【金融機関の種類別】不動産投資ローンの金利相場
不動産投資を始める際に組む不動産投資ローンは、大まかに2つに分類されます。パッケージ化されたローンと、オーダーメイド型のローン(プロパーローン)です。オーダーメイド型のローンは個々の状況により異なるため、この記事では主にパッケージ化された不動産投資ローン(マンション・アパートローン)を念頭に置いています。
不動産投資ローン(一棟アパート用ローンはアパートローン)は、同じ金融機関であっても、不動産投資会社の提携ローンかどうか、また借り手の諸条件などによって、金利相場が大きく異なります。また多くの場合、実際の金利条件は公開されていません。
各金融機関が公表している情報を主として、金融機関の金利相場を見ていきます。
| 金融機関の種類 | 金利相場(目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| 都市銀行 | 1〜2%台 |
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| 地方銀行など | 1〜4%台 |
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| ネット銀行 | 1〜4%台 |
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| ノンバンク | 3〜5%台 |
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| 信用金庫・信用組合 | 2〜3%台 |
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※2025年9月時点の情報
1. 都市銀行【1〜2%台】
都市銀行の不動産投資ローンは、金利が比較的低く設定されており、変動金利で年1%台後半~2%台前半が目安です。アパートローンは不動産投資ローンより高く設定されています。
審査基準が非常に厳しく、年収や勤続年数、土地所有の有無、頭金の額などで高い水準を求められる傾向にあります。
2. 地方銀行など【1〜4%台】
地方銀行や信託銀行などの不動産投資ローン金利は年1~4%程度と幅広く、都市銀行よりも高いケースが多いです。
資産家であれば年1~2%台でも借りられて、金利面で有利なケースがあります。
3. ネット銀行【1〜4%台】
ネット銀行の不動産投資ローンの金利は、年1〜4%程度と幅広いです。店舗運営コストが抑えられているぶん、競争力のある金利を提供可能な場合もあります。
インターネット上で手続きが完結するため利便性が高い点はメリットです。
4. ノンバンク【3〜5%台】
ノンバンクの不動産投資ローンは、金利が年3~5%程度です。しかし、審査スピードが早く、ほかの金融機関では融資が難しい物件でも対応してもらえる可能性があります。
5. 信用金庫・信用組合【2〜3%台】
信用金庫や信用組合の不動産投資ローン金利は年2%台後半が多く、地方銀行とあまり変わりません。地域に根ざした金融機関として、地域住民や中小企業を支援するために設立された非営利の金融機関で、地域経済の発展が目的です。
融資条件は金庫によって異なり、対象物件のエリアが限定されるケースもありますが、融資審査は地方銀行よりも柔軟な場合があります。
提携ローンの有無で金利は変わる
以上は、主に公開されている情報についての大まかな目安です。
金利が高い傾向にある金融機関でも、不動産投資会社と提携した「提携ローン」があれば、優遇金利が適用されて、低金利で借入れが可能になるケースもあります。
不動産投資ローンの金利の違いによるシミュレーション
不動産投資ローンにおいて、金利が1%違うと、月々の返済額や総返済額には大きな差が生まれます。ここでは、具体的なシミュレーションをとおして、どのような差が生まれるのか見てみましょう。
【シミュレーション条件】
- 借入金額:2,000万円
- 借入期間:35年
【金利2%の場合】
- 月々の支払い:66,253円
- 総返済額:27,826,073円
【金利3%の場合】
- 月々の支払い:76,970円
- 総返済額:32,327,416円
このシミュレーションからわかるように、金利1%の違いで月々の返済額が約1万円、総返済額では約450万円もの差が生じます。低金利で借入れできるかどうかは、不動産投資の収益性に直結する重要な要素であるとわかるでしょう。
不動産投資ローンの金利のタイプ
不動産投資ローンの金利のタイプには、以下の3つがあります。
| 金利の種類 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 当初固定金利 | 固定期間中の返済額が一定で計画が立てやすい |
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| 全期間固定金利 | 金利変動リスクがなく、総返済額が確定する | 変動金利や当初固定金利より金利水準が高い |
| 変動金利 | 現在の金利水準がもっとも低い ※2025年9月時点 |
金利上昇時に返済額が増加するリスクがある |
それぞれのメリットとデメリットを理解し、自身の投資戦略に合った金利タイプを選ぶことが重要です。それぞれ詳しく解説します。
1. 当初固定金利
当初固定金利は、借入当初の一定期間(通常3年、5年、10年など)だけ金利が固定される商品です。固定期間中は金利変動リスクがなく、毎月の返済額が一定のため資金計画を立てやすいのがメリットです。
固定期間終了後は変動金利に移行するのが一般的で、その時点での金利水準により返済額が変わります。当初の金利は変動金利より高めに設定されていますが、全期間固定金利よりは低く抑えられています。また、金利上昇局面で固定期間が終了する可能性も考えられるので、固定期間終了後のリスクも考慮する必要があるでしょう。
2. 全期間固定金利
全期間固定金利は、借入れから完済まで金利が変わらない商品です。金利変動リスクが一切なく、借入時点で総返済額が確定するため、もっとも安全性の高い商品といえます。
長期的な資金計画が立てやすく、金利上昇局面では大きなメリットを享受できます。ただし、変動金利や当初固定金利と比較して金利水準が高く設定されており、金利下降局面が訪れると、全期間固定がデメリットに感じるでしょう。
3. 変動金利
変動金利は市場金利に連動して定期的に見直される商品で、2025年9月現在もっとも金利水準が低く設定されており、金利下降局面では返済負担が軽減されます。一方で、金利上昇時には返済額が増加するリスクがあるのも、変動金利の大きな特徴の一つです。
金利見直しは半年ごとに行われ、返済額の変更は5年ごとという「5年ルール」が適用されます。また、急激な金利上昇を抑制するため、返済額の増加幅は前回の1.25倍(125%)までという上限が設けられる「125%ルール」があるのが一般的です。
ただ、不動産投資ローンにおいては、5年と125%のルールの適用の有無は金融機関によって異なります。「変動金利で借入れする際は、契約前に必ず金融機関に確認し、どのようなルールが適用されるのか」を把握してからローンを選ぶことが大切です。
不動産投資ローンをなるべく低金利で借りる3つのポイント
不動産投資を成功させるために欠かせないのが、いかに低金利でローンを組めるかです。金融機関ごとで審査基準もローン商品もさまざまですが、なるべく低金利で借入れを実現するためには、以下3つのポイントを押さえておきましょう。
- 個人の信用度を高める
- 複数の金融機関や不動産会社に相談する
- 資産価値の高い不動産を選ぶ
それぞれ詳しく解説します。
1. 個人の信用度を高める
金融機関からの信用度を高めることは、低金利での借入れを実現する重要な要素です。たとえば、個人の信用度の向上には、以下のような方法が挙げられます。
- 年収の増加
- 勤続年数の延長
- 安定した職業への転職
- 既存の借入れの完済
- クレジット利用履歴の改善 など
年収に対してどれくらい貸せるのか、安定的に返済を行えるのかという点は、金融機関が注目するポイントです。また、カーローンやカードローンなど、現在の借入状況によっても新たに借りられる額が変わるので、完済しておくことで高評価につながる可能性があります。さらに、自己資金を増やして融資比率を下げ、金融機関のリスクを軽減することも重要なポイントとなります。
2. 複数の金融機関に相談する
複数の金融機関に相談することで、自身の属性や物件に合った有利な条件を見つけられる可能性が高まります。銀行によって審査基準や金利設定が異なるため、1社だけでは最適な条件を見逃す可能性があるからです。一つの金融機関に限定せず、複数の金融機関に相談することで条件に違いあるかどうかがわかります。
また前述のとおり、不動産投資会社によっては特定の金融機関と組んだ「提携ローン」があります。提携ローンでは、通常より優遇された条件で融資を受けられるなど、個人で金融機関に相談するよりも低金利でローンが組める可能性もあります。不動産会社に相談し、物件情報にあわせてローンの話を聞いてみるのもおすすめです。
3. 資産価値の高い不動産を選ぶ
資産価値の高い不動産を選ぶことで、金融機関からの評価が向上し、低金利での借入れが可能になります。以下のような特徴のある物件は、担保価値が高く評価される傾向にあります。
- 立地条件の良い物件
- 築年数が浅い物件
- 管理状態の良い物件 など
また、将来的な資産価値の維持・向上が期待できる物件は、金融機関にとっても貸し倒れリスクが低いと判断されるため、好条件での融資につながりやすいです。さらに、賃貸需要が安定している地域の物件や、交通アクセスの良い物件を選ぶことで、収益性と担保価値の両面で金融機関の信頼を得られ、低金利での融資を受けられる可能性もあります。
初心者が陥りがちな不動産投資ローンを選ぶ際の失敗
不動産投資ローンを選ぶ際に、初心者が陥りがちな失敗パターンとして、以下の2つが挙げられます。
- 変動金利のリスクを理解せずに選択してしまう
- 目先の金利だけで判断してしまう
ローン選びで後悔しないためにも確認しておくと安心です。
1. 変動金利のリスクを理解せずに選択してしまう
変動金利は固定金利と比較して金利が低く、さらに低金利の環境が長年続いているため、どうしても魅力的に映りがちです。しかし「金利が低いから」という理由だけで安易に選択してしまうと、あとで後悔するかもしれません。
変動金利を選択する際は、将来の金利上昇リスクを十分に理解しておく必要があります。
金利が上昇すると返済額が大幅に増加する可能性があり、想定していたキャッシュフローが悪化することが考えられるでしょう。変動金利を選択する際は、繰上返済の準備やほかの収益源の確保など、金利上昇時の対応策もあわせて検討することが重要です。
2. 目先の金利だけで判断してしまう
不動産投資初心者のなかには、ローンを選ぶ際に提示された金利の数字だけに注目してしまい、総合的に判断できず失敗するケースもあります。たしかに金利が低いことは重要ですが、金利以外にも事務手数料や保証料、団体信用生命保険料などの費用がかかるため、これらを含めた総返済額で比較することが大切です。
また、金融機関との今後の取引関係や、将来的な追加融資の可能性なども考慮して、長期的な視野で判断することが欠かせません。
不動産投資のローン選びで失敗しないポイント
不動産投資のローン選びで失敗しないためには、複数の金融機関に相談することも重要ですが、それ以上に不動産投資会社への相談が効率的で効果的かもしれません。
不動産投資に精通している投資会社の担当者であれば、あなたの年収や資産背景などといった属性、そして投資目標に最適な金融機関を的確に提案できます。さらに、個人では難しい優遇金利の交渉や、審査に必要な書類準備のサポートなども代行してくれる可能性があります。
不動産会社が提携している金融機関であれば、金利が高い傾向にあるネット銀行でも低金利で借りられるケースも少なくありません。専門的な知識と経験を持つプロに相談することで、より有利な条件でローンを組めて、リスクを抑えた不動産投資を実現できるでしょう。
不動産投資ローンの金利は専門家に相談しよう
不動産投資ローンの金利は、金融機関の種類や個人の信用度、物件の資産価値によって大きく変動します。低金利で借入れることは、不動産投資の収益性を最大化し、長期的な安定経営を実現するために不可欠です。
そのためには、複数の金融機関の金利相場を比較検討し、自身の信用度を高めたり資産価値の高い物件を選んだりしましょう。しかし、これから不動産投資を始める方におすすめしたいのは、不動産投資会社への相談です。
不動産投資会社であれば、最新の金利情報や金融機関との提携状況に詳しく、あなたの状況に合わせた最適なローン戦略を提案してくれます。一人で悩まず、信頼できる専門家のサポートを得て不動産投資ローンを選ぶのが賢明です。
この記事を書いた人