年収1000万円の手取りはいくら? 税金の内訳から、資産運用術まで解説

「年収1000万円」と聞くと、どのようなイメージを持ちますか?「お金持ち」「生活に余裕がある」といった姿を想像するかもしれませんが、実際に年収1000万円の人が受け取る「手取り」は、額面通りではありません。

年収1000万円といっても、そこから税金や社会保険料が引かれるため、実際に自由に使える金額は想像より少ないと感じるケースがほとんどです。

この記事では、年収1000万円の実際の手取り額はいくらになるのか、どのような税金・社会保険料がどれくらい引かれているのかを解説します。

この記事でわかること
  • 年収1000万円の実際の手取り額は約720万〜780万円
  • 上位5.4%にあたる年収1000万円層のリアルな生活レベル
  • 税負担を軽減し手取りを増やすための方法

目次

  1. 年収1000万円の手取りは約720万〜780万円
  2. 年収1000万円から天引きされる税金・社会保険料
  3. 【家族構成別】手取り額シミュレーション
  4. 年収1000万円のリアルな生活レベルは?
  5. 年収1000万円の人が手取りを増やす賢い方法
  6. まとめ

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年収1000万円の手取りは約720万〜780万円

いきなり結論からお伝えすると、会社員で年収1000万円の手取り額の目安は、約720万〜780万円です。月額に換算すると、約60万〜65万円となります。

額面の1000万円から、実に220万〜280万円もの金額が引かれている計算になります。想像以上に引かれていると感じた方も多いのではないでしょうか。

この手取り額に幅があるのは、個人の状況によって天引きされる金額(控除額)が異なるためです。なぜ同じ年収1000万円でも手取り額に差が出るのか、その理由と「年収」と「手取り」の基本的な違いについて解説します。

ボーナスの有無や家族構成で手取りは変わる

手取り額が「約720万〜780万円」と幅がある主な理由は、以下の3つです。

・ボーナスの比率
年収1000万円の内訳が「月給60万円+ボーナス280万円」の場合と、「年俸制で月給約83万円(ボーナスなし)」の場合では、社会保険料の計算が若干変わるため、手取り額に影響します。一般的に、ボーナスの比率が高いほうが社会保険料は安くなる傾向があります(ただし上限あり)。

・扶養家族の有無
配偶者や子ども、親などを扶養している場合、「配偶者控除」や「扶養控除」といった所得控除が適用されます。控除額が多いほど、税金(所得税・住民税)の計算元となる「課税所得」が減るため、結果として手取り額が増えます。

・iDeCoやふるさと納税などの利用状況
後述するiDeCo(個人型確定拠出年金)やふるさと納税、生命保険料控除、医療費控除などを活用しているかによっても、控除額が変わり、手取り額(あるいは実質的な可処分所得)は変動します。

このように、年収1000万円の手取りは、その人の給与体系や家族構成、節税への取り組み次第で数十万円単位で変わってくるのです。

年収と手取りの違い

「年収」と「手取り」の違いを正確に理解しておくことは非常に重要です。

・年収
会社から支払われる給与・賞与の総額です。税金や社会保険料が引かれる「前」の金額で、源泉徴収票の「支払金額」欄に記載されているのがこれにあたります。一般的に「年収1000万円」という場合、この額面年収を指します。

・手取り
年収から、所得税、住民税、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料など)が天引きされた後に、実際に自分の銀行口座に振り込まれる金額です。年収1000万円の場合、額面の約72%〜78%が手取りになると覚えておくと良いでしょう。

年収1000万円から天引きされる税金・社会保険料

年収1000万円の手取りが約720万〜780万円になるのは、総額で約220万〜280万円もの「天引き」があるためです。この天引きの内訳は、大きく分けて「税金」と「社会保険料」の2種類です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

所得税:超過累進課税の仕組みと計算方法

所得税は、個人の儲けに対して課される国の税金です。日本の所得税は「超過累進課税」という仕組みを採用しています。

これは、所得が多ければ多いほど、税率が高くなる仕組みです。年収1000万円の場合、給与所得控除や各種控除を引いた後の課税所得金額によりますが、適用される税率は23%または33%の部分が大きくなります。

<所得税の速算表(参考)>

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
(以下省略)    
※実際の計算では、まず年収1000万円から「給与所得控除(年収1000万円の場合は上限195万円)」を引き、さらに「社会保険料控除」や「扶養控除」などを引いて課税所得を算出します。

住民税:前年の所得で決まる税金

住民税は、住んでいる都道府県や市区町村に納める地方税です。教育、福祉、公共サービスなどに使われます。住民税の大きな特徴は、前年の所得に基づいて税額が計算されることです。

税率は、所得に応じてかかる所得割は一律約10%(都道府県民税4%+市区町村民税6%)と、所得にかかわらず定額がかかる「均等割」(年間5,000円程度)で構成されています。年収1000万円の場合、所得割が主な負担となります。

社会保険料:健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険

社会保険料は、病気やケガ、老後、失業などに備えるための公的な保険制度の費用です。主に以下の4つ(40歳以上の場合は5つ)があり、会社員の場合は会社と折半(労使折半)で負担しています。

健康保険料:医療機関にかかる際の医療費負担(原則3割)などに使われます。
介護保険料:(40歳以上の場合)介護が必要になった際のサービス費用に使われます。
厚生年金保険料:老後に受け取る「老齢厚生年金」などの財源となります。
雇用保険料:失業した際の「失業手当」などに使われます。
労災保険料:業務中や通勤中のケガなどに備える保険(全額会社負担)。

社会保険料は、税金のように控除(扶養控除など)が適用される前の「標準報酬月額(給与のおおよその額)」を基準に計算されるため、年収1000万円の人は負担額がかなり大きくなります。

年収1000万円の税金・社会保険料は合計で約220万〜280万円

これら「所得税」「住民税」「社会保険料」の合計が、年収1000万円の手取りを圧迫する要因です。目安として、独身・扶養なし・東京都在住・40歳未満の場合(※控除は基礎控除と社会保険料控除のみと仮定)、

社会保険料:約125万〜135万円(※賞与の比率や加入する健康保険組合により変動)
所得税:約80万〜85万円
住民税:約60万〜65万円

合計:約265万〜285万円

この約265万〜285万円という金額は、控除が最も少ない独身ケース(=天引き額が最大になるケース)の目安です。 一方で、扶養家族(配偶者や子)がいる場合や、iDeCo・ふるさと納税などを活用している場合は、控除額が増えるため天引き額はこれより少なくなります。

これらの個人差をすべて含めると、天引き額のボリュームゾーンは約220万〜280万円となり、これを差し引いた結果が、手取り約720万〜780万円となるわけです。

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【家族構成別】手取り額シミュレーション

年収1000万円と一口に言っても、家族構成によって適用される「控除」が異なるため、手取り額は変動します。ここでは、いくつかの具体的なケースで手取り額をシミュレーションしてみましょう。

※いずれも会社員、ボーナス比率や居住地、節税策の利用状況は簡略化しています。あくまで目安としてご覧ください。

ケース1:独身・扶養なし

手取り年収(目安):約720万〜740万円
月額手取り(目安):約60万〜62万円

扶養家族がいないため、配偶者控除や扶養控除といった所得控除が適用されません。そのため、他のケースと比較して課税所得が多くなり、所得税・住民税の負担が最も重くなるパターンです。年収1000万円の手取りとしては、下限に近い金額になります。

ケース2:配偶者(専業主婦/主夫)+子1人(16歳未満)

手取り年収(目安):約740万〜760万円
月額手取り(目安):約62万〜63万円

配偶者の年収が基準以下(例:103万円以下)の場合、「配偶者控除」が適用されます。ただし、年収1000万円(合計所得金額850万円超)の場合、控除額は満額(38万円)から減額されます。

子どもが16歳未満の場合、税法上の「扶養控除」は適用されません(代わりに児童手当が支給されますが、後述の所得制限に注意)。それでも、独身ケースよりは控除が適用されるため、手取り額は少し増えます。

ケース3:共働き(配偶者の年収201万円以上)+子2人(16歳以上)

手取り年収(目安):約750万〜770万円
月額手取り(目安):約62万〜64万円

配偶者の年収が201万円を超えているため、「配偶者控除」「配偶者特別控除」はいずれも適用されません。

しかし、子どもが2人とも16歳以上の場合、「扶養控除」(1人あたり38万円)が適用されます。これにより課税所得が大きく下がるため、独身ケースよりも手取り額は増える計算になります。

このケースでは、世帯年収としては1200万円を超えるため、家計全体の余裕は最も大きいと言えます。

ケース4:個人事業主(フリーランス)

手取り年収(目安):大きく変動

個人事業主(フリーランス)の場合、「年収1000万円」が「売上1000万円」を指すことが多く、会社員とは全く条件が異なります。

・経費が認められる
売上1000万円から、仕入れや家賃、交通費などの「経費」を差し引いた金額が「所得」となります。経費が400万円かかれば、所得は600万円です。

・給与所得控除がない
会社員の「給与所得控除(年収1000万なら195万円)」のような自動的な控除はありません。

・社会保険料が全額自己負担
会社員は厚生年金・健康保険料を会社と折半ですが、個人事業主は「国民年金」と「国民健康保険」に加入し、全額を自己負担します。

・消費税の課税事業者
売上1000万円を超えると、翌々年(または翌年)から消費税の納税義務が発生します。

仮に売上1000万円、経費200万円、所得800万円の場合、会社員の年収1000万円と同程度の所得になりますが、社会保険料の負担が重いため、手取りは会社員より少なくなる可能性が高いです。

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年収1000万円のリアルな生活レベルは?

手取り額が約720万〜780万円と分かったところで、年収1000万円の実際の生活レベルはどの程度なのでしょうか。「お金持ち」というイメージは本当なのでしょうか。

日本の給与所得者のうち上位5.4%という事実

国税庁が発表している「民間給与実態統計調査(令和4年分)」によると、日本全国の給与所得者のうち、年収1000万円を超えている人の割合はわずか5.4%です。

この数字を見れば、年収1000万円は間違いなく高所得者層であり、上位5%以内に入るエリート層であることは事実です。多くの人がお金持ちとイメージするのも無理はありません。

しかし、手取り額や生活コストを考えると、贅沢三昧ができるというわけではないのが現実です。

家賃や住宅ローンの目安は「手取りの25%」

一般的に、無理のない住居費(家賃や住宅ローン返済)の目安は「手取り月額の25%〜30%」と言われています。

年収1000万円の手取り月額を約60万円と仮定すると、その25%は月15万円です。

都心で家族と暮らす場合、手取り60万円でも家賃負担は重くなりがちです。「年収1000万円=タワーマンション暮らし」というイメージは、共働き世帯などでないと難しいかもしれません。食費や教育費などを考慮すると、堅実な生活を送っている家庭が多いのが実態です。

【要注意】児童手当の所得制限など「年収の壁」

年収1000万円前後は、税制や社会保障において高所得者とみなされ、各種手当の対象外となる「年収の壁」に直面する層でもあります。

高校授業料無償化(高等学校等就学支援金)の所得制限(年収約910万円)を超えるため、授業料が自己負担になるなど、子育て世帯にとっては恩恵が受けられなくなるデメリットも存在します。

年収1000万円の人が手取りを増やす賢い方法

年収1000万円の人は、税金や社会保険料の負担が大きい反面、節税策を利用した際の効果も大きいというメリットがあります。ここでは、手取り(可処分所得)を増やすために、年収1000万円の人が活用すべき賢い方法を3つ厳選してご紹介します。

ふるさと納税

ふるさと納税は、自分が応援したい自治体に寄付できる制度です。寄付した金額のうち2,000円を超える部分は、確定申告またはワンストップ特例申請を行うことで、翌年の所得税・住民税から控除(または還付)されます。

実質2,000円の負担で、寄付先から地域の特産品や旅行券などの「返礼品」(寄付額の3割以内)がもらえるため、非常に人気の高い制度です。

年収1000万円の場合、寄付できる上限額(控除上限額)も高くなります。

年収1,000万円の場合の控除上限額は次の通り(目安)
・独身または共働き:約17万~18万円
・配偶者控除あり:約16万~17万円

たとえば独身で17万円寄付した場合、自己負担2,000円で、残りの16万8,000円は税金が控除され、さらに返礼品(寄付額の3割相当=約5万円分)が受け取れます。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoは、自分で老後資金を積み立てる私的年金制度です。最大のメリットは、積み立てた掛金の全額が所得控除の対象になることです。例えば、企業年金のない会社員の場合、掛金の上限は月2.3万円(年間27.6万円)です。

年収1,000万円の人で、所得税・住民税の合計税率を仮に40%(所得税30%+住民税10%)とすると、

27.6万円 × 40% = 約11万円の節税効果が見込めます。

所得が高いほど節税メリットが大きい一方、積み立てた資金は原則60歳まで引き出せないため、資金の流動性には注意が必要です。

※実際の上限額・節税額は、勤務先制度や所得状況によって異なります。

NISA

NISAは、iDeCoのような所得控除による節税効果はありませんが、資産運用で得た利益(売却益・配当金・分配金)にかかる税金(通常約20%)が非課税になる制度です。

2024年から始まった新NISAでは、非課税保有期間が無期限化され、投資枠も大幅に拡大しました。年間で最大360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯で最大1,800万円まで投資が可能です。

手取りから貯蓄・投資に回せる余裕のある年収1,000万円層こそ、NISAを活用して効率的に資産を増やすべきです。

ふるさと納税やiDeCoで「守り(節税)」を固めつつ、NISAで「攻め(資産運用)」を行うことが、年収1,000万円層にとって賢い資産形成の王道と言えるでしょう。

まとめ

年収1000万円といっても、実際に受け取れる手取り額は、所得税・住民税・社会保険料が引かれ、約720万〜780万円(月額約60万〜65万円)が目安となります。

額面の約22%〜28%が天引きされる計算となり、ボーナス比率や扶養家族の有無によって手取り額は変動します。

年収1000万円は、日本の給与所得者の上位5.4%に入る高所得者層であることは間違いありません。しかし、都心部での生活コストや、児童手当の所得制限といった「壁」を考えると、「贅沢ができる」というよりは「堅実な生活の中で、教育や将来への備えに比較的余裕が持てる」レベルと捉えるのが現実的です。

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(提供:ACNコラム