ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「関税賦課の結果は直ぐに出ない、長期に渡る不確実性とドル不安か」

ドル円=141-146、ユーロ円=161-166、ユーロドル=1.11-1.16

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨3位(2位)、株価16位(19位)、貿易赤字縮小で円高。日銀総裁は今週講演」
(円高株安の流れは)
円は依然、年間3位。スイス・ユーロと3強といって良いだろう。一方株は日経平均が年初来4.84%安、最弱からは脱出し19市場中16位。独DAXの20.53%高、スイスSMIの5.4高に引き離される。日本は円高株安という流れがある。10年国債利回りは1.505%で年初来の高値圏。

(貿易需給。赤字さらに縮小も円高要因)
今年は外貨投信残高の減少と貿易赤字の減少が円高を招いている。ここ5年の1-4月の貿易統計は以下の通り。原油価格下落につれて貿易黒字になる月が出てきている。貿易赤字が縮小している。

(日米貿易交渉は難航か) 
赤沢経済再生相は、ベッセント財務長官とラトニック商務長官と会談、「率直かつ建設的な」協議を行ったとの見解を示した。
米財務省は「関税や非関税措置への対応のほか、投資拡大、経済的な安全保障やその他の共通の関心事項での協力の重要性を強調した」とした。
赤沢氏は自動車関税について「米側も強い関心がある」としたうえで、自動車や鉄鋼、アルミなど一連の関税措置について「日本は即刻見直しがかなわないなら合意は困難というポジションだ」と述べた。

(日銀総裁、利上げ検討。ただ関税措置の不確実性高い。今週も講演)
植田日銀総裁は、トランプ政権による関税措置の不確実性が極めて高いと指摘したうえで、今後の追加利上げは慎重に判断するべきだという考えを改めて示した。
国内の物価情勢の現状について「再び上昇している」と述べ、主にコメなど食料品の価格上昇が影響していると指摘した。
そのうえで、今後の金融政策については経済・物価情勢が日銀の見通しに沿って推移すれば利上げを検討するというこれまでの方針を重ねて示した。
 6月3日に植田日銀総裁は内外情勢調査会で講演する。

(マイナス成長、コメ価格高騰と利上げ)
マイナス成長下で日銀は利上げできるのだろうか。金利を上げてもコメ価格は下落しなかった。今暫く農水相の需給政策も見守りたいものだ

(日本国債格下げと円相場)
1998年の格下げ以来、格下げは円安方向へ働かず、超円高に推移してきた過去がある。
詳細は今週の朝の動画にて。

*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)14位(14位)、関税賦課の結果は直ぐに出ない、長期に渡る不確実性、ドル不安」
(弱いドル続く。為替も株も欧州勢に大きく引き離される)
ドルは先週こそ最強であったが、5月月間は10位、年間では11位と弱い。株価は漸くフラットに戻って来た。ただ20%超えも出てきた欧州株との差は大きい。10年国利回りは4.397%。

(相変わらず、関税の出し入れで前に進まず)
5月は米英、米中の貿易交渉の合意からスタートするも、ムーディーズが米国をAAAの地位から引き下げた頃から様子がおかしくなり、EUへの50%関税賦課(後に7月9日まで延長へ)やアップルへの25%関税、先週末は鉄鋼・アルミに50%関税賦課発言も出て、リスク選好・リスク回避のくり返しとなり前に進すまない。

(関税賦課の結果は直ぐに出るものではない)
まだ関税で合意した国は僅かだ。合意しても「ウインウイン」になるわけでもない。関税は輸入者が払うのだが、それを消費者に値上げで転嫁するのか不透明だ。例えば関税を賦課された鉄や、あるいは米国の高い労働を賦課された鉄で作った自動車が今まで通り売れるのかどうかわからない。米国内に工場を建設するのにも時間がかかる。1年ではっきりした結果が出るわけでもないだろう。次期政権もトランプ大統領的な政策をとるかどうか不明なのに工場を米国に移せない。
 また米国の財政赤字補填のために関税収入を増加させる政策は極めてつながりのない不安定なものとなるだろう。

(GDP、CPIナウ、GSCPIは)
*アトランタ2QのGDPナウは3.8%で前回の2.2%から上昇。前期の純輸出がマイナス0.64から1.45に回復した。かけこみ輸入が減少した。
*クリーブランドCPIナウは2.4%、コアは2.84%でインフレ加速の兆候はない。
*サプライチェーンインデックス(GSCPI)はマイナス0.29でこれも落ち着いている。

 まだ何もトランプ関税で起きてはいないということだろう。まだ関税率も決まっていないからだ。

(5月消費者信頼感指数は改善したが)
5月消費者信頼感指数は急回復し、4年ぶりの大幅上昇となった。関税の一時停止を背景に、景気や労働市場の見通しが改善した。
5月は12.3ポイント上昇の98となった。関税引き上げさえ譲歩すればこいなるのだが、この後は再び逆行している。

(今週は5月雇用統計、ISM製造業・非製造業)
今週は5月雇用統計、ISM製造業・非製造業の発表がある。非農業部門児湯者数は4月の17.7万人増から13.0万人に減少の予想だが、DOGEで解雇された公務員を如何にカウントするかが焦点。割増給与付与を雇用期間とみなすかどうか。ISMは製造業が前月の48.7から49.3へ改善する予想、非製造業は前月の51.6から52.0へ改善する予想

(中国問題もこじれる)
*トランプ大統領は「中国は米国との合意に完全に違反した。相互に関税率を引き下げる米国との合意のほか、重要鉱物の取引に関する合意にも違反した」と主張し、中国に対し厳しい措置を取る可能性を示
唆した。

*ヘグセス米国防長官は、中国による台湾の武力統一は「壊滅的な結果を招く」と警告した。台湾有事への軍事介入も示唆した。

*ユーロ「通貨2位(3位)、株価2位(2位)DAX)、6月5日にECB理事会と米独首脳会談。不確実性の下、ユーロへの資金シフト続く」
(0.25%利下げか)
 ECBは6月5日に利下げを決定することが確実視されている。2024年6月に利下げを開始して以降、据え置き決定を挟んだ後、6会合連続で中銀預金金利を引き下げており、現在は2.25%。最近の指標によるとインフレ率は過去数カ月、中銀の2%目標をやや上回る水準で推移している。

(米独首脳会議)
独政府はメルツ首相が6月5日に米ホワイトハウスでトランプ大統領と会談すると発表した。対面での会談は初めて。ロシアが侵攻を続けるウクライナの和平交渉や中東情勢、関税交渉などが主な議題となる。独にとって米国は最大の貿易相手国。トランプ氏は、独を含むEUからの輸入品に対する50%の関税措置を7月9日に発動するとしている。

(独消費者物価2.1%、今週はユーロ圏の消費者物価)
5月の独消費者物価は、前年比2.1%上昇し、前月の2.2%から鈍化、ECBの目標に一歩迫った。 コア指数は2.8%上昇で前月の2.9%から若干鈍化したが、依然として高水準にある。
ECBが来週利下げする根拠が強まった一方、経済の混乱と高止まりするコアインフレが持続的な回復への期待に影を落とす可能性がある。
米国の関税政策によりドイツとユーロ圏の経済見通しは依然として暗く景気へのリスクは高いと指摘。国内需要を強化するため金融政策の緩和を求める声が強い。

*ポンド「通貨4位(5位)、株価8位(8位)、米英貿易交渉合意とIMF成長見通し改善で5月は3位」
(5月間3位と好調)
 5月のポンドはやや堅調だ。先週は年初来でメキシコペソを抜いて4位に浮上した。月初の米英関税交渉の合意やIMFの成長見通し上方修正、小売売上の堅調さが影響している。
FT株価指数は年初来7.33%高。10年国債利回りは4.65%で先進国の中では一番高い。

(IMFは成長率見通しを上方修正)
IMFは2025年の英経済成長率見通しを1.2%と、4月時点の1.1%から上方修正した。リーブス英財務相に対し、公的債務削減の計画を堅持するよう求めた。

26年の成長率は、米関税政策による悪影響にもかかわらず1.4%に上昇すると予想。4月予想から変わず。それでも、歴史的基準から見ると依然低い水準にあると強調。「世界的な不確実性の高さや金融市場の不安定さ、日常的な支出抑制の難しさから、英国の財政戦略の成功には重大なリスクが伴う」と指摘した。
リーブス財務相は、6月11日に今後3年間の支出見直しで各政府省庁の予算を発表する。

(ベイリー英中銀総裁、段階的で慎重)
前回の政策決定会合は0.25%利上げとなったが、据え置きや0.5%利上げの意見もあった。ベイリー英中銀総裁は、国際貿易を巡る不確実性や国内物価への影響を踏まえると、今後の利下げに対する「段階的で慎重な」アプローチが正当化されると述べた。
「現時点でそうしたことを読み取るのは非常に難しい。だからこそ、われわれは『段階的で慎重な』という表現を使い続けている」と述べた。

ベイリー総裁は4月の物価上昇がどこまで季節要因によるものかは分からないとし、6月の金融政策委員会までさらに1カ月分のデータを入手できると述べた。
「変動が激しくない項目は引き続き緩やかに鈍化しているが、ペースは非常に遅い」と指摘。食品価格の上昇率が加速していることについては、英国に限った現象ではないが、国民の物価認識に「非常に大きな」影響を与えると述べた。

*豪ドル「通貨9位(8位)、株価12位(12位)、今週は1Q・GDPの発表。RBA議事要旨にも注意」
(ドルより強いが円より弱い)
不確実性を生む米国のドルよりは強いが、リスク回避で選好されるスイス・ユーロ・円程強くない展開が続いている。豪ドルは年間9位で対円4.76%安、株価指数は2.85%高。10年国債利回りは4.28%。

(今週は1Q・GDPの発表。RBA議事要旨にも注意)
今週は1Q・GDPの発表。前期比で0.4%増、前年比で1.5%増の予想。前期はそれぞれ0.6%増、1.3%増。また前回ややハト派的な会合となったRBAの政策金利決定の議事要旨が公表される。

(弱い小売売上で追加利下げか)
4月の小売売上高は前月比0.1%減と、予想の0.3%増を大きく下回った。温暖な気候で冬物衣料の販売が落ち込んだほか、百貨店も値引きセールがなく売り上げが低迷した。消費者の慎重な姿勢が改めて浮き彫りになった。市場では次回7月も追加利下げが行われるとの見方が強まっている。

4月消費者物価は前年比2.4%上昇した。予想の2.3%を上回った。保険料と休暇費用の上昇がガソリン価格の下落を相殺した。これからもインフレの上振れリスクがほぼ消え、世界的な政策の不確実性が高まったままであることから、追加利下げを実施する可能性が高いとされている。

(対中貿易に楽観的)
ハウザーRBA副総裁は、国内の輸出業者が中国での事業見通しに楽観的だと指摘した。米国の関税引き上げによって中国市場での競争力が高まる可能性があることが背景。
豪の最大の対中輸出品目である鉄鋼・鉄鉱石セクターの企業は、短期的には豪産鉄鉱石の規模とコスト面での他の産地に対する優位性を脅かすものはほとんどないとみている。

*NZドル「通貨6位(6位)、株価17位(16位)、NZドルはまずまず。株の弱さが経済の実態を表している」
(NZドルはまずまず、株価は弱い)
NZドルは年間6位と弱くはないのだが、株価指数は年初来17位の5.28%安。株価の方が経済の実態を表しているのだろう。それゆえに利下げを行った。NZドルがやや強いのはドルの弱さを反映している。
10年国債利回りは4.58%。

(政策金利を0.25%引き下げた)
NZ中銀は政策金利を0.25%引き下げ3.25%とした。景気を下支えするほか、世界的な貿易摩擦の影響を和らげる。利下げは6会合連続。メンバー5人のうち1人が据え置きを主張した。
中銀は政策金利が今年4Qに2.92%、来年1Qに2.85%になると予想。

声明は「米国の関税引き上げは、NZの輸出品に対する世界の需要、特にアジアの需要の減少につながり、国内経済の成長を圧迫するだろう。政策を巡る世界的な不確実性の高まりはNZの企業投資と消費に重くのしかかると予想される」と述べた。

ホークスビー中銀総裁は「次回会合での次のステップは、状況の進展、特にそれが中期的なインフレ圧力に何を意味するかによって決まる」と述べた。
市場はインフレ率の低下により年内に少なくともあと1回の利下げ余地があると予想。インフレ率は2.5%で、目標レンジ(1-3%)内にあるが、中銀は3Qには2.7%に上昇すると予想している。

(指標は悪化)
5月企業信頼感指数は36.6で前月の49.3から悪化、5月消費者信頼感指数も92.9と前月の98.3から悪化した。