数百、数千のドローンが夜空を彩る「ドローンショー」。その国内最大手である株式会社ドローンショー・ジャパンは、エンターテインメントの可能性を追求し、世界へと羽ばたこうとしている。石川県金沢市に本社を構え、地方から世界に向けて新たな価値を発信する同社の代表取締役の山本雄貴氏に、同社の現在地と未来への展望、そして独自の経営哲学について聞いた。
企業サイト:https://droneshow.co.jp/
ドローンショーの枠を超えた、次なる一手
── 国内で唯一、専用機体の自社開発を行っているそうですね。
山本氏(以下、敬称略) ドローンショーという事業領域に限らず、将来的には、一台のPCで多数のドローンを自動操縦し、社会に新たな価値を生み出すような事業を手がけていきたいと考えています。
その一つとして、エンターテインメントの領域で、人々にどうやって感動や喜びをお伝えできるかを追求していきたいですね。まだ少し漠然としていますが、そういった方向性で新しい投資を進めていきたいと考えています。
── それは、ドローンという領域にもこだわらないということですか?
山本 ええ。自社でゼロから立ち上げるのか、あるいは他社とアライアンスを組むのか、戦略的な部分はこれから詰めていく必要がありますが、ドローンというハードウェアに固執するつもりはありません。
ターゲットは東南アジア。3年で海外売上比率50%を目指す
── 海外展開についてはいかがですか?
山本 海外事業は、ここ3年ほどで大きく伸ばしていきたいと考えています。少しアグレッシブな目標かもしれませんが、全社売上の半分近くまで比率を高めるのが理想です。特に注力しているのが、東南アジアです。
── なぜ東南アジアに可能性を感じているのですか?
山本 この地域は、日本のキャラクターやコンテンツが非常に受け入れられやすい土壌があるんです。親日的な国が多いことや、文化的な親和性、物理的な距離の近さもあり、事業が非常にしやすいと感じています。それに、熱帯地域ならではの文化も追い風になります。もともと「ナイトカルチャー」が根付いていて、夜に外で食事をしたり、イベントを楽しんだりする文化がある。だからこそ、夜のエンターテイメントであるドローンショーは、自然に受け入れられ、参入しやすいと考えています。
── 海外での具体的な営業戦略はどのように考えていますか?
山本 基本的には、現地のパートナー企業と連携していく戦略です。すでにドローンショー事業を展開している会社があれば、その会社と組みます。
まだドローンショーが普及していない地域であっても、ドローンを使った撮影や点検などの事業を行っている会社は必ず存在しますので、そうした企業とパートナーシップを組みます。私たちはあくまで「メーカー」という立場で、機材、ソフトウェア、そして運用ノウハウを提供する。そして、現地のパートナー企業に事業を展開してもらう。この形が最もスムーズだと考えています。
「感動」を数値化する。独自のデータ戦略
── ドローンショーは多くの観客を魅了しますが、その効果を数値化する取り組みをされているとか。
山本 観客の皆さんの歓声や感動を、いかにして数値化し、価値として提示できるか。これは我々にとって重要なテーマであり、少しずつレポーティングの内容を充実させているところです。
現在すでに取り組んでいることとしては、KDDIさまと連携し、「ロケーションアナライザー」という計測ツールを活用しています。これにより、ドローンショーを実施した際に、周辺にどれくらいの人が集まっているのか、いわゆる「人だかり」をデータとして分析できるようになりました。
── 今後、さらにどのようなデータの活用を考えていますか。
山本 将来的には、来場者のスマートフォンと連携させ、より詳細なデータを取得していきたいと考えています。
たとえば、ドローンショーでQRコードを表示し、それを読み取った人が、ショーの後に近隣の飲食店を訪れたか、といった行動パターンまで追跡する。そこまでのデータを分析できれば、ドローンショーの広告媒体としての価値をさらに高められるはずです。
── データ分析まで行っているドローンショーの会社は、少ないのではないですか。
山本 そうですね。多くの会社は、まだドローンショー自体の認知を拡大する段階にとどまっているのが現状だと思います。
我々はソフトウェアも自社開発しているので、外部の技術と連携させやすいという強みがあります。この独自性を活かして、他社にはない付加価値を提供していきたいですね。
富は蓄積しない。社会を豊かにするためのファイナンス戦略
── 今後のファイナンス戦略についてお聞かせください。IPOやM&Aによる事業拡大は考えていますか?
山本 IPOもM&Aも、次の戦略を実行するための手段の一つととらえています。どこから資金を集め、誰と組むか、という選択肢に過ぎないので、現時点で明確にどちらかに決めているわけではありません。
ただ、海外への投資を継続していくためには、どこかのタイミングで資金調達が必要になります。その際は、単なる資金提供だけでなく、我々の海外展開を加速させてくれるような知見やネットワークをもつ企業と事業提携を模索していきたいですね。
また、これは個人的な考えですが、富は社会の中で循環させるべきで、一箇所に蓄積すべきではないと思っています。企業の時価総額を評価していただくのは大変ありがたいことですが、そこで得た資金は、高速で次の事業に投資し、経済を回していかなければ、世の中はうまく回らないのではないでしょうか。
ですから、私自身は個人資産を増やすことにはあまり興味がないんです。得た利益は、どんどん次の事業に使っていきたいですね。
- 氏名
- 山本雄貴(やまもと ゆうき)
- 社名
- 株式会社ドローンショー・ジャパン
- 役職
- 代表取締役

