株式会社スカイディスク

株式会社スカイディスクは、2019年末に代表取締役に就任した内村氏が、受託開発型だった事業モデルを転換し、製造業向けAI搭載生産計画DXサービス「最適ワークス」の開発・提供に注力してきた。日本のものづくりを支える中堅中小企業に焦点を当て、AI活用による生産性最大化を追求。最近では、東京ガスとの資本業務提携を通じて顧客基盤を拡大し、今後はマルチプロダクト展開や海外進出も視野に入れている。その変革の軌跡と今後の展望について聞いた。

内村 安里(うちむら あさと)──代表取締役CEO
1978年、熊本県生まれ。大学卒業後、ベンチャー企業を経て2003年より株式会社ディー・エヌ・エーへ。ECコンサルティング部門マネージャー、モバイル広告事業立ち上げ、広告営業部門マネージャー、マーケティング・広告宣伝部門マネージャーなどを歴任し、2011年末に独立。独立後はゲーム開発会社、家電メーカー、プロスポーツクラブなど、さまざまな業種の事業立ち上げやターンアラウンドを支援・推進。2019年12月、株式会社スカイディスク 代表取締役に就任。
株式会社スカイディスク
2013年の創業以来、製造業を中心に約272社のお客様と550件のプロジェクトに取り組み、そこで得た知見・ノウハウを活かして製造業向けAI搭載の生産計画DXサービス「最適ワークス」を開発・提供。「ものづくりを、もっとクリエイティブに」をミッションに、AIを活用したDX推進にチャレンジしている。

目次

  1. 事業転換とプロダクト開発への道のり
  2. 中堅中小企業に寄り添う「最適ワークス」
  3. 東京ガスとの資本業務提携、今後の戦略

事業転換とプロダクト開発への道のり

── 創業から現在までの事業変遷について教えてください。

内村氏(以下、敬称略) 私は創業社長ではなく、会社が7期目にあたる2019年末に代表を継ぎました。経営に携わって6年弱になります。

事業内容は、もともとは製造業に限らず、いわゆるデータを収集するIoTデバイスなどを作っていました。データを収集していくと、そのデータをどう活用していくかというデータ分析などが求められるようになり、ハードからAIの活用へと舵を切ってきました。

私が着任する少し前にスマートファクトリーが叫ばれ始め、製造業のお客様が増え始めたことで、「製造業×AI」という打ち出しで取り組んでいたのが当時の状況です。

しかし、「製造業×AI」で、プロダクト創出を目指して様々なお客様からのニーズに対するソリューション提供を進めていましたが、なかなかターゲットを絞り込むことができず、結局は受託開発型のビジネスモデルを続けていました。

当時はAIがバズワードであり、その波に乗って資金調達できていたものの、受託開発型からは脱却できない。受託開発型は”人”が必要な商売で、売り上げを伸ばすのと比例して社員を増やしていく必要がある。もちろんうまくいくケースはあるが、高いレベルで人月単価を維持するには競合優位性を確立する必要がある。プロダクト開発を含めたビジネス変革は、私が代表を引き継ぐ際のミッションの一つでした。

着任してからは、プロダクトの種を見つけるべく、過去の受注案件だけでなく問い合わせも含めて全て見直したり、コネクションのあった企業を中心にヒアリングしたりしながら、フォーカスできそうな領域はないかを探しました。

そうした中で、日本の製造業では、ものづくり現場に目が向きがちで、機械設備などへの投資は一定行われているものの、いわゆるバックオフィス・管理業務へのIT投資はなかなか進んでいないという状況が見て取れました。

── 業務管理の分野ではニーズは少ないのでしょうか?

内村 ニーズはどんどん増えている状況だと考えています。その背景としては、大きくは人材と市場の変化があります。

人材においては、日本人労働者の採用が年々厳しくなっている中で、職人と呼ばれるようなスタッフの高齢化が進んでいます。特に中小規模の工場においては、工場内の社員に占める外国籍の方の割合がどんどん増えています。

これまでは細かな業務指示や管理をしなくても、ベテランスタッフに伝えておけば、うまく現場を回してくれましたが、そうしたスタッフの高齢化・定年退職が進む中で、言語の壁がある外国籍比率が増えていくと、明確な業務指示・管理が求められる状況になります。

そして、市場の問題です。例えば自動車業界においては、EV化によって、ガソリン車向けの部品は減っていくでしょう。

日本では、基本的に大手製造業の周辺に中堅・中小のサプライチェーンが形成されてきましたが、これから先も売り上げを維持・拡大していくためには、その大手一社に依存する状況から、取引先の開拓・多角化を進めていく必要に迫られているところも少なくありません。

大手からのボリューム自体は変わらなくても、市場ニーズの多様化によって少量多品種・変種変量の発注になって来ており、昔に比べて取り扱う品目数が非常に増えています。そうなってくると、これまで頭の中で組み立てられていたパズルが、もはや人間の頭では追いつかなくなります。

こうした背景から、DXへの投資は今後より一層進んでいくと考えています。 この分野は機械設備やロボットなどのハードと比べて、まだまだブルーオーシャン。開拓余地、市場が伸びる可能性の大きい分野なのではないかと思います。

市場調査・ヒアリングを進める中で、特に生産計画業務にニーズがあると感じました。そこでプロダクト開発に取り組むことにしたのです。

中堅中小企業に寄り添う「最適ワークス」

── 代表を引き継がれてすぐに、実際にプロダクトを作っていこうと決めたわけですね。製造業務系にフォーカスしてプロダクトを作り、多くの企業に導入されていますが、そこから今日に至るまでの変遷や進み方を教えてください。

内村 受託開発事業と並行して、プロダクト開発に取り組みました。それが、AI搭載の生産計画DXサービス「最適ワークス」です。2022年4月に最初のバージョンを、昨年2024年7月に新しいバージョンをリリースしました。

── いろいろな企業に活用され、今に至るということですね。現在は「最適ワークス」というプロダクトがメインということでしょうか。

内村 そうですね。引き続き受託開発事業にも取り組んでいますが、現状は「最適ワークス」がメインです。

「最適ワークス」は、機械設備や作業スタッフといった工場の製造リソース、製品ごとの製造工程などの情報をマスターデータとして登録すると、「この製品を・何個・いつまでに作らなくてはならない」というオーダーに合わせて、AIが最適な生産計画を自動で立案してくれるサービスです。SaaSとして中小企業でもスモールスタートしやすい価格帯で提供しています。

── 御社の特徴や強み、代表を引き継がれた当初の厳しい状況から今日に至るまでの成長を支えてきた大きな要因は、どのような点だと考えていますか。

内村 昨今の生成AIの登場によって、数年前とはまったく状況が異なっていますね。当時のAI、特に製造業がAIなどのテクノロジーを使っ て事業に生かすという点では、それなりの規模の会社でないと、なかなかそこに投資するのは難しかったと思います。

私が着任した当時、営業部門の社員から、「売り上げ1000億円以上の会社がターゲットです。そのくらいの規模の会社でないと、AIに投資してくれない」といった話を聞きました。

売り上げ1000億円以上の製造業は、もちろん影響度は大きいですが、企業数で見ると上位1%未満。

その上位1%未満のトップ層だけをターゲットにして「日本の製造業にイノベーションを」とうたうことに、少し違和感がありました。残り99%を占める中小企業によって日本の製造業は支えられています。

そうした中小企業も、ITの力で支えることができないかという思いを形にしたのが「最適ワークス」といっても過言ではありません。大手企業にもご活用いただいていますが、現在のユーザーの8割は、従業員100人以下の中堅・中小規模の工場です。

── 最適ワークスの価格はどうやって決めたのでしょうか?

内村 月額15万円〜(契約は1年単位)で提供していますが、サービスリリース前に様々な中小製造業の皆様にヒアリングさせていただいた際に、「アルバイト・パート1人分くらいの金額であればトライしやすい」というお話を伺い、価格を決めました。 もっと安い価格で提供しているサービスも探せばあるのでしょうが、コストパフォーマンスとしてはNo.1だと自負しています。

サービス開発を決めた時から、日本の製造業、特に中堅・中小製造業の生産管理・生産計画にフォーカスし、現場にも足を運び、試行錯誤しながらプロダクトを練り上げてきました。AIを活用した最適化エンジンを中心とした技術力ももちろん強みですが、日本の中堅・中小製造業における解像度こそが、私たちの最大の強みだと考えています。

── 製造業をターゲットとされている御社として、市場の成長性についてはどう考えていますか?

内村 国内の、中でも中堅・中小の事業所数を踏まえると、バーティカルでありながら、ホリゾンタルと変わらないくらいの市場が存在します。ターゲットを拡張せずとも、一定の事業成長は見込めると考えています。

一方、国内にフォーカスしてはいますが、すでに海外の工場での事例もあります。タイやベトナムにある国内企業の現地海外工場で導入いただいており、そう遠くない未来、東南アジアを足掛かりとした海外展開も視野に入れています。

── 国内では福岡や九州だけでなく、全国の製造業の会社に導入・活用されていますね。

内村 そうですね。製造業が存在しない都道府県はありませんので。現状では、化学系というよりも、加工・組立系の工場の方が相性が良く、ユーザー数として多いです。特に、東海エリアの自動車部品メーカーなども多く、常駐社員はいませんが、愛知と浜松にも拠点を置いています。

東京ガスとの資本業務提携、今後の戦略

── 経営者としてのこだわりや、ここだけは譲れないという大切にされている点があれば教えてください。

内村 私は経営者としてはまだまだ未熟で、反省しっぱなしの毎日ではあります。そんな自分が唯一誇れる部分があるとしたら、事業に対する情熱だと思います。

小さい会社ということもありますが、お客様のところに足を運ぶことも多いですし、商談にも、導入いただいているユーザー様のオンボーディングにも、積極的に参加・同席しています。現時点ではプロダクトオーナーも私自身が務めていますので、会社の中で自分が一番お客様の解像度が高い、お客様を理解しているべきだと考え、その努力は続けています。

── 営業やマーケティングについて、クライアントをどう獲得し、増やしているのですか?

内村 多くの中小製造業とタッチポイントを作っていくことが、実は一番難しいところだと感じています。ビッグサイトや幕張メッセで開催される製造業向けの大規模展示会にも出展したりしていますが、そうした場では接することのできない中小製造業はたくさんいらっしゃいます。そこで、今はパートナーアライアンスに力を入れています。例えば、自治体や商工会議所、地銀、地場の商社やSIerといった企業・団体の方々です。各地域で関係を構築しながら、その地域にいらっしゃる中小製造業との機会を創出しています。

そうした活動に取り組む中で、先日、東京ガス様と資本業務提携させていただきました。営業網・顧客網を持つ事業会社との連携を模索する中で、ご縁をいただくことができました。事業を加速させる上で、今回の提携は非常に大きな意味合いがあると考えています。

── 組織面で現在の強みと、課題と感じられている点は?

内村 これまでのスタートアップの資金使途のメインは、採用だったと思います。事業を加速させるためには、開発・ビジネス双方にできるだけ多くの優秀な人材を確保していく必要があった。 それが、昨今の生成AIの登場によって、大きく変わろうとしています。もちろん適切に採用していくことは必要ですが、「いかにAIを活用しながら、生産性を追求していくか」の勝負になると感じています。それが目下の課題です。

氏名
内村 安里(うちむら あさと)
社名
株式会社スカイディスク
役職
代表取締役CEO

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