ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「トランプ関税戦争でドル高円高。日銀利上げは早まったか。代償は日本株安」

ドル円=152-157、ユーロ円=156-161、ユーロドル=1.00-1.05

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨首位(7位)、株価15位(15位)、米関税引き上げと日本経済」
(トランプ関税戦争でドル高円高)
2月3日早朝ではトランプ関税戦争勃発で、ドル高円高でスタート。ドル円は一時155円を割る。クロス円は急落。メキシコ・カナダ・中国は報復関税を示唆。

(円は1月最強)
 円は1月首位に立った。24年7月以来の月間首位だ。日銀の利上げとトランプ関税で混乱の中で、当面は関税引き上げの矢面に立っていない円がリスク回避で買われたのだろう。代償はいつも通りの株安だ。日経平均は年初来0.81%安。10年国債利回りは1.245%、日銀利上げもある年初の1.09%から上昇している。

(米関税引き上げと日本経済)
 トランプ政権による関税措置が日本経済に与える影響については、さまざまな試算が出ている。JETROによれば、カナダとメキシコからの輸入品に対する25%の関税と、中国への10%の追加関税が実行に移された場合、2027年には、日本のGDPが0.2%押し上げられるとしている。これは、カナダやメキシコ、中国からのアメリカへの輸出が落ち込むなか、これらの国々に代わって日本からアメリカへの自動車関連の輸出などが伸びるためだとしている。
 一方、民間のシンクタンク「大和総研」の試算によると、同じく、カナダとメキシコへの25%の関税と中国への10%の追加関税が実行に移された場合、日本の実質GDPが、2年から3年以内に最大で1.4%程度押し下げられるとしている。この試算は、メキシコとカナダ、それに中国がアメリカに対して報復関税を課すことを前提としており、4か国で輸入価格が上昇し、世界経済が減速するとみている。

武藤経済産業大臣は、トランプ大統領の関税政策に関連して「メキシコ、カナダ、中国は日系企業がサプライチェーンを構築している地域でもあるので今後、明らかになる関税措置の具体的な内容および影響を十分に精査したい」と述べ、具体的な内容やその影響を見極め、対応策を検討する考えを示していた。

(関税より需給)
 ドル円の相場を決めるのは、ヘッドラインニュースでのデイトレ的反応は別にして 一に貿易需給、二に中長期的な資本需給だろう。

(石破首相が重要な役割)
 石破首相は関税を引き上げたばかりの米国を訪問する。報復関税やWTO提訴などの事案がある中でどういう役割を果たすのか。
あるいは この話題はスルーか。また本日、石破茂首相はOpenAIのCEOサム・アルトマン氏と共同創設者グレッグ・ブロックマン氏、ソフトバンクグループ会長の孫正義氏と会談する予定。

(2024年10-12月期実質GDPの予測)
 2024年10-12月期実質GDPの予測が出そろった。10社平均は前期比0.3%増、年率換算では1.1%増。3四半期連続プラスの見込みで、「設備投資が底堅く増加し、全体を押し上げる。景気の緩やかな持ち直しが続いていることが示されるだろう」とされる。2月17日発表。

*米ドル「通貨7位(10位)、株価(NYダウ)7位(5位)、ドル弱い、株も強くはない。関税合戦が始まったが、メリットはあるのだろうか」
(ドルはやや弱く。株価は欧州に引き離される)
ドルは12通貨中8位とやや弱い。株価も10%近い上昇を示す欧州勢から離され、ダウが年初来4.7%高、ナスダックが1.64%高、S&Pが2.7%高。10年国債利回りはピークの4.8%から低下して4.5%高。

(メキシコ、カナダ、中国へ関税賦課、報復関税も表明される
 トランプ大統領は2月1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を、中国には10%の追加関税を、それぞれ課す大統領令に署名した。米国に流入する不法移民や薬物などを食い止めるための措置だとした。一方、カナダから輸入される原油などのエネルギーについては関税率を25%ではなく10%にとどめている。むやみに税率を決めているわけでもないようだ。カナダやメキシコは早速、米国へ関税課す報復措置をとると表明した。中国の商務省は、中国政府として、今後、WTO=世界貿易機関に提訴するとともに、相応の対抗措置をとることを明らかにした。

米国の関税措置には3つの狙いがあり、
1、貿易赤字の解消
2、国の歳入を増やすこと
3、あらゆる問題の解決に向けた“交渉のカード”にする
という3つの狙いがあると言われている。弊害はインフレ上昇だ。

(今週は1月雇用統計)
 今週は関税を巡っての取引となるが、1月雇用統計の発表もある。失業率は4.1%予想で前月と変わらず、非農業部門雇用者数は15万人増の予想で前月の25.6万人増から大幅減少する。

(FOMCは据え置き。大統領との舌戦も興味が持たれる)
 1月FOMCではFF金利の誘導目標を4.25-4.5%に据え置くと決定した。決定は全会一致。今後の利下げ時期についてはほとんど手掛かりを与えず、トランプ政権の政策を見極めていく姿勢を示した。
過度な利下げにはリスクが伴うとの考えを示し、「制約的な政策を過度に早急に、もしくは過度に大幅に緩和すれば、インフレを巡る進展が妨げられる可能性がある」と警告した。
トランプ大統領はFRBに利下げを要求する意向も示し、これに従うことを期待すると述べていた。
パウエル議長はトランプ氏の発言について「反応もコメントもしない」と述べた。トランプ大統領は「FRBは自ら引き起こしたインフレ問題を止められなかった。劣悪な仕事をした」とも非難した。3月FOMCでも上起き予想が据え置き予想が現在多い。大統領との舌戦も興味が持たれる。

(4Q・GDPは減速。かけこみ消費がどこまで続くか)
 米国4Q・GDPは前期比年率換算で2.3%増となった。前四半期の3.1%増から減速し、予想の2.6%増を下回った。ボーイング社のストライキの影響で企業の設備投資が落ち込んだほか、企業在庫の伸び鈍化も影響した。個人消費は4.2%増の高い伸びとなった。消費は堅調な賃金上昇を生み出している労働市場の強さに支えられている。
関税への懸念から、かけこみで娯楽用品や自動車など高額品の購入に消費が向いた。ただ関税引き上げはいずれ需要の落ち込みを招くことになるとの見方がある。

*ユーロ「通貨7位(5位)、株価首位(首位)DAX)、独株価は世界最強、ユーロは5位へ反発。今週政策金利」
(ユーロ安、株高)
 1月のユーロは7位。景気低迷で弱いが追加利下げ観測で株価は強い。独DAXは年初来9.16%で高で1月は最強、仏CAC指数も7.72%高。

(政策金利引き下げ)
 ECBは政策金利を0.25%引き下げた。利下げは4会合連続。インフレ低下プロセスは「オントラック」と指摘し、持続的なインフレよりも経済成長の低迷の方が大きく懸念される中、一段の金融緩和の可能性を排除しなかった。 中銀預金金利は3.0%から2.75%に下げられた。
  ユーロ圏経済は低迷し、インフレ率は目標の2%をわずかに上回る水準で推移している。ディスインフレのプロセスは「順調に進んでいる」と改めて指摘。「賃金上昇は予想通りに緩やかになっている」とし、インフレに対する影響が部分的に緩和されているとの認識を示した。
ラガルド総裁は「今回の決定は全会一致。インフレ率は目標に持続的に到達していくと確信している」と述べた。

(米関税引き上げの影響は)
  トランプ大統領が関税を導入する意向を示す中、ラガルド氏は、貿易摩擦の増大でインフレ見通しが変化し、すでに低迷しているユーロ圏経済に対する一段の重しになる恐れがあると指摘。「経済成長に対するリスクは依然として下向きに傾いている。世界的な貿易摩擦の増大が輸出の抑制と世界経済の弱体化につながり、ユーロ圏の経済成長が押し下げられる可能性がある」と述べた。

(成長は低迷)
ユーロ圏の2024年4QのGDPは前期比で伸び率は横ばいとなった。経済規模が最大のドイツなどではマイナス成長に落ち込み、景気の低迷が際立つ形となっている。
2024年通年のユーロ圏のGDPの伸び率は、前年比プラス0.7%。エネルギー価格の上昇や高い金利水準が続いたことから、特にドイツでは国内産業の不振が目立っている。

(今週は消費者物価と小売売上)
 今週はユーロ圏の1月圏消費者物価と12月小売売上の発表がある。消費者物価は前年比で2.5%上昇の予想、前月は2.4%の上昇。小売売上は前年比で1.7%増の予想、前月は1.2%の増加。

(最近のドイツ)
ドイツの1月の消費者物価は年同月比2.8%上昇し、予想と一致した。12月の小売売上高は前月比1.6%低下し、予想の0.2%上昇に反してマイナスとなった。
前年比では1.8%上昇したが、予想の2.5%上昇には届かなかった。 1月の失業率は6.2%で前月の6.1%から小幅上昇した。1月のIFO業況指数は85.1と、前月の84.7から予想外に改善した。予想は84.7。

*ポンド「通貨11位(11位)、株価3位(6位)、今週利下げか、成長見通しは引き下げ。EU離脱5周年」
(ポンド安だが株価は強い)
 1月のポンドは弱かった。11位。トルコ、カナダとともに対円で2%超える下落の最下位グループ。ポンドは1月対円で2.26%安。対ドルで0.98%安。ただFT株価指数は強く1月は6.13%高。10年国債利回りは一時4.9%まで上昇も現在は4.54%と米国と同水準。

(0.25%の利下げか)
英中銀は今週、政策金利を4.75%から4.50%に引き下げる見通し。市場の予想以上のペースで利下げを進める可能性を示唆することも考えられる。 中銀は新たな経済予測も公表する。昨年11月の経済予測公表以降、英経済は低迷しており、中銀が最も注目するインフレ指標は、鈍化した。ただ賃金上昇率は予想外に加速している。
経済指標は強弱入り乱れており、金融政策委員の見解に変化があれば、市場は敏感に反応するとみられる。昨年12月の金融政策委員会では6人が据え置き、3人が0.25%の利下げを主張した。
金融政策委員は、昨年10月末の予算案に盛り込まれた国民保険料の雇用主負担分引き上げに企業がどう反応するかというインフレ見通しを左右する重大な問題について見解を示す可能性がある。

(来週はGDP)
 来週も重要指標のGDPの発表がある。4Q・GDPは前年比で1%増加の予想、3Qは0.9%増加。前期比では0.2%増加予想。前期はフラットであった。
3Qは政府支出は当初予想より大幅に減少、対照的に、家計支出が伸びた。

(米大手が成長見通しを引き下げ)
モルガン・スタンレーは、英国の2025GDPの伸び率を0.9%と、従来の1.3%から引き下げた。英経済の減速と労働市場の低迷の兆しを要因とした。ゴールドマン・サックスとJPモルガンも1.0%未満の成長率を予想している。
英中銀の予想は1.5%増。一時的な公共支出の増加による短期的な景気浮揚などが反映されている。

モルガン・スタンレーは「英中銀の引き締め政策による影響のピークは過ぎたと思われるが、経済抑制の影響は依然として残っている」と述べた。

25年は2月、5月、6月、8月、11月の5回の英中銀による利下げを予想し、政策金利は現在の4.75%から、25年末までに3.5%に低下すると見込んでいる。

(EU離脱5周年)
5年前の2020年1月31日、英国はEUを離脱した。各報道機関が特集を組んでいる。最新のユーガブ世論調査では、英国民の過半数が離脱を「間違いだった」と答えた。昨年7月に誕生した労働党政権はEUへの再加盟ではなく、関係を再構築することで防衛や貿易の面でのつながりを強化する方針だ。

*豪ドル「通貨4位(5位)、株価10位(9位)、2月は利下げか。ただ雇用は強い」
(1月は無難に推移)
 1月は4位となった。株価指数も8位のン初来4.38%高とまずまず。10年国債利回りは4.46%。
 
(2月利下げか)
 24年4Qのインフレが予想を下回ったことを受け、豪の大手銀行は、RBAが2月に利下げを開始すると予想している。金融政策の決定は通常、幅広いデータに依存しているが、今回は他の経済指標が発するさまざまなシグナルを考慮して、インフレが決定的な要因となったと考えている。インフレ低下がRBAの予想よりも早く進んでいることを示唆する十分な証拠が現在あると考えている。2月の会合で利下げサイクルを開始するのに必要な信頼を得ることが期待されている。当初、最初の利下げは2025年5月になると予想されていたが、予想を上回るインフレ率の低下により、2月の利下げの可能性が高まっている。
 ただ豪の堅調な労働市場と財政活動を考慮すると、利下げサイクルは他の多くの国ほど深くないと考える理由があり、他の一部通貨に対して豪ドルが下支えされる可能性があ

(4Qの消費者物価)
24年4Qの消費者物価は前期比0.2%上昇、予想の0.3%上昇を下回った。コアインフレも鈍化し、早ければ今月にも金利が引き下げられる可能性が出てきた。 前年比上昇率は2.4%と、3Qの2.8%から低下し、RBAの目標レンジの2-3)内に収まった。

(今週は12月小売売上の発表、予想は9か月ぶりの減少)
 今週は12月小売売上の発表がある。小売売上は8か月連続で増加していたが、今回は前月比で0.7%減少の予想だ。注意したい。

(関税合戦の中で)
アルバネーゼ首相は2月1日、メルボルン華人コミュニティが開催した春節カーニバルで、豪と中国の友好関係は両国の利益であり、豪政府は豪中の関係の安定化と協力に尽力する。両国の関係が今後さらに強固になることを期待します。 米国の関税引き上げでの混乱があれば、現在も貿易取引が最大の対中貿易に依存するだろう。

(首相の支持率急落、総選挙は野党勝利予想が優勢)
ニューズポールの世論調査によると、アルバニージー首相は支持率が急落して2022年の総選挙以来最低となり、次回総選挙へ向けた政党ごとの調査でも自由党・国民党の野党保守連合の支持率が初めて与党・労働党を上回った。
 アルバニージー氏は実績について「満足」から「不満足」を引いた純評価が6ポイント低下のマイナス20と首相就任以降で最も低くなり、野党連合を率いるダットン自由党党首を下回った。首相として望ましい人物についての指数はアルバニージー氏が1ポイント低下の44%だったのに対して、ダットン氏は3ポイント上昇の41%だった。
 野党連合と与党のどちらに投票するかを問う調査の支持率は、昨年12月の調査では50対50の同率だったが、今回は野党が51となり与党の49を超えた。5月までに総選挙が行われる見通し。
 アルバニージー政権は生活費上昇への対応や雇用の拡大に向けてさまざまな政策を打ち出しているが、支持率の改善に苦戦しており、今回の調査結果は打撃となりそうだ。

*NZドル「通貨4位(3位)、株価18位(17位)、内容は悪いが下げ過ぎたため下げ止まり」
(国を離れる人が多い苦しさあり)
 1月は4位と下げ止まっているが、後述するように内容は弱い。株価(NZ50)も弱く、年初来0.88%安。24年11月までの1年間で国を離れた人は127,800人で、前の12か月の期間から28%増加した。これは過去最も多い出国者数だ。ラクソン首相は、それを抑制するため外国投資誘致に向け規制を緩和すると明らかにしているが時間はかかる。10年国債利回りは4.62%で英米の金利が低下した為に先進国では一番高い。

(弱い企業と消費者信頼感指数)
 1月の企業信頼感は低下した。今後1年で景気が改善すると回答した企業は差し引き54.4%で、前月の62.3%から低下した。
今後1年の自社事業の成長を予想した企業は差し引き45.8%で同50.3%から低下。
ただ、価格とコストの指標が上昇し、過去1年に見られた下降傾向が横ばいとなる兆しを見せている。

 また1月消費者信頼感指数も12月の100.0から96.0へ低下した。消費者信頼感は全国的に低下し、小売業者、特に主要な家庭用品を販売する小売業者の見通しは依然として厳しい。

(今週は4Q雇用統計)
 今週は12月建設許可、4Q雇用統計などの発表がある。

(2月の政策金利決定では0.5%利下げか)
 NZ中銀のチーフエコノミスト、コンウェイ氏は、コロナ禍に関連した混乱が収まりインフレが鈍化する中、政策金利は中立水準に向けて低下するとの見方を示した。
政策金利の現行水準4.25%は中銀が長期的な中立水準と推定する2.5-3.5%%に対してなお制約的だと指摘した。 中銀は昨年8月以降、計1.25%の利下げを実施した。昨年11月には、2月の会合で0.5%追加利下げを行う見通しを示している。
また、中銀は国内のインフレ圧力が今年を通じて和らぎ、利下げの影響が経済活動に波及するにつれ、今後2年で経済成長が上向くと確信していると言明。
同時に「今後数年は移民流入減少と生産性の伸び悩みで潜在成長は緩やかになる可能性が高い」とも述べた。