為替相場は、国や地域の貿易時に必要な実需や投資、投機の動きなど、さまざまな要因で変動していく。その要因のなかで、特に長期的な変動に関して最も大きな要因として挙げられるのが、その国、あるいは地域間の「金利差」だ。「金利差」が生まれるベースになるのが、各国の中央銀行が決める「政策金利」である。

では、政策金利を決定する中央銀行の「トップ」になる人物は、どのように決められているのだろうか。為替・金利に関する知識の一つとして知っておいて損はないだろう。本記事では、「中央銀行のトップの決め方」について解説していく。

為替相場はどうやって動く ?

中央銀行のトップはどう決まる ? 日・米・欧の違いと、トップの影響力を探る
(画像=beeboys / stock.adobe.com)

為替相場は、さまざまな要因によって変動していく。根幹にあるのは、モノやサービスの値段と同様、「需要」と「供給」のバランスだ。その国 (地域) の通貨を買う動きが強まればその通貨は上昇するし、その通貨を売る動きが強まれば、その通貨は下落する。その需給バランスに影響を与える要因として挙げられるのは、以下のようなものだ。

  • 物価の変動や貿易収支
  • その国・地域の経済指標
  • 為替介入などの政治的要因
  • 紛争や戦争といった地政学的要因 など

為替相場は、これらのさまざまな要因が複雑に絡み合って変動するため、予想や予測が非常に難しい。そんな複数の変動要因のなかでも、中長期的に為替相場の変動に大きく影響するといわれるのが「金利差」である。ここでいう金利差とは、国や地域の「政策金利の差」のことだ。

為替相場では「金利が高い通貨」が買われ、「金利が低い通貨」が売られる傾向がある。金利差によって通貨の需給に差が生まれ、買われる通貨と売られる通貨が出てくるというわけだ。

中央銀行の役割

「金利差」を生み出す政策金利は、その国・地域の中央銀行が決定する。中央銀行は、政策金利の決定のほか、「紙幣の発行」や「民間銀行の銀行」「政府の銀行」など、その国・地域の経済や雇用を守るという非常に重要な役割を担う。

それだけに、その中央銀行のトップ (米国ではFRB議長、日本では日本銀行総裁、ユーロ圏ではECB (欧州中央銀行) 総裁) の両肩には、重い責任がのしかかる。もちろん、トップだけですべての政策を決定するわけではない。理事会 (日本では政策委員会) メンバーの採決によって決められるが、それでもトップの責任は非常に大きい。

中央銀行のトップはどのように決まる ?

では中央銀行のトップは、どのように決められているのだろうか。ここでは、日本、米国、ユーロ圏の3つについて紹介しよう。

日本

日本の中央銀行のトップ、つまり日本銀行総裁は「日本銀行法」に基づき、衆議院・参議院両院において過半数の同意を得たうえで、そのときの内閣が任命する。政府が総裁や副総裁、政策委員会のメンバーを「候補者」として提示し、国会で承認を得るという流れだ。ただし政府による指名とはいえ、金融政策に関しては自主性、独立性が重視されている。

日本銀行法第3条第1項では、政権による政治的な圧力がかからないように「日本銀行の金融調節における自主性は尊重されなければならない」と定められている。

米国

米国では、1913年に施行された「連邦準備法」による中央銀行制度が敷かれている。金融政策は、FRB理事 (議長1名と副議長2名含む) 7名と、12地区に分けられた連邦準備銀行の総裁5名、計12名によってFOMC (連邦公開市場委員会) で投票が行われ決定される。

FRB理事は、政権が指名し米議会における公聴会を経て就任。日本と違って「州ごとの自治」が重視されており、12地区の連邦準備銀行のうちニューヨーク地区連銀総裁を除く4名は“輪番制”でFOMCでの投票権を持つようになっているのが特徴だ。

欧州 (ユーロ圏)

1999年1月に単一通貨「ユーロ」が誕生して以来、ECBがESCB (欧州中央銀行制度) に基づきユーロ圏の金融政策を担当するようになった。ECBの金融政策は、総裁、副総裁と4名の専務理事の6名で構成される「役員会」とユーロ圏の中央銀行総裁20名、計26名で構成される「政策理事会」のメンバーの投票によって決められる。

総裁や理事は、EU (欧州連合) 首脳会議によって指名され、欧州議会およびECB運営理事会による協議を経て正式決定される。

中央銀行トップの方針が与える影響

中央銀行トップの方針は、政策金利の決定などに大きな影響力を持つ。2008年のリーマン・ショックで大規模な金融緩和を実施し、米国経済を急速に立ち直らせることに成功したベン・バーナンキ元FRB議長や、2013年にデフレ克服に向けて「黒田バズーカ」と呼ばれる大規模な金融緩和を行った黒田東彦 (はるひこ) 前日本銀行総裁のケースを見ても、メディアなどで実績が取り上げられるのはトップの人物だ。それを見ても、その影響力の大きさがわかるだろう。

中央銀行の金融政策は、為替相場に中長期的な影響を与える。為替相場が変動すれば、外貨預金などの外貨建て資産の価値や株式相場の値動きにも影響が及び、円安になればエネルギー価格や輸入製品の価格が上昇するなど、日常生活にも大きく関わってくるのだ。

こうしたリスクに備えるためには、外貨預金などの外貨建て金融商品の保有を選択肢に入れるべきだろう。そうすることで、円安の進展による円建て商品の資産価値の下落はもちろん、輸入商品の値上がりによる生活費増加のリスクを軽減できる。

為替相場は、複数の要因が絡み合って動いているため、非常に予測しづらい。ただ、各国の中央銀行トップの方針や考え方を知ることで中長期的な予測の一助になるだろう。近年、米ドル対円相場では円安が進んでいる。円安による円建て資産の価値の減少や、輸入製品価格の上昇の負担を軽減するためにも、外貨での資産保有を選択肢の一つに入れておきたい。

(提供:大和ネクスト銀行


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