもいでむすび」を展開できないかとプレゼンに来たのだ。

▽特別な思い出がある物はそれが価値になるかもしれない「おもいでむすび」

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「例えばすごく勉強して『このペン1本で東大に合格した』とか、その物に価値がつくことで売る人は高く売れ、買うほうにも、普通の100円のペンより、ゲン担ぎができる500円のペンのほうがいいという人がいらっしゃるかもしれない」(大堀)

特別な思い出がある物はそれが価値になるかもしれない。ならば「金額にプラスされてもいいのではないか」という発想だ。

「思い出が付加価値みたいになる。面白いですね」(「マーケットエンタープライズ」おいくらカンパニー長・池﨑敬さん)と、先方も乗り気のようだ。

「まだまだこれからリユース市場は伸びていくので、こういうサービスが主流になって一番を取れたら面白いと思います」(池﨑さん)

実はやりがいがたくさん~リユースビジネスの可能性

2023年に「買いクル」に加盟した「ほまれの家」は、全国に74の事業所を展開する障害者向けの「就労支援事業所」だ。

「買いクル」の仕事が始まって、利用者たちのやる気に大きな変化があったという。利用者の1人は「とてもやりがいがあって楽しいです。特に出品した商品が売れた時ですね」と言う。

「ほまれの家」FC本部代表・内田直希さんは、加盟の狙いを「『買いクル』の仕事は多岐に渡るので、いろいろな利用者がいる中で、その人に合った仕事を提供できることが僕らとしてはありがたいです」と語る。

自閉症の末崎勇太さん(22)が受け持つのは、施設のスタッフと一緒に行う出張買い取り。この日の買い取り先では、折りたたみベッドや石油ストーブなど、重量のある物が出てきた。査定は同行スタッフが行い、末崎さんが先頭に立って次々と買い取った物を運び出していく。

▽末崎さんが先頭に立って次々と買い取った物を運び出していく

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「行った家の人に感謝されることがありがたい。ここで仕事を身につけて、一般企業に入ることが今の目標です」(末崎さん)

※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~

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「無店舗」という形には驚いた。ビジネスは出張専門で、買い取る。買い取ったものをネットで売る。基本的に、何でも買うし何でも売る。9割がフランチャイズで、その9割が「リサイクル事業未経験者」で、その半数が本業を持ち本業を継続している。FC加盟数は120店舗を超える。

販路にはカンボジアがある。「信頼できる売り先がないといつか破綻する」と大堀さんは言う。たった1人で東南アジアを旅してカンボジアと出会った。今、手垢のついたバットとか、「思い出」をリサイクルする事業に燃えている。

<出演者略歴>
大堀直樹(おおほり・なおき)
1979年、東京都生まれ。1997年、高校卒業後、フリーターを経て中堅リユース会社入社。2008年、RCを創業。2018年、買いクル、サービス開始。