CBcloud株式会社

EC市場の拡大やライフスタイルの変化に伴い、物流の重要性が増す現代。その一方で、業界は多重下請け構造やドライバー不足といった根深い課題を抱えている。そんな中、「ドライバーの価値を高める」という揺るぎない信念を掲げ、急成長を遂げているのがCBcloud株式会社だ。

日本最大級のラストワンマイルのドライバーネットワークを武器に、大企業のインフラも支える同社。国土交通省の航空管制官という異色の経歴をもつ松本隆一代表は、どのような思いでこの事業を立ち上げ、どこへ向かっているのか。

松本隆一(まつもと りゅういち)──代表取締役CEO
1988年、沖縄県生まれ。航空保安大学校を経て国土交通省に入省し、航空管制官として羽田空港に勤務。2013年に退省後、義父の運送業を継ぎ現場に立つ中で、物流業界が抱える多重下請け構造や非効率な商習慣の課題を痛感。同年、CBcloud株式会社を設立。ドライバーの自由で公正な働き方を実現する仕組みづくりに取り組み、テクノロジーを通じて物流業界全体の構造改革とドライバーの社会的地位向上を目指している。
CBcloud株式会社
「世の中の眠る力に革新を」を掲げ、2013年に創業。登録ドライバー10万人超(軽貨物・二輪・一般貨物合計)を誇る配送プラットフォーム「ピックゴー」と、配送現場の業務効率化を支援するシステム「スマリュー」を展開。2024年4月には「エコ配」をグループに迎え、企業間配送から宅配までを一気通貫でカバー。ITとロジスティクスの融合によって、持続可能な物流インフラの構築と業界全体の価値向上を推進している。
企業サイト:https://cb-cloud.com/

目次

  1. 義父の遺志を継ぎ、物流業界へ
  2. 「ドライバーの価値を高める」という揺るがぬ信念
  3. なぜ沖縄か?生産性とプレゼンスを最大化する地方戦略
  4. 大企業も頼る独自のプラットフォーム。その強さの源泉
  5. 未来に向けて。次なるステージへの挑戦

義父の遺志を継ぎ、物流業界へ

──もともと国土交通省で航空管制官をされていたという異色の経歴をおもちですが、どのようなきっかけで物流の世界に足を踏み入れたのですか?

松本氏(以下、敬称略) 原点は、私の義父の事業にあります。彼はもともと自動車販売業を営んでいましたが、当時まだメーカーが製造していなかった冷凍軽貨物車両を自ら開発・販売し、多くの軽貨物ドライバーとの接点をもつようになりました。

そのドライバーたちと対話する中で、義父は物流業界が抱える構造的な問題に気づきます。多重下請け構造の末端で働く個人事業主のドライバーたちは、収入が不安定で、その価値が正当に評価されていない。自分の売った車が、結果的に彼らを不幸にしているのではないか。そう感じた義父は、車を売るだけでなく、自ら荷主を開拓し、ドライバーに直接仕事を供給するようになったのです。

私が出会ったのは、ちょうどその事業が少しずつ回り始めたころでした。単なる車屋で終わらず、顧客であるドライバーの課題解決にまで踏み込む義父の姿勢に、私は強く共感しました。当時、彼の事業はすべてアナログで、事業を拡大(スケール)させていくには仕組み化が必要な状況でした。幸い私にはエンジニアリングの知識があったので、休みの日に手伝う形で、二人三脚でドライバーの課題に向き合うようになりました。

── 国交省を辞めてまで、この事業に本格的に関わることを決断された背景には、どのような思いがあったのですか?

松本 ある時、義父から「国交省を辞めて、一緒にこの業界の価値向上を目指さないか」と誘われたのです。まだ結婚もしていなかった娘の彼氏が、将来安泰の国交省職員であるにもかかわらず、です。その言葉に驚くと同時に、そこまで言ってくれる人は他にいないと感じ、この人と一緒に物流業界で戦うことを決意しました。

しかし、私が国交省を退職したわずか2週間後、義父は突然この世を去ってしまいました。彼の死後、仕事を失うことを心配するドライバーたちからの声もあり、悲しむ間もなく、私が彼の事業と意志を引き継ぐかたちでCBcloudはスタートしました。そこからは、自らドライバーも営業も開発も経験しながら、がむしゃらに走ってきました。

「ドライバーの価値を高める」という揺るがぬ信念

── 事業承継から軌道に乗るまで、特に大きな転機となったポイントはどこにありますか?

松本 特別な転機があったというよりは、「ドライバーの価値を高める」という創業当初からの信念を、愚直に貫いてきた結果だと考えています。

事業を始めた当初、荷主からは「他社より安くしてくれたら、仕事をすべて切り替える」といった話を頻繁にもちかけられました。

しかし、それではドライバーの価値を上げるという本来の目的は達成できません。目先の利益のために安請け合いをするのではなく、ドライバーの働きが正当に評価され、対価として還元される仕組みを作ることにこだわりました。私個人が儲かることだけを考えていたら、おそらく違う選択をしていたでしょう。

この信念を諦めずに続けた結果、私たちの思いに共感してくださる荷主様がファンになってくれ、そして何より、ドライバーにとって魅力的な環境が生まれました。思いがドライバーに向いているので、自然と多くのドライバーが集まってくれる。この良い循環が、私たちの成長の礎となりました。

── その思いが、現在のCBcloudの最大の強みであるドライバーネットワークにつながっているのですね。

松本 はい。私たちのプラットフォームの思想は、すべて「ドライバーの価値を高める」という点に行き着きます。多重下請け構造を介さず、荷主とドライバーを直接つなぐことで、中間マージンが発生しません。結果として、ドライバーはどこよりも高い単価で仕事を受けることができます。

さらに、プラットフォーム上では、ドライバーが自ら仕事を選ぶことができます。従来の下請け構造では、仕事は上から降ってくるもので、断れば次の仕事が来なくなるという不自由さがありました。

私たちは、ドライバーが自身の働き方や努力に応じて、正当に稼げるフェアな環境を構築しました。登録料なども一切いただいていないので、ドライバーにとっては登録しておくデメリットがありません。こうした仕組みが評価され、ラストワンマイル領域では日本で一番多くのドライバーに選ばれるネットワークに成長できたと考えています。

なぜ沖縄か?生産性とプレゼンスを最大化する地方戦略

── 本社機能を沖縄に移転されました。物流というと大都市が中心というイメージがありますが、この戦略の意図を教えてください。

松本 私たちのプラットフォームでは、全国で1日に何千便という配送が行われます。その中で、たとえば「渋滞で到着が遅れそうだ」といったドライバーからの連絡を受け、荷主様と調整を行うといったオペレーション業務が24時間365日発生します。このオペレーションセンターを2020年に沖縄に開設したところ、人材の定着率、そして生産性が非常に高いことがわかりました。

オペレーションだけでなく、エンジニアやマーケティング、インサイドセールスといった職種でも採用がうまくいっており、人が集まり、定着する土壌があることが見えてきました。そこで、登記上の本店も沖縄に移し、より本格的に沖縄での人材獲得に投資することを決めました。

東京で同じように人材に投資をしても、多くの企業の中に埋もれてしまいます。しかし、沖縄という地域だからこそ、私たちの存在感(プレゼンス)を高め、行政との連携や地域社会への貢献を通じて、より強固な組織基盤を築くことができる。この地方戦略は、私たちの成長において非常にうまくいっていると感じています。

大企業も頼る独自のプラットフォーム。その強さの源泉

──佐川急便やセブン‐イレブン・ジャパンなど、大手企業とのアライアンスも積極的に進めていますね。

松本 日本最大級のドライバーネットワークを直接活用できる点を評価いただいているのだと思います。ドライバー不足が叫ばれる中でも、柔軟に対応できる配送力を維持しています。

たとえば、佐川急便は全国に荷物を届けるという使命があるため、イレギュラーな「緊急でこの荷物だけ届けてほしい」というニーズへの対応が難しいという課題がありました。そこで、私たちがその受け皿となり、佐川急便ブランドの新たなチャーター便サービスを構築し、その裏側の配送から運用まですべてを担っています。

また、セブン‐イレブン・ジャパンのネットコンビニ「7NOW」のように、商品を個人宅に届けるサービスの裏側も私たちのインフラが支えています。単にドライバーを供給するだけでなく、お客様のブランドでサービスを構築する開発力、いわゆるホワイトラベルでのシステム提供ができる点も、我々の強みです。

未来に向けて。次なるステージへの挑戦

── 創業からこれまでの道のりで、組織面での課題はありましたか?

松本 やはり従業員が100人に近づくにつれて、組織の壁にぶつかりました。30〜40人規模のころは、全員の顔と名前はもちろん、プライベートなことまで把握できていましたが、規模が大きくなるにつれ、会社の意思決定の背景や私の思いが隅々まで伝わりにくくなりました。その結果、事業のスピード感が若干落ちたり、納得感がないまま働く人が増え、離職につながってしまった。

これに対しては、創業の原点である「ドライバーの価値を高める」という定義をあらためて社内に浸透させるとともに、ミッション、ビジョン、バリューを言語化し、全社で目指す方向性を統一することで乗り越えてきました。

── 今後の展望について、IPOなども視野に入れているのでしょうか?

松本 私たちのミッション・ビジョンを最短で達成するための一つの手段として、IPOも可能性としては常に考えています。これまで調達した資金は、ドライバー獲得のためのマーケティングや、先ほどお話しした沖縄への投資に活用し、大きな成果を上げてきました。2024年にはM&Aも実行しています。

今後も、私たちの思想に共感し、事業シナジーを生み出せるパートナーや投資家の方々と連携しながら、ラストワンマイルという領域でさらにサービスを拡大していきたいと考えています。BtoB、BtoCを問わず、社会にとって不可欠な物流インフラを支え、そこで働くすべてのドライバーが正当に評価され、豊かになれる。そんな未来を実現するために、私たちはこれからも挑戦を続けていきます。

氏名
松本隆一(まつもと りゅういち)
社名
CBcloud株式会社
役職
代表取締役CEO

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