株式会社ミロク情報サービス
(画像=株式会社ミロク情報サービス)
是枝 周樹(これえだ ひろき)――代表取締役社長
1964年2月生まれ、東京都出身。94年にミロク情報サービス取締役に就任。 経営企画室長や情報システム室長、営業本部長などを歴任・兼任し、2004年に代表取締役 副社長、2005年に代表取締役社長に就任。2015年より最高経営責任者(現職) 
全国約8,400所の会計事務所と約10万社の中堅・中小企業および小規模事業者に対し、財務会計・税務を中心とした経営システムならびに経営情報サービス等を提供しています。全国に広がる32の拠点網を活かし、設立以来45年以上にわたりお客さまの経営改革、業務改善をサポート。地域密着伴走支援で個々の課題にあわせた最適なソリューション提案を行い、お客さまのDXを推進しています。

目次

  1. これまでの事業変遷について
  2. 自社事業の強みについて
  3. ぶつかった壁やその乗り越え方
  4. 今後の経営・事業の展望
  5. ZUU onlineユーザーへ一言

これまでの事業変遷について

—— これまでの事業変遷について、創業から現在に至るまでの変遷ついてお答えいただけますでしょうか。

株式会社ミロク情報サービス 代表取締役社長・是枝 周樹氏(以下、社名・氏名略) 創業は1977年で、最初は会計事務所向けの計算センターとしてスタートしました。その後、オフィスコンピューターという事務処理専用の小型の専用機が普及し始め、当社のビジネスモデルを計算センター業務から会計事務所向け専用オフィスコンピューターの開発・販売にシフトしました。また、その数年後には企業向けオフィスコンピューターも手掛けるようになり、中小企業市場に参入しました。

さらに、1995年にWindows95が登場し、パソコンやサーバー型ビジネスの時代となる中、当社はハードウェアの製造から、パソコンに搭載できる会計などのパッケージソフトウェアやERPシステムの開発・販売を中心としたビジネスへと事業を転換していきました。

そして現在はクラウドサービスをはじめ総合的なソリューションサービスを提供しています。このように、時代の変化に合わせその時々に応じた最適な経営システムをリリースし、お客様の信頼を得て拡大してきました。現在は、会計事務所向け事業と中堅・中小企業、小規模事業者などの企業向け事業の2つにセグメントし、成長を続けています。

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—— まさに前職で中堅企業向けERPシステム「Galileopt(ガリレオプト)」を導入し、部門別に予算や経費を管理できるようになったことで、非常に仕事がはかどりました。ちなみに、創業されたのはお父様(現会長:是枝 伸彦)ですが、社長ご自身がどのようにして会社に入ることになり、今の立場になられたかを教えていただけますか。

是枝 私は高校卒業後、アメリカで学びました。その後、フォーバルという会社に入り、訪問販売を中心に営業の基本を学びました。その後、MJSの子会社に入り、通信産業系の事業を担当しました。

そこで、クレジットカード会社とアライアンスを組み、情報提供サービスを展開し、子会社の社長を務めました。その後、MJS本体に合流し、経営企画室長や開発本部長を経て、営業本部長、副社長となり、今に至ります。ITの潮流や先端技術を意識しながら、クラウドの流れを予見してきました。

—— 海外での経験や入社時の経緯について、先代との関係はどのようなものでしたか。

是枝 フォーバルの社長と私の父は親しい関係でした。私の将来について相談があり、営業の基本を学ぶために足腰を鍛えることになったのだと思います。お客様との接し方などを学び、非常に鍛えられました。

自社事業の強みについて

—— 競争の激しい業界の中で、御社の競合優位性とは何でしょうか。

是枝 そうですね。まず1点は、創業以来45年以上にわたる会計事務所との強固な信頼関係です。MJSシステムをご利用の税理士・公認会計士の先生方で組織された職業会計人の任意団体「ミロク会計人会」からシステムやサービスへの要望、提言をいただき、継続的に製品・サービスの開発や改善に取り組んできました。そして、会計事務所との信頼関係のもと、その顧問先企業をご紹介いただきMJSの製品・サービスを提供しています。

日本全国には約3万の会計事務所があり、そのうちの25%となる約8,400所が我々のシステムのユーザーです。この8,400所の会計事務所が顧問を務める中堅・中小企業、小規模事業者等は約50万社と推計されます。現在当社は企業マーケットにおいて10万を超えるユーザーを有しておりますが、シェアをさらに伸ばす余地があると考えています。

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—— 会計事務所の数が減っている中で、御社はユーザー数を維持できていますが、そのポイントはどこにあるのでしょうか。

是枝 デジタルやDXへの対応、慢性的な人手不足の課題、顧問先企業に対する経営支援の高度化など会計事務所が抱えるあらゆる経営課題に対し、私たちは地域密着型でお客さまを伴走支援しサポートしています。 また、所長の高齢化に伴い廃業するか、あるいはM&Aなどによる事務所存続を検討するか、会計事務所における事業承継の二極化も進んでいます。我々は事業承継サービスも提供していますので、財務会計といったシステムの提供だけでなく、事務所経営という観点でしっかりと対応できる体制を整えています。

—— 商品開発だけでなく、会計事務所との関係構築や営業体制も強化されているのですね。

是枝 全国32拠点に600名以上の営業人員がいます。

—— それは非常に強いですね。お客さまのサポートの体制についてもお伺いしたいのですが、現在580名ほどいらっしゃるそうですね。

是枝 コールセンターを含め、カスタマーサポートの職種が全体の4分の1を占めています。いわゆるCX(カスタマーエクスペリエンス)というお客さまにとって心地よい顧客体験の提供を大切にしています。会計ソフトの評価は、1年を通じての結果で判断されます。決算書や法人税申告、給与支払など、すべてが問題なく行われたときに評価されます。

一度信頼関係が築かれると、長く当社とお付き合いいただけることが多く当社のソフトウェアの継続率はほぼ100%に近いです。

ぶつかった壁やその乗り越え方

—— 会社を経営する中で感じた最も大きな困難と、それを乗り越えるための工夫について教えていただけますか。

是枝 そうですね、いろいろな困難がありました。特に、オフィスコンピューターの時代からパッケージソフトウェアの時代への移行期に、ネットワークやインターネットの発展が急速に進むなか、ネットワークに強いIT人材が不足していることが私にとって大きな課題でした。

また、売上構成比率や利益率の面でも課題がありました。過去の成功体験に頼りすぎて、ストックビジネスへの目が向いていなかったことが反省点です。専用機を売っていた時代からパッケージソフトウェアの時代になると、ソフトウェアの保守や税制改正に対応する必要があり、利益が出にくい状況でした。

その中で、最初に取り組んだのは、パッケージソフトのライセンス(利用権の)販売と保守サービスをセットにして普及させることでした。保守サービス料をいただいて、税制改正への対応や定期的な機能向上を図ったことで売上利益率が向上しました。現在は、保守サービスを含めたソフト使用料をサブスクリプション形式で取得する形に変化しています。以前、決済系のインターネット会社を立ち上げた経験が今になって生きていると感じます。

—— まさに、その時代の流れに合わせた戦略が功を奏したのですね。2005年に社長に就任されたことで、業態を一変させる過渡期を迎えたということですが、その時の心境はどうでしたか。

是枝 気がついたらその役割を担っていたという感じです。上昇志向というよりは、会社の改善すべき点に目が向き、結果的にその役割を引き受けた形です。

今後の経営・事業の展望

—— ソフトウェア開発の分野では、どのような挑戦がありますか?

是枝 ソフトウェア開発は競争が激しく、数年ごとに大きなイノベーションが生まれます。最近では、AIやブロックチェーン技術が注目されています。これらの技術を活用し、財務や会計の分野に選択と集中を図ることが重要です。現在、新しいSaaS型ERPシステムの開発に取り組んでいます。

—— DX化に向けての取り組みについてもお聞かせください。

是枝 DXの推進に向けた新規事業として、子会社であるトライベック株式会社が提供するクラウド型プラットフォームサービス「Hirameki 7」のサービスを強化し、中小企業のデジタル活用の推進と生産性向上に貢献したいと考えています。

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—— サブスクリプションモデルへの移行状況は、いかがですか?

是枝 現在、ERP事業においてシステム売上のサブスクリプション化に取り組んでおり、順調にサブスクリプション契約者数を増やし、ERP商品のARR(年間経常収益)が大幅に増加しています。2028年度には、ERP商品のサブスクリプション比率を60%以上にする目標を掲げています。

—— 売切り型からクラウド・サブスクリプション型ビジネスモデルへ移行を進めながらも、売上維持の要因は何ですか?

是枝 システム導入契約売上高のうち、企業向け売上の約40%が新規顧客からのものであることが大きな要因です。顧客基盤を拡大していくことが、サブスクリプション型ビジネスでは非常に大切なことです。

—— 既存のお客様へのアプローチも重要ですね。

是枝 そうですね。お客様への心地よい顧客体験(CX)を提供すると同時に、カスタマーサクセス(CS)への取り組みも進めています。また、2024年から営業職とCS職の社員へのITコーディネータ(ITC)資格の取得に積極的に取り組みコンサルティング力の強化も進めています。特に中小企業向けに、ITC資格者がDXを支援する体制を整えています。

—— 社員のモチベーション管理も重要ですね。

是枝 人的資本経営を重視しています。ベースアップの実施や、女性社員活躍の推進のため各種制度の改定など、多様な人材が活躍する働きがいのある職場づくりに取り組み、社員満足度の向上を目指しています。

—— ファイナンス戦略についてもお聞かせください。

是枝 ファイナンス戦略としては、M&Aを活用して企業成長を図ります。2028年度までに100億円を目処に、事業投資を進めていきたいと考えています。

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ZUU onlineユーザーへ一言

—— ユーザーの方々へ一言お願いします。

是枝 当社の社名「ミロク情報サービス」は、弥勒菩薩から由来しています。我々の企業理念の1つに「豊かな生活の実現」があり、会計事務所を通じ中堅・中小企業の発展を支えることは当社の指針となっています。また、日本社会は現在、様々な問題を抱えています。そうした中で、我々は社会的人格の形成を重視し、事業活動を通して一人ひとりが主体性を高め人間力を磨き、社会に通用する立派な人格を錬成すべく、様々な取り組みを進めています。そして、収益として得られた利益は、伝統文化財の保護活動やスポーツ振興など社会貢献活動に還元していきたいと考えています。

時代の変化にあわせてビジネスモデルを変革し、今後も会計事務所とともに中小企業の発展を支援し、日本を元気にしていきたいと考えています。

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氏名
是枝 周樹(これえだ ひろき)
社名
株式会社ミロク情報サービス
役職
代表取締役社長

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