名古屋鉄道の傘下で百貨店運営の名鉄百貨店は、1月31日に一宮店(愛知県一宮市)を閉店し、百貨店業からの脱却を目指している。名古屋駅に隣接する名鉄百貨店本店も名古屋駅の大規模再開発によりゆくゆくは閉店となることがすでに明らかになっている。
2000年に開業の一宮店は、名鉄一宮駅に隣接する地上7階・地下1階の百貨店で、婦人・紳士衣料や服飾雑貨・食料品を中心に扱い、ピーク期の2003年には約111億円の売上高を計上した。しかし、2022年の売上高は約59億円に落ち込むなど業績が悪化していた。
名鉄百貨店一宮店の前身である名鉄丸栄百貨店は1969年に開店。1982年に業績悪化のため現在の親会社である名古屋鉄道が株式を取得した。一宮名鉄百貨店と改称し経営も名鉄グループが行った。そして一宮名鉄百貨店は2000年、近隣に名鉄百貨店一宮店が出店されるのに伴い吸収され廃業となった。跡地には同グループの名鉄不動産が高層マンションを建設した。また、一宮市は毛織物で有名な街であり、この市を拠点とする企業に繊維商社大手の豊島がある。
名古屋鉄道が2023年2月に発表した2023年3月期第3四半期(2022年4月〜12月)において百貨店業は、営業収益130億4500万円(前年122億8800万円)、営業利益17億6200万円の赤字(前年19億2900万円の赤字)であった。近年はコロナ禍に加え、郊外の大型商業施設との競争激化、ネット通販の台頭による客数の減少も重なり、現状での営業継続は困難と判断し今回の決定に至ったようだ。
愛知県内の百貨店は次々に閉店しており、今回の一宮店閉店により名古屋市以外の百貨店はサテライト店を除き消滅することになる。さらに、同じく名古屋鉄道の小売子会社名鉄生活創研が運営するロフト名古屋も今年6月末での閉店が決定している。大型店であるが故にコストがかさみ採算性が低かったためである。駅ナカのスーパーやコンビニなどの営業に力を入れる名古屋鉄道が、事業の選択・集中を進める中での判断でもあった。
名古屋鉄道は、閉店後に新たな商業施設の開設を検討している。また、同社は2021年3月に一宮駅に駅併設型の商業施設「ミュープラット」を既存の建物を改修し開業した。2024年3月期の通期決算では、百貨店事業が21億円の営業赤字を計上しており、名古屋鉄道にとって脱「百貨店」が急務だ。
【本記事は、2023年4月25日に配信したものを再編集したものです】