テックタッチ株式会社

国内シェアNo.1(※1)を誇るAI型デジタルアダプションプラットフォーム(※2)の「テックタッチ」を提供するテックタッチ株式会社。代表取締役 CEOの井無田仲氏は、金融業界でのシステムユーザーとしての課題意識と、IT企業でのアプリ事業責任者として「誰もが使いやすいシステムを実現することの難しさ」を肌で感じた経験から起業した。エンタープライズや官公庁のDX推進を支え、800万人以上のユーザーに利用される同社は、日本市場に適合した戦略と徹底した顧客伴走支援で急成長を遂げている。その経営戦略の変遷、市場動向、そしてAIが切り拓く未来の構想に迫る。

※1 ※1 出典:株式会社アイ・ティ・アール「ITR Market View:コラボレーション/ナレッジ共有市場2025」デジタル・アダプション・プラットフォーム市場:ベンダー別売上金額シェア(2021~2025年度予測)

※2 システムを誰でも自律的に使いこなせる環境を提供し、導入したシステムが企業内で定着できるように「誤申請」「差し戻し」「利活用」の課題を解決できるソリューション。略称はDAP。
井無田 仲(いむた なか)──代表取締役CEO
1980年、愛知県生まれ。2003年、慶應義塾大学法学部卒業。新生銀行(当時)、ドイツ証券などで投資銀行業務に従事、上場企業の資金調達/M&A案件を数多く手がける。その後入社したユナイテッド社では、アプリ事業責任者、米国子会社代表としてアプリサービスのグロース/スケールを経験。フリーランスを経て、2018年3月、テックタッチを日比野淳氏と共同創業。コロンビア大学MBA修了。
テックタッチ株式会社
AI型デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)「テックタッチ」を提供し、国内シェアNo.1を誇る。800万人超に利用され、大手企業や官公庁などに多数導入。また、定性データを高精度で分析するデータ戦略AIエージェント「AI Central Voice」も提供開始。ユーザーのシステムやAI活用支援により、テクノロジーを通じて企業のポテンシャルを最大限に引き出せるよう、あらゆる業界を支援する。

企業サイト:https://techtouch.jp/

ユーザーと開発者の橋渡し役として起業

── もともと金融業界での経験から起業されたとか。

井無田氏(以下、敬称略) テックタッチは2018年3月に設立されました。もともと金融業界でシステムの使いづらさを感じ、その後IT企業でアプリ事業に携わった経験から、ユーザーと開発者の橋渡し役になりたいという思いで起業しました。

当初は開発者向けのソリューションを考えていましたが、マーケットリサーチの結果、エンタープライズ(大規模な法人)のDX推進における課題に注目しました。エンドユーザーがよりシステムを使いやすくなるよう、導入から運用までを支援する事業に方向転換しました。

この事業モデルは比較的早い段階で確立し、DAP領域において、国内で圧倒的なマーケットシェアを獲得しています。現在は、システム開発会社や公共機関にも事業を拡大しています。

日本市場への最適化と伴走型支援が強み

── 成長を支える大きな要因は何でしょうか。

井無田 日本市場に適合したビジネス展開が大きな要因だと考えています。一つは、日本のマーケットではシステムエンジニアなどのテクノロジー人材がシステム開発・運用を担うSIerに偏っており、事業会社内には少ないという特徴があります。

DAP「テックタッチ」は、システムを使いやすくするためのナビゲーションを構築できますが、業務を深く理解している人がガイドを作るほうが良い。

しかし、業務部門に近いところにエンジニアがほとんどいないのが日本企業の実情です。そこで、日本企業の業務を知る人が、ユーザーにどう使ってほしいかを自らガイドとして表現できるよう、システムのUIを誰でも簡単に作れるようにしました。

もう一つは、お客様がサービスを使いこなせるように支援するカスタマーサクセスチームの存在です。私たちはITコンサルティング的な視点で、課題発見から要件定義、実装までを伴走支援しています。お客様がサービスを使いこなせているかを支援する体制をしっかり構築しているため、お客様の課題に対する解像度が非常に高まります。

外資系の同業他社はCS機能をパートナーに任せがちですが、私たちはこれをインハウス(自社内)で持っていることが大きな強みです。これにより、生産領域や人事領域、調達領域など、各システムユーザーの課題に対する専門知識がどんどん蓄積され、それが差別化につながっています。

倍々ゲームで成長する市場とAIによる新たな機会

── 市場の動向や成長性、その中での競争優位性についてお聞かせください。

井無田 市場の成長性については、調査レポートでは年間50%成長(※3)が見込まれていますが、私たち自身の売上成長は常に倍々ゲームで推移しています。当社のマーケットシェアと合わせると、この倍々ゲームの成長が市場の実態に近いと感じています。

エンタープライズ企業への導入はは今まさに拡大フェーズにあり、大きな成長ポテンシャルが残されています。足元の市場成長性が非常に高いことに加え、最近ではAIに関するニーズも高まっています。これまではDXのためにソリューションを導入し、それを使いこなすことがテーマでしたが、これからは蓄積されたデータをAIで分析・活用し、新たな価値を生み出すことへのニーズが高まっています。これらのニーズをしっかり取り込むことで、成長を加速できると考えています。

── 今後、特に注力していきたい施策はありますか。

井無田 私たちはマーケティングをきわめて重視しており、より多くの商談機会と認知獲得を目指しています。マーケティングへの注力は、前年比1.5倍ほどのペースで進めています。エンタープライズ領域では、大手企業向けの展示会やカンファレンス、AI領域ではウェブ広告、オウンドメディア、事例発信などを軸に展開します。

当社の特徴として、公共領域、特に官公庁においては市場を創出している段階です。そのため、連携協定などを通じて「テックタッチが自治体に導入されるのは当たり前」という状態を確立し、DAPが自治体にもたらす価値を柱として打ち立てていきたいと考えています。公共領域は事例主義なので、事例を積み重ねていくことが重要です。

※3 株式会社アイ・ティ・アール(以下、ITR)の市場調査レポート「ITR Market View:コラボレーション/ナレッジ共有市場2025」によると、デジタル・アダプション・プラットフォーム市場における、2024年~2029年度の年平均成長率は、49.9%。

「15年に一度の大変革期」を乗り切るために

── 今後の商品・サービスについて、どのようなブラッシュアップや改善を考えていますか。

井無田 現在のAI技術革新は、15年に一度の大変革期だと捉えています。振り返ると、1995年頃のインターネット、2000年代のスマートフォン登場に匹敵するインパクトです。こうした変革期が落ち着く頃には、毎回メインストリーム企業の世代交代が起きてきました。今まさにその転換期にあり、私たちもこの波に乗れるかが非常に重要です。

そのため、基本的には全ての新規事業や新規機能開発をAIありきで考えています。これまでは「テクノロジーを使いこなす、システムを誰でも簡単に使えるようにする」ことを掲げていましたが、今後はビジョン・ミッションのアップデートをかけ、対象をAIにまで広げていきたいと考えています。AIが切り開いた世界は、ソフトウェアを使いこなすだけでなく、自分流にアプリケーションソフトウェアを作っていくことも可能にします。

現状、エンタープライズのお客様が自社でAIを活用したアプリケーションを開発するにはまだハードルがあります。このギャップを埋めるため、エンタープライズや自治体のAI利活用を支援していくことが、今後5年、10年のテーマになると考えています。

AIが拓く未来と組織・事業拡大の戦略

── 組織面の強みと課題、今後の拡大計画についてお聞かせください。

井無田 私たちは2018年からエンタープライズビジネスを手掛けてきたため、スタートアップ業界における6年間の知見と組織構築力は大きな強みです。デマンドジェネレーション(需要の創出)からカスタマーサクセスまで、エンタープライズが求めるレベルで遂行できる組織を作るには6年かかりました。これに追いつけるスタートアップは少ないと思います。

テックタッチが手掛けるDAP事業領域は、マーケットが非常に大きいと考えています。エンタープライズへの市場浸透率はまだ初期段階ですが、これは社数ベースの話です。1社の中でも経理部門だけでなく、営業、人事など10部門でニーズがあることを考えると、実際の浸透率はさらに低いと言えるでしょう。

このエンタープライズ、そして今力を入れている自治体、さらに先ほどお伝えしたミッドマーケット(比較的規模の大きな中堅企業層)だけでも、既存ビジネスの拡大余地はかなり大きく、将来性を感じています。

二つ目に、現在営業利益率が15%から20%程度出てきているため、これをうまく再投資し、次の新しいビジネスの柱を作っていきたいと考えています。既存の顧客層がいるため、新しい事業も立ち上げやすいでしょう。

そして、AIがマーケットを完全に変えたことで、新しい機会が非常にたくさん生まれています。そこをどんどん作っていきたいです。

今後はM&Aの機会も増えると考えています。現在、当社は投資家にとっても魅力的に見ていただけるフェーズにあるでしょう。比較的早いタイミングでIPOを行い、そこから資金調達やM&Aを加速させ、より一層大きな成長を遂げていきたいと考えています。

氏名
井無田 仲(いむた なか)
社名
テックタッチ株式会社
役職
代表取締役CEO

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