
総括
FX「メキシコには相互関税の脅威なし。ペソ踏ん張る、株は好調」メキシコペソ見通し
予想レンジ 7.1-7.6
(通貨5位、株価5位)
(ポイント)
*シェインバウム大統領「メキシコには相互関税は賦課されない」
*ペソ年間5位。一時対ドルでは20ペソ割れもあったが短命
*株価は強い
*政策金利は0.5%引き下げか
*OECDの成長見通しは大幅下方修正
*指標は引き続き弱い
*関税交渉は続く
*USMCA同時リセッションもあるが、関税でライバル国の結びつきが強化される意見もあり
*サプライチェーンの変更は困難、追加関税を待つメキシコの日本企業
*24年の米国への貿易黒字は過去最高を記録
*S&Pがメキシコの財政運営を評価
*ペソ安に介入不要、メキシコ中銀ロドリゲス総裁
*司法制度の混乱続く、最高裁判事8名が同時に上院に辞表
(ペソ年間5位。一時対ドルでは20ペソ割れもあったが短命)
今週は一時、対ドルで20ペソを割り込み、年初来では円に迫る勢いがあったが、現在は対円2.12%安まで差を拡げられた。対ドルでも20台に再び戻る。対ドルは年初来3.33%高。
ただボルサ株価指数も年初来7.25%とまずまずだ(米株指数はマイナス圏)。10年国債利回りは9.65%。
頻繁に打ち出され、また変更されるトランプ関税政策でもペソは急落もせず耐えている。当初2月に予定されていた関税賦課が4月へ先送りされたことはメキシコの交渉力によるものだ。米国へ関税賦課のデメリットを認識させた。
(政策金利は0.5%引き下げか)
3月27日の政策金利決定会合では政策金利を9.5%から9.0%へ0.5%引き下げることが予想されている。現在インフレは3.77%で、2-4%の中銀目標範囲内に収まっていること、また景気減速が続いていることが利下げ要因だ。3月24日発表の3月前半のインフレ動向も注目したい。
(OECDの成長見通しは大幅下方修正)
今週OECDは成長・物価見通しを更新した。今年のメキシコの成長見通しは1.3%減で前回から2.5%下方修正された。関税戦争の影響を考慮した。消費者物価見通しは4.4%上昇、前回より1.1%上方修正された。ただ関税賦課の影響は内容も不明なので不確実さは残る。フィッチは関税競争が激化すると米国・メキシコともに景気後退に陥る可能性を示唆している。
一方、シティの予想はより楽観的だ。
成長率は2025年に0.6%、2026年に1.7%、インフレ率は2025年に3.8%、2026年に3.78%
(指標は引き続き弱い)
4Q民間支出が前期比1.4%減少、前年比で0.4%増。前期はそれぞれ1.1%増、3%増だったのでかなり弱い数字だ。2月消費者信頼感指数は46.3、前回は46.6。1月鉱工業生産は前年比で2.9%減、前回は2.7%減。米国同様に景気減速が気になる。
(関税交渉は続く)
今週もエブラルド経済大臣はワシントンで貿易・関税協議を行っている。シェインバウム大統領とエブラルド経済大臣は、メキシコの対米報復措置は、4月2日の米国の決定を待つとした。
ルビオ米国務長官は、メキシコ政府は麻薬カルテルや米国への不法移民に対して「過去に見たことのないような非常に強力な措置」を講じていると述べた。これはペソの動きを安定させた。ただ「メキシコ当局からこれまでに見たことのないレベルの協力が見られた」としながらも、「十分ではない」とし、「さらに努力する必要がある」と付け加えた。
エブラルド経済大臣は米関税の標的となっている他国と比べて「より良い状況」で4月2日を迎えられることを望んでいると述べ、協議の進展に期待をにじませた。「必要な協議を行い、メキシコにとって最善の手段を行使する準備を整える」と述べ、冷静さを保つことの重要性を強調。これまでのところそうした戦略がメキシコにとって良い結果をもたらしているとの認識を示した。