株式会社Pictoria

株式会社Pictoriaは「推せる未来をつくる。」をミッションに、AI技術を主軸としたIP創出でエンタメ業界に進出した。創業当初のVTuber事業から、AIキャラクター「紡ネン」の成功を経て、現在は世界初のAITuber事務所「AICAST」を運営。AIキャラクターによるB2Bソリューションも展開し、小売や交通インフラなど社会実装を加速させている。AIとキャラクターが織りなす未来の経済圏と、その実現に向けた戦略とは──。

明渡隼人(あけど はやと)── 代表取締役CEO
1994年生まれ。2018年、明治大学卒業後、UCバークレー校留学とエンジニアインターンを経て、2017年に株式会社Pictoriaを設立。2019年にバーチャルYouTuber「斗和キセキ」をデビューさせ、直後にクラウドファンディングで約1,500万円を調達。2020年にAI VTuber「紡ネン」、2023年に世界初のAITuber事務所「AICAST」を立ち上げ、現在はAI技術を活用したエンタメ開発に注力している。
株式会社Pictoria
「推せる未来をつくる。」をミッションに、AIを主軸としたテクノロジーでIP(※)を創出。創業以来のVTuber関連事業と最新のAI技術を活用したAIキャラクター事業、自社開発、共同開発のIP事業を世界に向けて発信している(※Intellectual Property、知的財産)。

目次

  1. 創業、そしてAI VTuberへのピボット
  2. ChatGPTの登場が変えたAIキャラの価値
  3. AI時代における組織の効率化と人材戦略

創業、そしてAI VTuberへのピボット

──創業時からVTuberを手がけていらっしゃるとか 。

明渡氏(以下、敬称略) 2017年12月に創業して、もともとはVTuberと呼ばれる新しいタイプのキャラクター配信者をプロデュースし、VTuber関連のイベントを行う会社でした。

VTuberは現在、1200億円規模の市場があると言われていますが、2017年当時、私は学生でしたので、若者として戦うにはカルチャー的な領域が良いと考え、盛り上がりつつあったVTuberの分野で事業を始め、自社のVTuberをデビューさせました。

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その後、VTuberとの交流プラットフォームや、VTuberと一緒に学べるオンラインスクールなど、さまざまなVTuber関連ビジネスを立ち上げてきました。そして現在では、AIでVTuberを運営するAI VTuberをプロデュースし、タレントビジネスを行っています。さらに、AIのVTuberは接客などもできるため、B2B向けのAI接客システムなども提供しています。

── VTuber事務所のような形態から現在の事業へ軸足を移した理由は何でしょうか。

明渡 VTuber業界には黎明期に参入しましたが、ファンの熱量は非常に高かったものの、マネタイズが非常に難しいタイミングでした。そこで、VTuber関連でどのようにマネタイズしていくべきか真剣に考えるようになり、AIでVTuberを行うという方向性に行き着きました。

ユーザーの熱量を獲得したうえで、どうすれば持続可能なビジネスができるのかを考え、さまざまなビジネス開発をしてきたという流れになります。

── 御社の競合優位性はAIを活用したAI VTuberにあるのですか。

明渡 まさにそのとおりです。VTuber事業は、人が演じるVTuberをマネジメントする会社が基本です。しかし、弊社の場合はAIを使っているため、テック企業としての技術開発が強みになっていると考えています。

── 事業が大きく飛躍するきっかけとなった出来事は何ですか。

明渡 2021年11月ごろに実施した、弊社のAI VTuberの一人目「紡ネン」のクラウドファンディングです。当時は「VTuberは人がやるもの」というのが当たり前でした。その中で、「神のAIである」というコンセプトを打ち出し、世間的にかなり認知してもらえました。

本格的な活動を開始していなかった「紡ネン」ですが、デビュー前のコンセプトだけで200名以上に支援してもらえました。その界隈のVTuberを好きな人たちに刺さったのだと思いますし、市場調査としても非常に意味がありました。

バーチャルのキャラクターに対して、日本人はSFやアニメなどで素養があります。AI自身が自我を持っているような存在に非常に憧れを抱く人が多く、中に人がいないキャラクターに対して「これが真のバーチャルキャラクターだ」と感じてくれる人々もいました。次世代の、価値のあるキャラクター作りが広く受け入れられたタイミングだったと感じています。

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ChatGPTの登場が変えたAIキャラの価値

── AI VTuberができることについて教えてください。

明渡 できないことを並べるほうが早いかもしれません。たとえば、現実のゲームをプレイすることはできません。AIが勝手にプレイすることになるので、FPS(※)などで非常に上手だとチートだと思われてしまうからです。しかし、それ以外のことはおおむねできると考えています。人が思いつくようなことは、だいたいできるのではないでしょうか。

※ファーストパーソンシューター(First-Person Shooter)。一人称視点(プレイヤー自身の視点)で敵を倒すシューティングゲームのジャンル。

ゲーム実況についても、たとえば「マインクラフト」などであれば、AIが指示して動かすことは許容されています。最近ではChatGPTなどのLLM(※)がゲームをパパッと作ってくれたりするので、ゲームを自分で作って、自分でプレイするようなことは、むしろAIならではの強みです。毎回配信でやっているゲームが違う、といったことも実現できます。人と比べるとどうかというところはありつつも、AIならではのそういったチャレンジはかなりできていると思います。

※LLM(Large Language Models、大規模言語モデル)。大量のテキストデータを学習したAIシステム。

── AI VTuberのような擬人化されたAIと親和性が高く、反応が良い業界はどのようなところでしょうか。

明渡 空港業界がその一つです。実際、釧路空港や函館空港などで導入が進んでいます。空港では旅行者やビジネス客に対して、単に機械的に反応するのではなく、いかに楽しい雰囲気を残しながら接客できるかが重要です。

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楽しい気持ちでその土地にやってきて、最初に目にするのが機械的なものより、人っぽい楽しいもののほうが親和性が高いのではないでしょうか。カギになるのは、キャラクター性をちゃんと持っていること。そうすることで、例えばキャラクターが空港で地元の店を紹介するなど、地元感を出すことも可能です。

実は「AIキャラクター経済圏」を作りたいと考えています。例えば小売店舗にすべてAIキャラクターが配置され、AIキャラクターを見ない時はない、むしろAIキャラクターがいない店舗は人に話しかけないといけないから面倒くさい、というような状況を加速させていきたいです。2030年には小売業界が縮小すると言われています。店舗に人を配置できなくなることで、せっかく売上が上がっても店舗を運営できなくなるという時に、AIキャラクターがそこをサポートする役割を担います。機械的ではなく、人ではない魅力も出しながら十分な接客をしていくことによって、浸透は進んでいくでしょう。

接客を中心に、小売や交通インフラなど、さまざまな場所にAIキャラクターをたくさん置き、AIキャラクターがビジネスの助けになるようにするのが、弊社のやりたいことです。

AI時代における組織の効率化と人材戦略

── 今後の事業構想について教えてください。

明渡 AIキャラクターを使って世の中を豊かにしたいです。B2CではAIタレントとの会話数を、B2Bでは小売店でのAIキャラクター接客数を増やしていくことをKPIとしています。

将来的には、誰もがAIキャラクターを自由に作れるプラットフォームやアプリの提供も構想しています。PlayStationにゲーム制作者がいるように、AIキャラクターを作る経済圏をみんなで作っていきたいです。また、リアル店舗だけでなく、ウェブ上でのAIキャラクターによるライブコマースなども考えています。

一方、既存のキャラクターIPをAI化することも進めています。実際、弊社では集英社のマンガ『僕とロボコ』のキャラクターをAI化した実績もあります。

資本政策については、今後はキャラクターライセンスを持つ会社や、デジタルサイネージを導入する小売会社と事業提携をしていきます。M&Aも検討中です。最終的にはもちろんIPOを目指しています。ただし、グローバル展開を加速できるような素晴らしいオファーがあれば、柔軟に検討する余地はあります。

── オリジナルのAIキャラクターを自社開発している理由は?

明渡 既存IP(Intellectual Property、知的財産)の活用も含め、すべてに可能性があると考えています。ただ、リアルな画像をリアルタイムで配信する技術はまだ難しいため、優先度は低いです。半年から1年で実現するでしょう。

既存のアニメキャラクターなどを活用する場合、ライセンス元からの信頼を得るのが非常に重要です。たとえば『ワンピース』のルフィをAI化しても、キャラクターの個性に反する言動をすれば信頼は失われます。

だからこそ、自社でオリジナルAIキャラクターを開発・運用し、その実績を示すことが重要になります。「私たちはAIキャラクターを愛し、そのクオリティを保証できる」という信頼を築くことが、有名IPと組むための強みになると考えています。

弊社が進めているのは「エンタメ×AI」。経済状況はともかく、原作の力、アニメキャラクターの力は、日本は世界に対して非常に強いポテンシャルを持っていると思います。こういったアセットの強さを最大限生かして、戦っていかないといけません。

そこをAIを使ってスケールさせていくような、我々のような会社が、これからは次世代の日本を担っていくと思っていますので、ぜひ注目していただきたいです。

Pictoria
氏名
明渡隼人(あけど はやと)
社名
株式会社Pictoria
役職
代表取締役CEO

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