
総括
FX「関税混乱でペソじり安。メキシコ株価上昇は一縷の望み」メキシコペソ見通し
予想レンジ 6.8-7.3
(通貨7位、株価3位)
(ポイント)
*年初来安値更新、ドルより強いが円やスイスフランに引き離される
*メキシコ株価上昇は一縷の望み
*3月消費者物価指標は3.8%。追加利下げ観測変わらず
*メキシコ大統領、米への報復関税見送りの意向も排除せず
*関税の傷浅いメキシコ、中国・ベトナムより優位に
*メキシコから米国へ工場を移転する動きは進んでいない
*世界的には新興国通貨の投資判断は引き下げられペソも連れ安
*メキシコは米関税ではUSMCAに基づき優遇される
*ただ指標は引き続き弱くリセッション懸念もあり
**OECDの成長見通しは大幅下方修正
*S&Pがメキシコの財政運営を評価
(年初来安値更新、ドルより強いが円やスイスフランに引き離される。株価は上昇)
4月9日に対円で6.840の安値をつけた。現在は7.06、今月は対円で3.55%安、年初来で6.37%安。年初来で7位だが、「米国が中国に125%の関税を課す」などの関税の混乱は続きリスク回避で買われる円やスイスフランに引き離されてきた。
ボルサ株価指数も今週は大きく売られたが、年初来4.04%高とプラス圏。日経平均やナスダックの10%以上の下げと比べれば健闘している。10年国債利回りは9.3%、年初の10.83%からは大きく低下している。
(3月消費者物価指標は3.8%。追加利下げ観測変わらず)
3月の消費者物価は前年同月比3.8%上昇した。前月の3.77%から加速。
インフレターゲット(2-4%)内に収まり、政策金利をさらに0.5%引き下げるとの見方は変わらず。
トランプ大統領の貿易政策による逆風の中、インフレ環境が許せば今後も同程度の引き下げを決定する可能性がある。コア指数は前年同月比3.64%上昇し、2月は3.65%。
本日は2月鉱工業生産、中銀議事録の発表がある。来週は大きな指標の発表はない。
(メキシコ大統領、米への報復関税見送りの意向も排除せず)
シェインバウム大統領は4月7日、トランプ政権による「相互関税」の対象から外れたことを受け、米国への報復関税を見送る意向を示しつつも、報復関税実施の可能性を排除はできないと述べた。
米政府は先に、メキシコからの鉄鋼、アルミニウム、自動車の輸入に加え、自由貿易協定(USMCA)を順守していない品目に25%の関税を課している。
シェインバウム大統領は鉄鋼とアルミニウムに25%の報復関税を課せば「メキシコの価格が上昇するだろう。報復関税の可能性を排除はしないが、それよりも対話を続けたい」と語った。
(工場を移転する予定はない)
シェインバウム大統領は現在、「メキシコの自動車工場のほとんどの工場長は、工場を移転する予定はないと述べている。自動車メーカーは状況が安定するのを待っている」と述べた。また経済大臣が今週米国のラトニック商務長官と会談する予定すると付け加えた。
(関税の傷浅いメキシコ、中国・ベトナムより優位に)
USMCA協定でトランプ大統領による関税措置でも免除部分もあるメキシコ。それが水準は低いがメキシコ株価をプラス圏に留めている。「新たな関税はメキシコの競争力を高めるものだ」と米国とメキシコの国境沿いで十数カ所の工場を運営する米ニアショア・カンパニーのCEO、ヘンリクセン氏は述べた。
生産や供給の拠点を米国に近い地域に移転するいわゆる「ニアショアリング」を検討する企業にとってメキシコは依然格好の場所であり、トランプ氏の新たな関税政策でも当面はメキシコのそうした地位に変化はないとの見方もある。