この記事は2025年1月17日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「第2次トランプ政権発足で、内需の底上げが急務の中国経済」を一部編集し、転載したものです。


第2次トランプ政権発足で、内需の底上げが急務の中国経済
(画像=Talha/stock.adobe.com)

2024年の中国経済は、内需の回復が遅れる一方で、ハイテク製品を中心に輸出が堅調に拡大したため、外需への依存度が高まった。24年1~9月期の中国の経済成長率は、前年同期比で4.8%の伸びを示したが(図表)、このうち23%が外需によるものだった。しかし、今年はトランプ政権による関税引き上げ等の影響を受け、頼みの外需に逆風が吹くことが予想される。

第1次トランプ政権時は貿易摩擦に伴って米国向け輸出が減少に転じたが、元安効果もあって米国以外への輸出は拡大傾向を維持した。その結果、総輸出額の伸びは鈍化しつつも前年割れは回避した。

25年も一段の元安が進めば、堅調な途上国向け輸出が米国向け輸出の減少をある程度カバーする可能性はある。だが、総輸出額の約15%を占める米国向け輸出にブレーキがかかれば外需の下振れは避けられず、今年は政策強化による内需の底上げが急務となる。

中国政府は24年9月に政策対応の抜本的なギアチェンジが必要と判断し、これまでとは次元の異なる包括的景気対策の導入に踏み切った。株価や住宅価格の下落を受けて24年夏場に消費の減速が鮮明化したことを踏まえ、金融緩和や財政出動の強化に加えて、景気対策として不動産市場や株式市場のてこ入れ策も盛り込んだ。これにより、同年秋以降、消費者のセンチメントは上向きに転じ株式市場や住宅市場が活性化し始めたほか、自動車、家電、家具といった耐久財消費も持ち直しの動きが広がった。

25年はこうした内需改善の動きを、維持拡大できるかがカギを握る。翌年の経済運営を話し合う「中央経済工作会議」が24年末に開かれ、25年はマクロ経済政策を一段と強化し内需の全面拡大を図る方針が打ち出された。

財政政策を「積極的」から「一段と積極的」に、金融政策も「中立的」から「適度に緩和的」に転換した(金融政策で「適度に緩和的な」の表現を用いるのは10年以来14年ぶり)。25年3月上旬の全国人民代表大会(全人代)では、財政赤字の対GDP比率の引き上げや、特別国債の増発規模などが注目される。

第14次五カ年計画の最終年となる25年は、5%前後の成長率目標が維持されるとの見方が根強い。しかし、①米国の関税政策等が中国経済を下押しすることが見込まれる、②不動産セクターや地方財政などの構造問題は根が深く、解決にはなお時間を要する、③3年間のゼロコロナ政策で傷んだ家計が個人消費の回復を遅らせている──ことなどを踏まえると、今年の経済成長率は4.6%程度にとどまる可能性が高い。

中国経済が5%成長を実現するには、トランプ2.0の影響を最小限に食い止めることが求められる。その上で、大胆な政策強化により内需拡大の動きを確実に加速させることが必須となろう。

第2次トランプ政権発足で、内需の底上げが急務の中国経済
(画像=きんざいOnline)

岡三証券 チーフエコノミスト(中国)/後藤 好美
週刊金融財政事情 2025年1月21日号