ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「伝統の景気悪化の円高株安。トランプ大統領は強そうだがドルと株は強くはない」

ドル円=146-151、ユーロ円=154-159、ユーロドル=1.02-1.07

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨首位(首位)、株価18位(15位)、伝統の景気悪化の円高株安。また失われた20年へ向うのか」
(円高・株安への道)
 普通の国は景気が悪化すると、通貨安になり製造業に回復の機会を与えるが、日本の場合は円高となり、景気回復に時間がかかる。バブル崩壊以降、景気の回復のきっかけをつかむ迄、実に20年かかった。それも原発停止という偶然の出来事によって生まれた円安からであった。今回も力強い成長ではないが、トランプ政権誕生後の世界的なリスク回避の流れで円高・日本株安が進み始めている。日本は対外純資産国なので世界経済に異変を感じると、海外投資していた資金を日本に戻し円高が発生しする。
 円は今年最強通貨、一方日経平均はほぼ世界最弱の株式市場だ。ただ政府にはそれを是正する空気はまだないようだ。もう少し問題が大きくならないといけないか。

(利上げとは関係のない物価高騰もあり)
 今週は日銀の基調的なインフレ率を捕捉するための指標が発表される。これらが2%を超えてくれば日銀も利上げに確信を持つだろう。ただ物価上昇の大きな要因である、コメ価格やガソリン価格は利上げよりも供給を増やすことや、関税や暫定税の軽減で高騰を抑えることが出来る。利上げは景気を圧迫するだけのものになりかねない。2024年は10-12月期の成長率が予想を上回ったにもかかわらず0.1%成長だ。利上げの先走りは将来に禍根を残すだろう。

(長期金利上昇は一服、日銀総裁発言で)
 植田日銀総裁は、最近の長期金利の上昇について景気回復や物価上昇を反映したものとし、例外的に急上昇する場合には機動的に国債買い入れを増額する考えを改めて表明した。
日銀の1月利上げ以降も、政策委員による追加利上げに前向きな発言や良好な経済指標が続き、市場では次の利上げ時期を想定より前倒しする動きが出ている。これを受けて、長期金利の上昇が続いており、総裁発言前には一時1.455%と2009年11月以来の高水準を付けていた。

(需給はプラザ合意やバブル崩壊の円高とは異なる)
 急激な円高と言えばプラザ合意以降の3年で120円の円高、あるいは1990年以降のバブル崩壊以降の160円から75円の円高が上げられる。ただ当時と現在は大きな点が違う。当時の膨大な貿易黒字と比べ貿易赤字だからだ。もちろん原油価格が50ドルを割るようなものになれば、また急激な円高もあり得る。現在は貿易赤字であり、外貨投信など個人の外貨投資も伸びている。ただ2024年10-12月は機関投資家の外貨投資が減少していることが気がかりだ。


*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)11位(11位)、トランプ大統領はに強そうだがドルと株は強くはない」
(ドル安く、株も強くない)
 ドルは弱い、12通貨中11位で下にはトルコリラしかいない。株価指数は3市場ともプラス圏を維持しているがダウが2.08%高、ナスダックが1.1%高と低水準だ。マイナス圏となればトランプ大統領がFRBのせいだと威嚇しそうだが、政権の不安定さにも繋がるだろう。10年国債利回りは先行き不透明感もあり低下4.43%。

(先週は殆どが弱い指標)
 先週は弱い指標が多かった。強い、普通、弱いで分けてみた
*強い=NY連銀製造業景気指数
*普通=新規失業保険
*弱い=NAHB住宅市場指数、住宅着工、景気先行指標、フィラデルフィア連銀製造業景気指数、PMI、ミシガン大学消費者態度指数・確報値、中古住宅販売件数

(今週の指標は以下の通り)
今週はGDP改定値、耐久財受注、失業保険 住宅販売保留、個人所得個人消費支出(PCEデフレーター)、シカゴ購買部協会景気指数

(FRBはインフレを懸念しているが経済指標は強くない)
 1月28-29日のFOMC議事要旨で、、根強いインフレや、関税などトランプ大統領の政策がインフレ目標達成への取り組みに及ぼし得る影響について懸念を表明した。トランプ大統領は関税の引き上げや移民の取り締まりなどの政策を推進しており、いずれもインフレの見通しや労働市場、経済成長に影響を与える可能性がある。当局者は経済におけるリスクはおおむね均衡しているとしつつ、「インフレ見通しへのリスクは上振れ方向だと総じて指摘した」、「貿易や移民政策の変更、地政学情勢によるサプライチェーンの混乱、想定よりも強い家計支出といったシナリオに伴う潜在的影響を挙げた」としている。

(貿易の最適な経路をつぶすトランプ政策)
 関税を引き上げ、貿易不均衡を是正しようとすることは、現在の最も経済的合理性を持って構築された貿易の流れを変えてしまう。米国に工場を戻す、誘致し、米国から輸出して米国を貿易黒字にすることが狙いのようだ。米国内の高賃金、非効率なシステムで作られた製品は高コストになり競争力を失う。海外の工場を移転するにも時間がかかり大統領任期の4年間では完了できない。「無理が通れば道理が引っ込む」実験の開始だ。
 中間選挙までの2年足らずでは新システム構築は無理だ。さらにそれが悪い結果を生むとレームダックとなる。
そもそも関税政策や対外援助禁止は上手く機能しなかった50年以上の前のものだ。


*ユーロ「通貨9位(7位)、株価2位(首位)DAX)、ユーロ安株高、独選挙は、ウクライナ和平は」
(独総選挙)
 独総選挙予測では最大野党で中道右派の「キリスト教民主・社会同盟」が総選挙で勝利し、 ユーロは2月24日早朝の取引開始早々、対米ドルで小幅上昇した。ユーロはドルに対して0.2%昇して1.0480となり、他の通貨よりも若干上昇したがアジア市場オープン後の午前7時頃は伸び幅を縮小1.0465あたり。市場の注目は、党首メルツ氏がいかに早く政権を樹立できるかに移るだろう。
 尚、移民や難民に対して排他的な主張を掲げ、極右だとされ、ウクライナ支援にも消極的な右派政党「ドイツのための選択肢AfD」は2位となっていて前回の選挙から得票率を倍増させる勢い。

一方、ショルツ首相の与党で中道左派の「社会民主党」は、16.5%で3位。

(ユーロ安株高)
 ユーロ安株高が続く。株価はウクライナ紛争収束の流れからだが、先週はトランプ大統領とゼレンスキー大統領の確執、またNATO経費の欧州各国の増額観測もあり株価は伸び悩んだ。ウクライナ紛争への和平会議がウクライナだけではなく欧州も関わっていないことが懸念されている。独DAXが世界の株価をリードしていたが、先週はハイテク景気で盛り上がる香港ハンセン指数に一気に抜かれ2位へ後退した。10年国債利回りは独で2.46%、他の欧州各国も3.5%以内に収まっている。

(PMI、ZEWも改善傾向)
独2月PMIは製造業が前月の45.0から46.1へ、サービス業は52.5から52.2へ悪化、総合では50.5から51へ改善した。ユーロ圏では製造業が46.6から47.3へ、サービス業は51.3から50.7へ、総合は50.2で変わらずであった。

 2月ZEW景況感指数は独が10.3から26へ、ユーロ圏が18から24.2へ改善した。

(今週は指標が多い)
今週は独のIFO景況指数、独連銀年報、消費者信頼感指数、小売売上、雇用、消費者物価、ユーロ圏では経済信頼感指数、 消費者インフレ期待指数など盛りだくさんだ。若干の改善を示すものが多い。
2年連続マイナス成長の独の連銀の年報が2025年をどう描くか注目したい。


*ポンド「通貨10位(10位)、株価7位(7位)、ドルより強いが円に引き離される。インフレ懸念と財政懸念あり」
(下位グループで推移、ドルより強いが円に引き離される)
 ドルを抜いたが円にはさらに引き離され10位。株価は5.95%高、紆余曲折あるがウクライナ紛争が収束しかかっているからだろう。10年国債利回りは4.58%。

(伸びる賃金、インフレ目標2%を大きく上回る)
 賃金は2024年4Qに伸びが加速した。景気低迷にもかかわらず、英中銀が追加利下げを慎重に見極めようとしている要因が改めて鮮明になった。24年10-12月の前年比6.2%上昇。9-11月の5.9%上昇を上回り、1年ぶりの高い伸びとなった。 賃金上昇率は英中銀のインフレ目標2%を大きく上回っている。 失業率は4.4%で9-11月から変わらず。

(1月消費者物価上昇)
1月の消費者物価は前年同月比上昇率が3.0%。インフレ率は10カ月ぶりの高水準となった。予想は2.8%。利下げ見込みは低下した。

(小売売上強く、製造業PMI弱い)
1月の小売売上高は前月比1.7%増で予想の0.3%増を大幅に上回り、昨年5月以来最大の伸びとなった。一方2月PMIは製造業が前月の48.3から46.4へ低下、サービス業は50.8から51.1へ上昇、総合は50.6から50.5へ低下した。

(英中銀講演多数)
今週は重要指標はないが、英中銀のロンバルデリ副総裁、ラムスデン副総裁、ディングラ委員、ピル・チーフエコノミストらの講演がある。

(懸念は財政)
 政府の支出と税収の差である黒字は1月に154億ポンドとなり、30年以上前に記録が始まって以来、同月としては最高水準となった。しかし、この数字は英国の公式予測機関が予測した205億ポンドよりはるかに低く、リーブス首相が自ら課した経済政策を守るために来月、公共支出を削減するか、さらなる増税をしなければならないとの憶測が再燃している。


*豪ドル「通貨2位(3位)、株価12位(10位)、利下げ後も健闘2位」
(利下げ後も対円では弱いが対ドルで堅調)
 利下げ後も対円では弱いが対ドルで堅調で2位。対ドルで3週連続陽線、ただ先週は上ヒゲが長い。対円では反落。株価(全普通株指数)は年初来1.79%高、先週は2.88%下落。10年国債利回りは4.5%。

(4年ぶりに利下げ)
 RBAは約4年ぶりに利下げを決定。政策金利を0.25%引き下げ4.1%とした。インフレ抑制で進展があったとするものの、ブロック総裁は勝利宣言は時期尚早と述べ追加利下げの言質を与えなかった。2024年4Qのコアインフレ率が3.2%に鈍化したことから、予想は0.25%の利下げであった。 経済予測では、基調インフレは従来予想よりも速いペースで下落するものの、労働市場の逼迫で物価上昇圧力が長引くとし予想。失業率予想は引き下げた。

(雇用は堅調も賃金上昇は緩む)
1月雇用統計では、就業者数は前月から4万4300人増え、予想の2万人増を大きく上回った。増加分は全てフルタイム就業者(5万4100人増)だった。12月は6万人増。一方、失業率は4.1%と前月から0.1ポイント悪化し、予想と一致。 好調な雇用がインフレに与える主な影響は一般的に賃金の上昇で、賃金は実際には逆の方向に向かっている。

2024年4Qの賃金価格指数上昇率は前年比3.2%と22年以来の低い伸びとなった。RBAは追加緩和の必要性を検討するにあたり、労働市場が予想ほどインフレを招かない可能性を念頭に置くことになる。

(物価見通し下方修正)
 RBAは、経済見通しを下方修正した。基調インフレは従来予想よりも速いペースで下落するものの、労働市場の逼迫で物価上昇圧力が長引くとした。 コアインフレ率の指標として注目されるCPIの中銀トリム平均値は、4-6月期に2.7%に鈍化すると予想。従来は3.0%だった。
 12月時点で4.0%だった失業率については、6月に4.2%に上昇し、27年半ばまで同水準で推移すると予想。従来予想の4.5%からやや引き下げた。
消費者物価は6月までに2.4%で推移すると予想。年央に政府による電気料金支援が終了すると、3.7%まで上昇し、その後は再び下落すると見通した。
民間需要の低迷を反映し、経済成長率は昨年後半に1.1%まで鈍化したが、6月には2.0%まで回復するとした。

(2月PMIは改善)
 2月PMIでは製造業は前月の50.2から50.6へ、サービス業は51.2から51.4へ、総合は51.1から51.2へ上昇した

(今週も重要指標あり)
 今週は1月消費者物価(予想前年比2.5%、前月2.5%)、4Q設備投資(予想0.6%増、前期1.1%増)の発表がある

(財務大臣訪米)
チャーマーズ財務大臣は、今週米国を訪問し、ベッセント米財務長官と関税問題などを協議すると述べた。


*NZドル「通貨4位(5位)、株価17位(17位)、ドル安で浮上しているが中味はまだ脆弱、リセッション中」
(他力で4位)
 今年のNZドルは12通貨中4位と安定している。NZ自体に良い材料があるわけでないのは、株価指数(NZ50)が年初来2.73%安と低迷していることがある。ドルが独歩安でNZドルが浮上、円がリスク回避で最強なので、円を抜くことはない。関税問題では矢面に立っていないことはメリット。資源価格上昇で強い豪ドルに連れ高となっている。
 10年国債利回りは4.68%。

(0.5%利下げ、追加利下げの余地あり)
  NZ中銀は2月19日、低迷する経済の回復を支援するため、政策金利を0.5%引き下げ、3.75%とした。リセッション、インフレ鈍化で緩和継続の余地が生じている。オア中銀総裁は、経済は現在、低水準で安定したインフレ環境にあるが、不安定な国際情勢によって影響を受ける可能性があるとの見方を示した。また政策金利が年末までに3%程度になるとの予想を示した。7月中旬までに金利が0.5%引き下げられると予想した。
  コンウェイ中銀チーフエコノミストは、関税競争が激化すれば「インフレが進み、成長が減速し、世界経済の効率が低下する。最善の対応は、将来の変動を幾らか吸収できるよう、インフレ率を2%にすることだ」と述べた。

(明るさもある。1月PMIから)
 リセッションの中で1月PMIは改善した。製造業は前月の45.9から51.4に、サービス業は48.1から50.4へ、総合は47.5から50.8へ。
いくつかのビジネスが既に好転を感じ始めている。労働市場は経済活動に遅れる傾向がある。企業は人員採用を考え始める前に、成長が回復し、将来も成長が持続するという確信を持つ必要がある。

(リセッションは抜け出せるか、4Q・GDPは
 3月20日に発表予定の4Q・GDP予想では前期比0.2%上昇の予想でリセッションを抜け出す可能性もある。