リスクヘッジとは? 資産を守るための具体的な手法と設定を徹底解説

投資の世界では、常に利益を出し続けることと同じくらい、いかに損失を抑えるかが重要です。特に市場が不安定な時期や下落相場では、それまで積み上げてきた資産が一瞬で目減りしてしまう恐怖があります。

「自分の大切な資産を、どうすれば下落相場から守れるのだろう?」

「ポートフォリオの損失を最小限に抑える、具体的なリスクヘッジ戦略が知りたい」

本記事では、投資におけるリスクヘッジの基本的な考え方から、個人投資家が今すぐ実践できる具体的な手法や設定、さらには実行する上での注意点までを網羅的に解説します。

この記事でわかること
  • 投資におけるリスクヘッジの基本的な考え方と、リスク分散との明確な違い
  • アセットアロケーションの見直しや逆指値注文など、個人投資家が実践できる具体的なリスクヘッジの手法
  • リターンを抑制する可能性やコストなど、リスクヘッジを実行する上での注意点

目次

  1. 投資におけるリスクヘッジとは? リスク分散との違い
  2. 個人投資家が実践できるリスクヘッジの具体的手法
  3. リスクヘッジを行う上での注意点
  4. まとめ

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投資におけるリスクヘッジとは? リスク分散との違い

投資ポートフォリオを守る戦略を考える上で、まずリスクヘッジという概念を正しく理解する必要があります。似た言葉にリスク分散がありますが、これらは似て非なるものです。この違いを理解することが、効果的な資産防衛の第一歩となります。

資産を守るための「保険」という考え方

投資におけるリスクヘッジとは、起こり得る特定のリスクによる損失を相殺する、または最小限に抑えるための具体的な手段を指します。

最も分かりやすい例えは「保険」です。私たちは、火災や自動車事故といった「万が一」に備えて保険に加入します。保険料というコストを支払うことで、もし事故が起きてしまっても、保険金によって経済的な損失をカバーできるわけです。

投資のリスクヘッジもこれと全く同じです。例えば、「株価が暴落するかもしれない」というリスクに対し、「信用取引で空売りポジションを持つ」「プット・オプション(売る権利)を買う」といった行動がリスクヘッジにあたります。実際に株価が暴落した際に、保有している株式の損失を、ヘッジ手段による利益で相殺できるのです。

リスクヘッジは、将来の不確実性に対して備えるための、積極的な守りの戦略と言えます。

リスクヘッジとリスク分散の違い

リスクヘッジと混同されがちなのがリスク分散です。これは「卵は一つのカゴに盛るな」という格言で知られる、最も基本的かつ重要な投資の原則です。

リスク分散とは、投資先を一つに集中させず、株式、債券、不動産など複数の資産や、異なる地域、異なる業種に分けて投資することです。

ある資産が値下がりしても、他の資産が値上がりしたり、値下がり幅が小さかったりすることで、ポートフォリオ全体のリスクを緩やかにするのが目的です。

項目 リスク分散 (Diversification) リスクヘッジ (Hedge)
目的 ポートフォリオ全体のリスクを平準化・低減する 特定のリスクによる損失を相殺・最小化する
例え 複数のカゴに卵を分ける(カゴが落ちるリスクは残る) カゴが落ちた時用のクッションを用意する(保険)
主な手段 アセットアロケーション(資産分散の配分) 空売り、オプション取引、インバース型ETFなど
特徴 常に実行すべき基本戦略 特定の局面で実行する戦略

リスク分散は「そもそも大きなケガをしにくい体質(ポートフォリオ)を作る」こと、リスクヘッジは「ケガをしそうな時に備えてプロテクターを装着する」こと、とイメージすると分かりやすいでしょう。

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個人投資家が実践できるリスクヘッジの具体的手法

リスクヘッジには、投資初心者でもすぐに取り入れられる基本的なものから、専門知識を要する高度なテクニックまで様々です。ここでは、個人投資家が実践可能で比較的簡単な手法をいくつか紹介します。

すべての投資家がやるべきリスクヘッジ

ポートフォリオ全体のリスク耐性を高める、最も基本的で重要な手法です。

・アセットアロケーションの見直し
リスクヘッジの土台となるのが、適切なアセットアロケーションです。一般的に、株式と債券は異なる値動きをするとされています。例えば、景気後退局面で株価が下落する際、投資家は安全資産とされる国債などを買い求めるため、債券価格は上昇する傾向があります。

自分のポートフォリオの「株式:債券:現金」の比率を定期的に見直すこと自体が、強力なリスクヘッジとなります。相場が過熱していると感じたら株式の比率を少し下げて現金や債券の比率を高める、といったリバランスを行うことで、下落相場でのクッション役を果たしてくれます。

・長期・積立・分散投資の徹底
リスク分散の項目とも重なりますが、「長期・積立・分散」という投資の王道は、時間的なリスクヘッジの側面も持っています。

長期: 保有期間を長く持つことで、短期的な価格変動の影響を緩和します。
積立: 投資タイミングを分散(ドル・コスト平均法)することで、高値掴みのリスクを避け、平均取得単価を平準化します。
分散: 投資先を分けることで、特定の資産が暴落した際の影響を限定します。

これらを徹底することは、特定の暴落イベントに対する直接的なヘッジにはなりませんが、長期的に見て資産を守る最も確実な「保険」の一つです。

下落相場での損失を抑えるためのテクニック

相場の変調を感じた時や、保有銘柄の損失を限定したい場合に有効な手法です。

・逆指値注文の設定
これは、保有している株式やその他の資産が、あらかじめ決めた価格に達したら、自動的に成行または指値で売り注文を出す設定です。

例えば、1,000円で購入した株価が下落した場合に備え、「900円になったら売る」という逆指値注文を入れておきます。こうすることで、もし株価が急落して700円や600円になったとしても、自分の損失を「100円(1,000円 - 900円)」に限定することができます(※ただし、急落時には900円よりも不利な価格で約定する可能性もあります)。

感情に左右されず、機械的に損切り(ロスカット)を実行できるため、非常に有効なリスクヘッジ設定です。

・安全資産の比率を高める
市場全体が不安定な「リスクオフ」の局面では、投資家の資金はリスクの高い資産から、より安全とされる資産へと退避する傾向があります。代表的な安全資産は、金(ゴールド)や主要国の国債(主に米国債)です。

金は、インフレヘッジとしてだけでなく、地政学リスクや金融不安が高まると買われる傾向があります。ポートフォリオの一部に金ETFや金関連の投資信託を組み入れておくと、株価下落局面で資産全体の目減りを和らげてくれる効果が期待できます。

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リスクヘッジを行う上での注意点

リスクヘッジは資産を守るために有効な戦略ですが、万能ではありません。実行する際には、メリットだけでなくデメリットや注意点を正しく理解しておく必要があります。

リターンを抑制する可能性がある

リスクヘッジの最大の注意点は、上昇相場におけるリターンを抑制する可能性があることです。

これは「保険」を考えれば当然です。自動車保険に加入しても、事故を起こさなければ保険料は「掛け捨て」になります。リスクヘッジとは、いわば「上昇時の利益の一部を犠牲にして、下落時の損失を防ぐ、または減らすための安心料を支払う行為」であると認識することが重要です。

ヘッジが完璧に機能するとは限らない

リスクヘッジ戦略を組んだからといって、100%完璧に損失を防げるわけではありません。リーマンショックやコロナショックのような歴史的な市場パニックの際は、本来なら逆相関するはずの資産が同時に売られる「全資産現金化」の動きが起きることもあります。想定していたヘッジが機能しないリスクも常にあることを忘れてはいけません。

コストを意識する

すべてのリスクヘッジには、必ず何らかのコストが発生します。

例えば、逆指値注文の設定自体は無料ですが、意図した価格よりも不利な価格で約定するスリッページのリスクがあります。

これらのコストを考慮せずに過度なヘッジを行うと、たとえ相場観が当たっていたとしても、コスト負けしてトータルのリターンを損なってしまう可能性があります。リスクヘッジは「必要な時に、必要な分だけ、コストを意識して」行うことが鉄則です。

まとめ

本記事では、投資ポートフォリオを守るためのリスクヘッジについて、その基本的な考え方から具体的な手法、注意点までを解説しました。

投資で長期的に成功するためには、利益を追求する「攻め」の姿勢と同時に、資産を守る「守り」の戦略が不可欠です。リスクヘッジは、下落相場を生き抜き、次の上昇相場で再びスタートを切るための重要なテクニックです。

まずはご自身のポートフォリオがどのようなリスクにさらされているかを点検し、最も手軽に実行できる「逆指値注文の設定」や「アセットアロケーションの確認」から始めてみてはいかがでしょうか。

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(提供:ACNコラム